鬼才テリー・ギリアム監督の新作は、あのグリム兄弟を主役にしたアクション冒険活劇。

ギリアム・ファンの私としては待ちわびた映画です。
観ないでどうする!

物語の舞台は、フランス統治下のドイツ。
各地を遍歴しながら、グリム兄弟は魔物退治を引き受けている。
しかしじつは裏でサクラを使って魔物を演出し、それを退治してみせているという、たんなる詐欺師。

村人たちからお金をだましとっているグリム兄弟だったが、フランス軍につかまって、さあ、たいへん。
本当に魔物の出る森へ、魔物退治に行かされてしまうことになったのでした。

主人公たちが「カッコよくない」のがテリー・ギリアムらしいところ。キメのシーンも必ずちょっとハズしてみせるんだよね。

要所要所にモンティ・パイソンなギャグがまぶされていて(例:魔物との戦いのさなかにカツラが取れてハゲになる。床磨きをするマット・デイモンとヒース・レッジャーがなぜか女中のボンネットを被っているなど)ツボをくすぐられます。

セットも美しく、赤ずきんちゃんやヘンゼルとグレーテルなどの引用が出てくるのも楽しくて見どころ。

しかしながら、ギリアムらしい毒はほとんどないですね。
ハリウッドのメインストリームにある冒険ファンタジー路線で、エンタメの枠内にきっちり収めている感じ。

『未来世紀ブラジル』『タイムバンディッド』『バロン(ほらふき男爵の冒険)』『12モンキーズ』といったギリアム作品のファンである私からすると、ちょっと肩すかしをくらった気分。

『タイムバンディット』のなんともいえず人を食ったエンディングが好きだった私にとっては、どことなく物足りないまとめ方ではありました。

しかし映画作りってたいへんだろうからねえ。
ギリアムがジョニデ主演で製作していた『ドン・キホーテ』の映画ですら、途中で頓挫したんだよね。
その過程を描いたドキュメンタリーを観たときに、「監督業って地獄だす」としみじみ同情しましたね。

いまのギリアム監督にとっては、興行成績をあげられる映画を撮るのが、必須なのだろうから、文句はつけず。
お金を貯めて、またおもしろい映画を撮ってください。

それにしてもモニカ・ベルッチさま、お美しい!
今回はなんと齢500歳という魔女を演じるモニカ・ベルッチ。完璧な美しさで、美女というコトバは、まさに彼女のためにあります。

そしてなんといっても光っているのが、ピーター・ストーメア。
もうサイッコー! 完璧に主役を食っちゃってます。

ギリアム組では『ブラジル』『バロン』でおなじみのジョナサン・プライスもいい味を出している。

いっぽう肝心の兄弟、マット・デイモンとヒース・レッジャーについては、すいません、ワタシ的には今ひとつ感心しませんでした。
いや、べつに悪くはないんだが、だからってべつによくもない、というか。

初のコスプレ物に出演したマット・デイモンですが、顔がゴツいので、たしかにドイツ人っぽくはあるね。
でもギリアムのお笑いのセンスにあっていない感が拭えない。

ギリアム作品には、なにかこう「ぬけた」「脱力感のある」風味の男優がにあう気がするんだな。

ま、このあたりは人好きずきってことで、勝手に脳内で、自分好みのキャストに替えてみた。

○個人的にはこれで見たかった奇人グリム兄弟(濃すぎ!)
兄グリム  ジョニー・デップ
弟グリム  サム・ロックウェル

○これがベストと思われる配役のグリム兄弟
兄グリム  イワン・マクレガー
弟グリム  トビー・マグワイア

○ハンサムでモテモテのグリム兄弟
兄グリム  ブラッド・ピット
弟グリム  ジュード・ロウ
(魔女にアンジェリーナ・ジョリー、村娘にシエナ・ミラー配役)

○明るいコメディになりそうなグリム兄弟(興行成績も一位を狙える!)
兄グリム  ウィル・スミス
弟グリム  ニック・キャノン

○暗い悲劇になりそうなグリム兄弟(インディーズ映画むけ)
兄グリム  ジョン・マルコビッチ
弟グリム  エイドリアン・ブロディ

○ 演技のへたな大根グリム兄弟(二時間ずっと棒読み)
兄グリム  キアヌ・リーブス
弟グリム  ヘイデン・クリステンセン

○ ブリスたんが好きそうなグリム兄弟
兄グリム  ショーン・ビーン
弟グリム  カール・アーバン

○世界最強のグリム兄弟
兄グリム  ザ・ロック
弟グリム  ヴィン・ディーゼル


うわー。どんな魔物が来ても、すぐに倒せそうだぜ!
これはもう超B級超アクション超テスタストロン映画になるのは確実だね。

こういう腕力兄弟がいたら、グリム童話もすごいアクション物になっていただろうね。
ぜんぶ腕力でカタをつける童話。
ディズニーの新作として「鉄人グリム」どうよ?

さてさてみなさんの脳内キャスティングはいかがでしょうか。

ギリアム度       ★☆
ご家族で楽しめます度  ★★★★

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