5月31日に、ホワイトハウスで、BTSがバイデン大統領と、アジア人差別問題について語り合いました。
これはBTSがアジアを代表する存在として、AAPI月間の最終日に招かれたというもの。

AAPIとは「アジア系アメリカ人、パシフィックアイランダー(太平洋諸島民)」の意味です。
太平洋諸島とはハワイやグアム、アメリカ領サモアなどのこと。

アメリカにおけるアジア系住民は、1990万人とされていて、全人口における約7.2パーセント。決して多いわけではありません。

ところがアメリカにおけるアジア系住民に対するヘイトクライムが急増したのは、2021年。前年に比べて、なんと339%も件数が上昇。

アトランタのスパでアジア系女性が6人銃殺された事件。NYの地下鉄で線路に突き落とされて亡くなったミッシェル・ゴーさん。67歳のアジア系の女性が125回以上殴られるという事件。あるいはマンハッタン内で2時間の間に7人ものアジア人女性が一人の犯人に暴行を受けるという事件などなど。人種ヘイトクライムは頻繁に起きているもの。

アジア系の中でも女性は74%が差別を経験していて、12%は肉体的な暴力も受けたという報告があります。

実際にニューヨーク在住の私たちも、駅のプラットホームではホーム際には立たないし、夜は出かけない、Uberを使う、帽子やサングラスで人種がわからないようにする、警報ベルを常に持ち歩くといった防衛策を取ってきたのです。

そんななかBTSは、アトランタの銃殺事件が起きたあと、2021年3月末に、ツイッターで、抗議文を掲げたのです。

「ご遺族の方たちに深い追悼の意を申しあげます。私たちは悲しみと怒りにとらわれています。

私たちもアジア系として偏見にあった時のことを思い出します。理由もなく罵られることを耐えなくはならず、見かけをからかわれました。さらに「アジア系なのに、なぜ英語を話すのか」とすら聞かれたのです。

そんな理由で憎悪や暴力の対象になることの痛みを、言葉で表現することはできません。私たちの経験は、ここ数週間で起きた事件と比べたら取るに足らないことです。それでもこうした体験は、無力感にとらわれ、自尊心を削られるには充分でした。

今、起きていることは、私たちのアジア系としてのアイデンティティから切り離せないものです。自分たちでかなりの時間をかけて、この問題を入念に議論して、どのようにメッセージをあげるべきか、熟考しました。

しかし私たちが伝えなくてはならない言葉ははっきりしています。

私たちは人種差別に対して立ちあがります。暴力を非難します。
あなたも、私たちもみんなが尊重される権利を持っているのです。
ともに団結していきましょう」

こうやって声をあげてくれたことに、アメリカに住むアジア系住民としては、いやもう感謝しかない!(涙)

他にアジア圏のスターでこうした抗議の声をあげてくれた人はたしかいなかったはず。やはりアジア系は黙っていることが多い。

そこをバシッと立ちあがってくれたBTS
このあたりさすがユニセフと子どもに対する暴力撲滅をキャンペーンしたり、国連でスピーチしたり、SDGsを呼びかけて国連内でパフォーマンスをしたりと、つねに善いことをしてきたのと、影響力があるからこそ。

まさにこのときツイートで表明したことが、ホワイトハウスで実現することになった歴史的なイベントです。

 

記者会見で、多様性のある社会を訴える

31日は大統領との会談に先だって、カリン・ジャン≃ピエール報道官と、記者会見を。
こーれーがすごかった、なにしろBTSが並んだとたん、ワシントンの政治記者たちが一斉にスマホでバシバシ撮りまくるというミーハー空間に。

カリン・ジャンピエール報道官と共に壇上にあがるBTSのメンバーたち。

ペンミなんかーい(笑)
どんな政治家や要人が出ようと、政治記者がスマホで撮ることなんてないし(笑)
ジャンピエール報道官も、なんだかウキウキしているような。

そしてリーダーのRMさんが登壇して、会見を開始。
「本日はホワイトハウスにお招きいただき、アジア系に対するヘイトクライム、そしてアジア系のインクルージョンとダイバーシティという重要な問題について話し合う場が設けられることを、とても光栄に思います」

 

続いてジンさん。
「今日はAAPI文化継承月間の最終日です。AAPIコミュニティーと共に団結し、文化継承を祝うために、ホワイトハウスにやって来ました」

ジミンちゃん。
「最近のアジア系住民に対するたくさんの犯罪に驚き、胸を傷めてきました。このようなことを根絶するために、少しでも助けになろうと、この場を借り、声をあげようと思います」

Jホープさん。
「今日ここに来ることができたのは、ぼくたちの音楽を愛してくれる多様な国籍、言語、文化を持ったファン、ARMYたちのおかげです。本当に感謝しています」

シュガさん。
「人と違うことは、決して悪いことではありません。心を開き、違いを受け入れたときに、平等は始まるのだと思います」

Vさん。
「私たちはみな、それぞれの歴史を持っています。今日のことが、ひとりひとりが大切な存在なのだと、たがいに尊重して理解するための一歩になることを願います」

ジョングクさん。
「韓国の音楽が、言葉や文化を越えて、世界中の多くの人たちに受け入れられていることには、今でも驚いています。音楽というものは、すべてをつなげてくれる、本当にすばらしいものだと信じています」

全部をつなげてみると、ひとつの見解になっているし、また7人がそれぞれ自分なりの言葉で考えたのだろうという内容でした。

ダイバーシティ(多様性)を受け入れたときに、平等があり、インクルーシブ(包括性)ある社会が成りたつという、すばらしいメッセージ。

このライブストリームは、なんと30万人が同時接続していたとかで、うわー。そんなに熱心に見られた記者会見なんてないよ!

 

オーバルオフィスで大統領と会談するのはアメリカでもないこと

そして大統領に会うために、通称「オーバルオフィス」と呼ばれる大統領執務室へ。
ここに入られる人物はきわめて限られているので、アメリカのセレブでも訪れられるものではないのです。

「ホワイトハウスにようこそ。どうぞなかへ」とバイデン大統領に迎えられるBTS。

大統領「アメリカでは今は重要な月間なのです。
多くのアジア系の人たちが、実際に差別の対象となっています。
ですが、正しい人間がそれについて言及すれば、ヘイトは身を潜めるようになります。
それがいかに悪いことかをいえば、減っていくものです。
ですから、みなさんには感謝しています」

RMさん「私たちはコロナ防疫や、ヘイトクライム対策法案に署名してくれた大統領の決断に感謝しています。
だから少しでもお力になりたかったのです。
そしてホワイトハウスと現政権が、ヘイトの解決にむかって努力されていることに深く感謝しています」

大統領「あなた方が話すことは、みんなが気にかけるし、あなた方がしていることは、誰にとっても良いことです。
才能があるというだけでなく、あなた方が伝えているメッセージ、それこそが重要なのです」

大統領を前にして、このナムさんの堂々として落ちついた態度、もう精神年齢が実年齢の倍くらいありそうな「ザ・要人感」を感じさせますねー。もう何百回も生まれ変わってきたオールドソウルというのか。

 

上院議員にもBTSアーミーが!!!

ちなみにワシントンの政治家たちがBTSを知っているかといえば、たぶん名前を聞いたことがあるくらいだと思いますが、面白いのが、ハワイ州のメイジ−・ヒロノ上院議員(民主党)
「私はBTSが誰か知っている、ただひとりの上院議員!」
とツイッターでつぶやいたところ、
これに応じて「ほど遠いですが」とツイッターでレスしたのが、デラウェア州のクリス・クーンス上院議員。

うーわー、執務デスクの上にBTSの写真がある!名札には、ハングル文字で「クリス・クーンス上院議員」と書いてあるーーッ!

なんだ、このK-POP感は!(笑)
きっとクーンス上院議員は、外交委員会のメンバーとして韓国を訪れているから、その時にもらったんでしょうね。たぶん娘さんがBTSのファンなのではないかと推察。

 

大統領の指ハートは歴史初!

そして会談後に、バイデン大統領と撮った記念すべき写真がこちら。

えーッ!なんとバイデン大統領が「指ハート」しているーッ!
「指ハート」というのは、アメリカの文化習慣にはないもので、K-POPから広がっていったものなんですよ。
フツーのアメリカ人は指ハートなんて知らないんだよ。
まさかそれを大統領がやるとは!
アメリカ史上初ですよ!

そしてバイデン大統領も、アイドルと並んでスタイルに遜色がないのは、あっぱれ。

もちろんこれで人種差別がすぐなくなるわけではなく、そもそもヘイト犯罪をする人たちがホワイトハウスの会見なんか見ないわけですが、それでも声をあげるというのは非常に大きいこと。それが少しずつ「特にその問題について考えたことがない」「自分とは関係ないと思っている人たち」の意識を変えていくから。そして多くの人たちの意識が変わっていったとき、社会は変容していくもの。

ユニセフでのスピーチから国連でのパフォーマンスと前代未聞のことをつぎつぎと達成して、今回またアメリカの歴史でも初めてのことを実現したBTS

新譜のカムバック直前で激忙しいだろうに、わざわざ渡米をして、アジアの人たちのために声をあげてくれて、本当に感謝です。
少しでもヘイトのない社会にしていけますように!