コロナ禍の中、消費者のヘルシー食品への関心が一層高まる
2020年はコロナ禍のパンデミックを受け、世界各国の多くの人たちがこの数か月、自宅自粛生活となった。
そんな中、米国の一般消費者の食品食材の購買スタイルも変化している。デイリーの食品食材、生活必需品の購入は、その大半をインターネットやオンラインで購入して自宅にデリバリーしてもらうという購入スタイルが今年の半数~7割近くに上るようになってきた。
3月20日からロックダウンに入ったNYでも、コロナ禍で消費者の購買志向が変容している。オーガニックやグルテンフリーに代表されるヘルシー食品食材が、コロナ以前にも増して売れている。長いコロナ禍での生活の中、自宅にいる時間が長くなって肥満や運動不足を心配する消費者が、インターネットで時間をかけて自身の健康に良いものを選ぶのがトレンドとなっていることが理由である。
その傾向として消費者達は、食材や商品の購入時に食材に使われている原料や原産地の表示をオンライン上で念入りにチェックするようになり、加工食品や油脂などが多く含まれる食材を避け、少々高くても健康によいオーガニックな食品食材を購入するという意識が高くなっている。
(写真:PR Genic)
購買調査では、消費者全体の53%が加工食品を購入しない
米食品大手カーギル社は9月、消費者の購買行動に関する調査「FATitudes」の2020年版の結果を発表。
(写真:カーギル社ウエブサイト)
米国人の一般消費者の53%が、加工食品に含まれる脂質の含有量を注意深く確認しており、それらを購入しないという姿勢が一貫していることが判明。さらに、注目すべき変化の一つとして、上述した健康に良い持続可能な食品への関心の高さが、コロナ以前に比べて増えているということが裏付けされた結果となった。
また2020年の結果では調査対象の一般消費者の37%が、持続可能性を示す食品食材を購入すると回答している。これは2019年の米国の消費者の回答結果と比べ、6%の増加となった。
さらにコロナ禍パンデミックで消費者の購買行動は大きく変化する中、特にミレニアルやZ世代の若手が、サステナブルな健康食品への関心が高いという調査結果が出ている。
(写真:カーギル社ウエブサイト)
さらに健康で「サステナビリティ」食品を求めるミレ二アル・Z世代
注目すべきトレンドとして、特にミレニアル・Z世代(20代~30代後半)の若手層達の健康食品への関心が以前より高まり、よりオーガニックやグルテンフリーなどの健康食品がブームとなっていること。一方で、加工食品など混合物や脂質の強い食品食材は購入しないという意識と傾向がミレ二アル・Z世代の間でも、さらに強まっているということが顕著である。
世代別にみると、Z世代で45%、ミレニアル世代の42%にも上り、ほぼ半数は持続可能な健康食品を購入する傾向が強いとみられる。それに比べてベイビーブーマー世代はわずか32%が、健康食品に注目しているとのデータが出ている。
米食品大手の関係者は前述の調査から、若手世代がベイビーブーマー世代以上に、ヘルシー食品に関心が強く、食品食材を購入する際に、表示ラベルを注意深くみて、その原料や脂質をチェックする傾向が高まっている。この傾向により油脂の多いモノや加工食品は売れなくなっている。今後、健康に配慮した完全なオーガニックやグルテンフリーな商品を生産し提供しなければならないと述べている。
(写真:PR Genic)
米大手食品カーギル社ら、サステナブルな健康食品の生産強化
上述の購買傾向の半数近くを占めるミレ二アル・Z世代の動きに、いち早く反応しサステナブルなオーガニック健康食品の生産の一層の強化に乗り出している代表食品会社が、ミネアポリスに本社おく米大手食品カーギルである。
「新たな食品を生み出すための、サステナブルな方法を見つけ出そうとしている」とカーギル社のマーケティング生産責任者を務めるジェイミー・マーベック氏は話す。
また同社は、こうした市場トレンドに即日対応し、消費者マインドをキャッチし売上を伸ばすことで、フォーブスの「米国最大の非上場企業ランキング(America’s largest private companies)」でも、年間売上高1150億ドルを誇る企業として、過去30年で28回首位に輝いている。
Forbes「America’s largest private companies」
(写真:カーギル社ウエブサイト)
その理由としてカーギル社は、トウモロコシの畑が何マイルも広がるミネアポリス郊外の広大な敷地に、数棟の白い外壁の建物を所有しているが、これらの建物の中で、カーギル社にとって非常に重要なオーガニックやグルテンフリーなヘルシー食品の生産強化を目指すプロジェクトが進行している。
その報告として同社は今年6月2日、サステナビリティ健康食品の調達と進捗状況を発表。カカオ、パーム油、大豆、牛肉、養殖飼料の5項目について、消費者が希望するヘルシー食品の基準度に達していることを示した。この取り組みについても、同社はミレ二アルZ世代を含む消費者にアピールを強化。
さらに大手食品のカーギル社がサステナブルなオーガニック商品生産の強化をアピールし始めたことを含めて、ファーストフードチェーンの世界大手米マクドナルドや国際環境NGOのザ・ネイチャー・コンサーバンシーらが協働でリジェネラティブ農業を推進するプロジェクトを発表。今後5年間で850万ドル(約8億8,300万円)を投じるという。
「リジェネラティブ」とは再生を意味する。 この言葉を冠したリジェネラティブ・オーガニック農法は、オーガニック農業の最善部分を基礎に構築した土壌の健康、動物福祉、労働、農家、環境に配慮した新しい農法である。(ウイキペディア)
(写真:カーギル社ウエブサイト)
2021年はさらに進化する健康食品ブームに
いまや、米国の全体消費者の半数を占めるミレ二アルZ次世代の消費購買力は、大手食品会社には無視できない大きな市場となる中、2021年は、彼らが購入したくなるサステナブルな食材や環境に配慮したヘルシー食品がさらに一層大きな食品市場のブームになることは明らかである。
そして、この市場トレンドを受け米大手商品会社の間でも、ますますサステナブルな商品を提供するという意識が高まっており、「SDGs×次世代×事業再生×企業存在価値」という新たなサプライチェーンが重視され始めている。
(写真:カーギル社ウエブサイト)
このヘルシーな健康商品を求める若手消費者の動きと、それに応えようとする米大手食品会社らの取り組みが、2020年のコロナ禍で顕著になった健康トレンドの後押しとなり、若い次世代を含む肥満が多い米国の一般消費者へのより良い健康維持への一助につながるであろう。
そして、更に米食品会社の企業としての存在価値を底上げアップするという消費者と企業の両者双方へのサステナブルな相乗効果となることを期待したい。
(SDGs #3) すべての人に健康と福祉を
(参考文献)
Cargill 「Fats and oils continue to weigh on consumers’ packaged food choices amid pandemic pressures」
Forbes「America’s largest private companies」