新型コロナウイルスのパンデミックで、アメリカの感染者総数は、なんと76万人超え、ニューヨークでは24万人超え(4 月19日付け)

このたいへんな状況にあって、医療従事者にとって、感染から自分たちを守る個人用防護服(PPE)は欠かせないものであるのに、不足しているのが現状だ。

そこでPPEの製作に立ちあがったのが、ファッションガールズ・フォーヒューマニティだ。

 

衣料で、医療最前線に貢献する

FASHION GIRLS FOR HUMANITY(FGFH)は、もともと2011年、東日本大震災のためのチャリティー団体として、ファッション業界のリーダーであるジュリー·ギルハートさん、花沢菊香さん、日笠美紀さん、小倉朋子さんによって設立された。

 

当時、多くのNYデザイナーたちが日本のためにサンプルセールの服を提供してくれて、莫大な寄付金を集め、日本の被災地への寄付をした実績がある。

 

その後も、FGFHはアメリカで認可されているNPOとして、さまざまなコミュニティに向けた人道支援や寄付を続けてきている。

 

今回、FGFHは、Fashion for the Front Lines、および衣料製品を作るCare+Wearと提携し、医療関係者がCovid-19(新型コロナウイルス)と戦い続けるために、必要不可欠な防護服の普及を援助している。

医療関係者が着用する個人用防護服(PPE)の不足をサポートするため、義援金を募っている。

 

 

$25あれば、一着の防護服を最前線で働く医療従事者に送ることができる。

GO FUND MEのこのサイトで、寄付を受け付けている。

サイトはこちらだ。

FASHION GIRLS FOR FRONTLINE

 

 

フリーダウンロードできる型紙に世界からアクセス

 

この試みについて、FGFH代表であり、またファッションブランドVPLを率いる花沢菊香さんに、どういう意図で始まったのか尋ねてみた。

FGFHの代表であり、VPL社長の花沢菊香さん

 

 

「3つのレベルで考えたんです。まずはVPLとして生産機能があるのでPPE医療保護服の不足に対応できるか。これはニューヨーク市やロスとも話したけど拉致があかない。

役人だからみんなものを作る時間とかサプライチェーンとかが、わからない。

もうひとつは個人として家にいるのでできることが限られてしまうけれど、今やテクノロジーで世界と情報を共有できるから、手っ取り早くUCLAのドクターから保護服で一番一般的なものをもらって、型紙をリバースエンジニアして縫製と布で作り直したんです。

それをYoutubeにあげ、型紙と仕様書をFashion Girls for Humanity で、ダウンロードできるようにしたら、なんど98か国以上、3万人のアクセスがありました」

 

FGFHのウェブサイトで提供しているフリーダウンロードできる保護服の型紙

 

 

 

「多くは大都市以外の場所で、全然PPEが送られてこない場所にある病院、施設、介護施設、ホスピスなど。

ニューヨーク市の病院の医者も私の型紙をつけてこれを縫製してくれとたのんでいたのを知りました」

サイトを立ち上げてから1週間と経たないうちに、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア、南米、アフリカ、そして全米から98か国以上、3万人近くの人が防護服やガウン型紙・技術情報をダウンロードしたり、その作り方を視聴したりした。

 

アメリカで多くの一般人が、型紙をダウンロードして、防護服を縫製した。

 

「アメリカではキルトを作るなど、ホビーストがいっぱいいて、そのひとたちも型紙をもらって作り出したんですね。

何万人の人たちがグループや工場に出したようです。

世界でこんな人数の人々と繋がるとは思いませんでした。

今回、ファッションが人を救う、あるいは人を救おうとしている人たちを助けることができる、私たち一人一人がやれることをやるしかない、と感じました」

 

防護服のほうは、シーツを利用して製作している人たちも多く、アイダホの人たちが、60着以上作ったという。

アイダホの民間人が縫製して寄付をした防護服

 

各国が保護服を自国で生産しなくてはいけない状況に

 

「この不足の状況は早くても、まだ4−5ヶ月続きます。

保護服がないともうすでに起きていることですが、介護施設の労働者とかみんな居なくなってしまうという状況だと思います。

もともと特殊でチープなもの、大量生産でインドなどからしか資材がないような商品なので、急にそんな機械も作れないし、不織布も素材がもうマスク生産にいってしまっていてない。

でも各国がそれぞれ輸出規制していますから、もう自分たちの身は自分で守るしかない。

医療者向け保護服も一般向けマスクも生産はアメリカです。

輸入規制されているので、ほぼ他からは無理なのかなと思っています。

そうなると実はもう政府や市ではないんですね。個人がステップアップして作らなくちゃいけいない状況です。

たとえば緊急の歯科の手術をしなくてはいけない歯科クリニックからもガウンが購入したいと、依頼がくる状況です。

たしかに職業によっては生死をかける仕事になってきているわけです。

こうなると、ファッションとは何か、衣料とは何か、という問いが生まれてきます。

今、ルーティーンとして、ファッションの仕事をしている人たちには、早くその存在意義を考え直してもらいたい、と思ったりもします」

 

 

ファンドレージングでマスクを生産

 

そして3つめのレベルは、基金を集めるファンドレージングだ。

 

「もうひとつのレベルではファッションガールズはやはりファンドレージングをしてお金が必要なところへ、今回はガウンを生産提供する団体と組んでやることになりました。

そしてファッションのもうひとつの重要な役割はこんなデザインだったら着たいよね、と思わせることです。

かっこいいマスクの提供です。

ナチュラルな流れですがデザイナーマスクコレクションをやります。この売り上げの一部がこのファンドレージングになります」

 

またファッションブランドVPLを率いる花沢菊香さんは、VPLでもマスクをネット販売。

この$12 の布製マスクのうち、$5がFGFHを通じて防護服を作る基金にむけられる。

さすがファッションブランドらしいスタイリッシュなデザインだ。

VPLで販売されているマスク。5ドルが寄付に回る

 

 

 

サステイナビリティとファッション

 

「今年はサステイナビリティが本格化すると考えてはいましたが、こういうきかっけで、全部にブレーキがかからなくてはいけないほどだったのかとも思います。

洋服の世界市場の在庫は、とんでもない大きさです。ストップしても数年生きていけます。

私は叔母が宇野千代の着物をデザインしていたので反物がいっぱいあり、マスク生産にドネーションしました

ご存知の通り着物は幅が狭く洋服のようなおおきなものの生産ができませんが、小さいものにはいいんです。

サステイナビリティの精神と、日本のデザインとか技術、それとアメリカでも健在のクラフト、キルト、通じるものがあるような気もします。

今回はじつはニューヨークのファッション業界ではなく、地方のそういうことをしていらっしゃる名もない方々が、すぐ行動に起こして型紙起こして作っている。

私は今週末何個か作りました。

母の形見のミシンがあるので、最初の100個くらいはマスクも作ったけど、一日で売り切れ。

さすがに工場に来週から作ってもらいます」

 

ファッションも変わっていく

 

「在宅効果のせいか、VPLの下着もすごい売れています。

やっぱり外に来ていく服ではなくて家で着るもの、マスク以外になにが必要なんだ、という感じですよね。

これが一年くらいは続くわけですから、ファッションもさっさと変わらなくてはいけないと思います。

大きな転換期が本当に急にきました」

 

VPLはランジェリーを生産しているので、マスクを作るためのゴムは充分に揃っているという。日本のシンドーというメーカーの高級品だ。

 

「過去何回ももめたんですよ、いつまでゴムを取っとておくだって。

でもいまマスク生産ゴムがない状況です。

ですから作っている方に分けていこうと、すべてファッションガールズに寄付しています。

ああ、この時のこのためにゴムを取っていたんだ、と考えて、今日は涙が出てしまいました」

 

ファッションの前線に立ってきた花沢菊香さんが、ひしひしと感じる変換は、これからのライフスタイルが変わっていくことを

そして全米にいる、ごくふつうの名もない手芸好き、ソーイング好きの人たちが、じつは医療の最前線で戦っている看護師や医師たちのために、コツコツと手作りして寄付しているというのも感慨深い。

私たちがひとりひとりにできることから、ぜひ協力していきたい。

 

寄付を受け付けるGO FUND MEのサイト

FASHION GIRLS FOR FRONTLINE