ホリデーシーズンにぴったりの娯楽映画が「ドリームガールズ」

ブロードウェイのミュージカルを映画化した作品で、60年代から70年代を背景にして、シュープリームスみたいなガールズ・グループが夢をつかんでいくスター物語です。

成功への階段の裏には、スポットライトの奪い合い、嫉妬と家族愛、恋と裏切り、ビジネスと表現のせめぎ合いといった芸能界のドロドロがからんでいて、まさに少女漫画のゴールデンパターン。

でも決してリアルすぎる表現は見せず、きれいに描いているので、ご家族みんなで楽しめるエンタメにしあがっています。

この映画の魅力はなんといってもキャスティングそのもの。
ダイアナ・ロスを彷彿とさせるビヨンセと、モータウンのような音楽会社を興すヤリ手の社長ジェイミー・フォックス、そしてチャック・ベリーとジェームズ・ブラウンを足したようなエディ・マーフィと、どれもぴったりの配役。
エディ・マーフィがいい味出して、ひさびさにクリーンヒットです。

でもってとにかくビヨ姫がきれい!
この役のために10キロ減量したとかで、ふだんのビヨ姫よりスリムになり、ばっちりメイクした姿は、これぞ少女漫画のヒロイン。
もう眺めているだけでうっとりの美しさ。

このひとに演技はむりだろうと思っていたんですが、これはまさにビヨ姫のはまり役、彼女以外考えられないですね。

だが、しかしこの映画における真のスターとは、なにを隠そう(だれも隠してないって)エフィー役のジェニファー・ハドソンなんだぜ!

ジェニファーは2002年の「アメリカン・アイドル」コンテスタントで、この役は781人のオーディションのなかから選ばれたとか。

わたしは個人的に「アメドル」というのは、どうも優勝者がもっさいというのか、垢抜けない気がしてまったく興味なかったんですが、いや、これはたいした、たまげた、驚いた。

エフィーが唄い出すと、おおおー、と画面に惹きつけられちゃうんだもの。
ソロで唄うパートのあとでは映画館でもミュージカル劇場のように拍手があがっていたほど。

ミュージカルを映画化すると、どうしても劇場の興奮や一体感というのは薄れてしまうものだと思うんですよ。ほら、ミュージカルって劇の途中でいきなり唄いだすじゃないですか。あれが舞台ならいいんだけど、映画だと、なんとなくアホみたいに見えてしまう。

ところがこの映画では奇跡的に、舞台のライブ感が保たれていて、エフィーが唄いだすと、ちょうど舞台を観ているような臨場感を感じて、がっちりハートを捕まれてしまうんですね。

エフィー役はこの映画でのおいしい役どころなので、じつはビヨンセもエフィー役をやりたくてオーディションしたらしいですが、当然その線はボツ。ビヨンセではきれいすぎて、役柄に合わないよね。

そのために「ビヨンセがジェニファー・ハドソンに嫉妬しているらしい」なんてなゴシップも流れたんですね。
しかし天下のビヨ姫、その噂を一笑して、

「ンまあ、なんてくだらないことを。あたくしはグラミー賞歌手なのよ。すでにスーパースターなのよ、このあてくしがド新人に嫉妬するなんてことあると思って? おーほっほっほ」

みたいな発言をバシッとマスコミにむかって放ったのでした。

ま、そりゃそうだわな。お蝶夫人が岡ひろみに嫉妬するなんて、姫のプライドが許しませんことよ。

しかしそのゴシップがまことしやかに流れるほど、映画ではジェニファーの存在感が圧倒的。

だってビヨンセの歌までふっとんじゃうんだもん。
それだけの歌唱力ってのは、すごくないすか。

アメリカのエンタメ業界はやっぱりたいしたものだと舌を巻くのはこういうときですね。
ジェニファーみたいに田舎出身で、美人でもなければ、もっさいタイプの女の子が、ガッツと実力だけでハリウッド映画の大役を射止め、観客の喝采をうけ、なんとゴールデングローブ賞にもノミネートされる、なんてことが現実に起きてしまうんだから。
つくづくエンタテイナーの層が厚い。

そういう現実のアメリカン・ドリームが重なって見えて、とても爽やかに明るい気持ちになれる映画です。

ええと、ちょっとマニアックになりますが、ついでに注目して欲しいのがヘアメイクのすばらしさ。

これが60年代から70年代後半にかけての時代の移り変わりをよく表しているんですよね。ビヨンセの60年代調ツイギーみたいなメイクから、ダイアナ・ロスにくりそつな目張りメイクまで、どれもすごくよくできている。

メイクチームのヘッドは、シュッチャイ・ティム・ブアチャレン。(Shutchai Tym Buacharern)
タイ出身でミュージックビデオを多く手がけているメイクアップ・アーティストです。
女子のみなさんはヘアとメイクを見ているだけでも、楽しめるはず。

歌と感動とスパンコールがちりばめられた、女の子魂にどんズバのエンタメ映画。
乙女のハートをもつみなさま、ぜひご覧あそばせ!

正しい少女マンガ王道度 ★★★★★

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