NYのアウトドアダイニングに、なんとコタツが登場した、

コロナ禍で、NYではインドアダイニングはいまだに定員の25%に留められている。アウトドアダイニングは引き続き営業できるのだが、懸念されるのは、なんといっても寒さだ。

そのため各レストランは、テントを立てて風を防いだり、ヒーターを導入したりと、生き残り作戦を計っている。

そんななかでお目見えしたのが、アメリカ初のアウトドア堀ごたつだ。

マンハッタンのダウンタウンにある「ドクター・クラーク」(Dr.Clark)では、アウトドアダイニングにコタツを初登場させて、話題をさらっている。

こたつには蜜柑まで置いてあるという、ザッツ・ジャパン感。

ドクタークラークのアウトドア堀ごたつ。見た目もおしゃれだ。

共同経営者の金山雄大さんは、北海道の札幌出身。

NYではFIT(ファッション工科大学)に通い、それからレストランIZAKAYA(居酒屋)を創設、またプロデュースを手がけたうどんダイニングのHanon(波音)と、どれもNYタイムズに取り上げられる快進撃を果たしている。

その金山さんが満を持してオープンした「ドクター・クラーク」は自身の夢のプロジェクトだったという

彼が北海道をテーマにして思い描いた、すべてを盛りこんだ空間だ。

ドクタークラークの店内。博士が迎えてくれる。

札幌農学校を開校したウイリアム・スミス・クラーク博士の名前から店名を取っているが、彼の有名な言葉「少年よ、大志を抱け」は、彼の座右の銘とであるともいう。

北海道をテーマにして、羊のジンギスカン鍋がシグネチャーとなっているが、その他にも、ホッケやザンギなど北海道らしいメニューを、アメリカ人にも響くようにアレンジして提供している。

ドクタークラークの北海海鮮。

 

北海道の唐揚げであるザンギ

NYタイムズにも取りあげられ、順調に滑り出した「ドクター・クラーク」だったが、3月になって新型コロナ禍のロックダウンに襲われた。

世界一の感染者と死者が出たNYでは、レストランはクローズ。当面、テイクアウトとデリバリーのみが許された。

この厳しい状況に、有名レストランですら、次々と閉店に追い込まれたが、金山さんの発想と行動力は早かった。

金山雄大さん、ロックダウン中も「レストランで使える日本語」をインスタ発信するなど、積極的に動いた

「実はアウトドアが始まる前から、既にかっこいいパーティションをデザインして作っていたんです。

アウトドアダイニングが始まってからすぐ他のレストランからそれを作ってほしいという依頼が来て、かなり注文が入って作製しました」

ドクタークラークの間仕切りは曇りガラスで洒落ている

曇りガラスを使った間仕切りなど、おしゃれな空間設定が、施工依頼につながったという。

アウトドアダイニングが許可されてすぐ洒落たバーを設置した

「アウトドアがパーマネントになると知った瞬間に、北海道をテーマにしたレストランでもあるので、北海道の雪のかまくらの中にコタツ置いてジンギスカンをTシャツだけ着て食べている様子からヒントを得ました。

すぐに日本からコタツヒーターとコタツ布団を大量に輸入して、掘りごたつを野外に作ったんです。ヒーターはとりあえずメトロ製を探しまくって揃えました」

施工をする雄大さんのチーム

ご覧のように、テーブル席でアメリカ人にも足が楽に座れる堀りごたつスタイルになっている。カスタマーには、日本式に靴を脱いでもらって座ってもらう。

堀ごたつになっていて、椅子になれたアメリカ人も楽に座れる

このコタツ・ダイニングは、たちまちSNSでも話題になって、たちまち予約がどっと押しよせた。

またアウトドアで有名な某ブランドからも、コタツのブランケットでコラボレーションしたいとアプローチがあったという。

さらに予想外の反響だったのが、多くのレストランから、こたつの問い合わせが殺到しているという、

「今回はコタツを作っていたらいろんな人が見に来て作ってほしいと依頼が来て、工事で忙しくなりました。

ぼくらの強みは、日本の技術を持った工事チームをインハウスで持っていることです。

自分が頭に浮かべたアイディアを次の日現場で形に出来るチームです」

と金山さん。今や施工の注文も大きな仕事となっている。

ドクタークラークの雲丹パスタ

日本人であれば、こたつのぬくぬくとした魅力はよく知っているもの。

アメリカにはなかった「ぬくぬく」文化が、これから席巻するかもしれない。

「コロナになって今ままでないくらいにクリエイティブに、フレキシブルに、そして誰よりも早く動くように気をつけていました。

最近自分が何屋なのかわからない感じになってますが(笑)なんでもやりますよ!」

と金山さんは新しい発想で、可能性を切り拓いている。

SUSHIはもとより、OMAKASEやUMAMI、MATCHA、YAKITORI、BENTOなど、アメリカでもはや英語として根づいている日本のカルチャーはいくつもあるが、次はKOTATSUがトレンドの仲間入りをするかもしれない。

この冬、NYに広がるコタツの快進撃を期待したい。


Dr.Clark

住所: 104 Bayard St, New York, NY 10013
営業:月曜〜木曜 17:00-23:00  金曜〜日曜 12:00-23;00