ニューヨークのブルックリン美術館で、2021年9月10日から、「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展が開催中です。

DIOR_DESIGNER-OF-DREAMS_NY_©Paul-Vu

これはパリ装飾芸術美術館で行われた展覧会の巡回展で、今回、初公開されるコレクションも登場しているのです。

美しいものが好きな方は、もう絶対に観たほうがいい展覧会です!

ここで見どころをズバッと全解説していきましょう〜!

アメリカとディオールの結びつきに注目!

まず今展覧会の特徴は、ディオールとアメリカの関係にフォーカスを当てているところ。

1947年春夏コレクションで、クリスチャン・ディオールが独立後初めてのコレクションとして発表した新しいシルエットは、「ニュールック」として、世界的なセンセーションを巻き起こしました。

それがこちらのルックです!

クリスチャンディオールが1947年に発表した「ニュールック」

この「ニュールック」はウエストを絞った形が特徴的ですが、これは歴史的に見れば、18世紀のようにコルセットで女性の胴体を締めつけたスタイルに近いもの。

第一次大戦後は、ポール・ポワレやガブリエル・シャネルのようなストンとしたシルエットが出て、女性たちをコルセットから開放しました。

ところが第二次戦時中は、フェミニンな恰好はできるものではなく、平和が訪れた時に、人々の気持ちがようやく着飾るところにいったといえるでしょう。

その時代の空気にはまったのがディオールのニュールックで、これはコルセットやクリノリンがなくても、美しい曲線を描いているところが時代にぴったり。

この成功でパリの花形デザイナーに踊り出たディオールがアメリカに来たのは、同じ1947年のこと。そしてアメリカを訪れたムッシュ・ディオールは非常に感銘を受けたといいます。

DIOR_DESIGNER-OF-DREAMS_NY_©Paul-Vu

戦火にあったヨーロッパとは違って、アメリカは経済的に世界のトップになった時期.ムッシュにとって新しい大きなビジネスチャンスと映ったことでしょう。

そして五番街に初の海外ブティックを開店、アメリカ市場に乗りこみます。

映像や資料で、ニーマンマーカスで販売が始まった時点や、当時の貴重なランウェイの様子も観られます。

こちらがムッシュ・ディオールによる50年代のルック。今見ると、とても品がよい、クリーンなルックですね。

クリスチャン・ディオールによる50年代のデザイン

ファッションページを飾った名写真

そして今回の展覧会の特徴は、ファッション雑誌を飾った、ディオールのファッションページが展示されていること。
20世紀後半は、ファッション雑誌の黄金期。アーヴィング・ペンら卓越したフォトグラファーたちがファッションページを飾りました。

DIOR_DESIGNER-OF-DREAMS_NY_©Paul-Vu

こちらが有名なリチャード・アヴェドンによる、モデルのドヴィーマを象と組みあわせた写真、ハーパーズバザー誌に掲載された傑作です。

リチャード・アヴェドンが雑誌のために撮って有名になったディオールのルック

サンローランやガリアーノ時代のディオール

そしてムッシュの後を継いだイブ・サンローラン、ジョン・ガリアーノ、ラフ・シモンズ、マリア・グラツィア・キウリなどの作品も並べられています。

これがまた見どころ満載で、ディオールのDNAを引き継ぎながら、それぞれのデザイナーの個性が見てとれます。

サンローランの洗練とエスプリは、これぞパリ。まさしくカトリーヌ・ドヌーヴ主演「昼顔」の世界ですね。

イヴ・サンローランがデザイナーとなった時代のディオール

私にとってディオールといえばジョン・ガリアーノで、その華麗さ、ドラマチックさがパリコレの花でしたが、さすがガリアーノの時代は華やか。

ジョン・ガリアーノがデザインを担った時代のディオール

当時はリンダ・エヴァンジェリスタやナオミ・キャンベルのようなスーパーモデルが活躍して、世界の経済もイケイケでした。経済とファッションはみごとにパラレルになるのです。

そしてラフ・シモンズ。彼のデザインになると、現代アートのような造型美、ポップアートのようなズラし方があって唸ります。絢爛豪華というより、アーティスティックの方向ですね。

ラフ・シモンズがクリエイティブディレクターだった時代のディオール

一方、マリア・グラツィア・キウリが手がけるディオールとなると、非常に繊細で、フェミニンさとエッジーさを感じます。

マリア・グラティア・キウリがクリエイティブディレクターを務めるディオール

中央のルックは「ニュールック」を、彼女の解釈で現代によみがえらせたルックですが、キュレーターのフローレンス・ミュラーさんが着ていて、とてもステキでした。

ディオールの長い歴史のなかでも意外なことに、女性のクリエイティブディレクターが就任するのはマリア・グラツィア・キウリが初めてで、女性デザイナーだけに、女性が着た時に「よく見える」コツを押さえている気がします。

圧巻のスケールで見せてくれる展示

もちろん撮影にぴったりのコーナーもいっぱいです。
こちらはムッシュ・ディオールが憧憬を抱いた18世紀のフランスのファッションにインスパイアされた作品たち。

ディオールのクラシックなエレガンスと、香水ミス・ディオールの誕生

 

圧巻は白いシャツが並べられた一角。ここは撮影ポイントですね!

天井まで高く、白いシャツやドレスが陳列されたコーナーは圧巻

そして美術館の天井の高いスペースを駆使した展示スタイルが、すばらしい!セルフィーにばっちりとは、このこと。

DIOR_DESIGNER-OF-DREAMS_NY_©Paul-Vu

最後のコーナーには、実際にセレブたちが着こなしたディオールの数々のドレスが展示されているので、誰が何を着たのか、見てみると楽しいです。

観たあとは、「美しいもの」浴で、魂があがりますよー。本当にきれいなものを見ると、デトックスしたように気持ち良くなりますよね。

パンデミックで、夢のような世界に飢えていた日々を考えると、本当にこうした展覧会が観ることができるのは、本当に嬉しいこと。

オンラインの予約チケットは、タイムスロットがありますが、パンデミックで人数制限をしていた頃と違って問題にはならず、また直接窓口でも購入できます。
2022年2月までの開催なので、ぜひともお見逃しなく!

The Brooklyn Museum

200 Eastern Pkwy, Brooklyn, NY 11238
Christian Dior : Designer of Dreams  入場料金 $25
月曜日、火曜日休館
水曜日 11:00am – 6:00pm
木曜日 11:00am – 6:00pm
金曜日 11:00am – 8:00pm
土曜日 11:00am – 8:00pm
日曜日 11:00am – 6:00pm