年の暮れ、私はどのセレブを書こうかな、と考えて1年を振りかえる。
一昨日、美女シエナ・ミラーは私を見るなり、「ユー・ルック・ビューティフル」と言ってくれた! なんて優しいんだ。
今年も、みんなから優しくしてもらった。このシエナのように、親切に取材対応してくれた人たちばかり。
ハリー・ポッターことダニエル・ラドクリフは、「一緒にセルフィーを撮ろう」と、私の携帯電話を自分でクリックしてツーショットを撮ってくれた。
マーク・ラファロは「オヤスミナサイ! タイヘン オイシイ カッタ デス!」と、日本語で話して日本の視聴者へサービスしてくれた。
(セレブの小部屋 No.93「素顔の優しいアカデミー賞ノミネート役者マーク・ラファロ、社会や環境を気遣う一般人」)
一昨日の晩、NYで開催された『素晴らしきかな、人生(原題:Collateral Beauty)』プレミアのレッドカーペットでは、ウィル・スミスも底抜けに明るい笑顔で、「ああ、日本! コンニチハ! コンニチハ!」と、日本語で挨拶してくれた。
ウィルはいつもハッピーなエネルギーを巻き散らしていて、彼のそばにいるだけで誰もがみな満面の笑顔になってしまう。
ところが、この新作映画では、愛する人を亡くした男を演じきり、私は泣かされたのだが、実はウィル自身も愛する人、なんと最愛のお父様を亡くしたばかりだったとは!
12年も前のことだが、私は、ウィルがお父様の話をしてくれた時のことをよく覚えている。それを思い出して、笑顔の下に潜んでいるであろう彼の気持ちを想像してしまう。
(2004年に聞いた父親の話はこちら:セレブの小部屋 No.32「ネズミの死骸に秘められた、ウィル・スミスの生きるコツ」)
そして同じく、この『素晴らしきかな、人生(原題:Collateral Beauty)』のプレミアで再会した大女優ヘレン・ミレン。
映画の役柄のイメージで、ブルーの装い。
熱気ムンムンのレッドカーペットだったので途中からジャケットを脱いで取材に応じていたヘレンだが、私とのインタビューの際には「日本の皆さんなら、きっとこれを気にいってくれるでしょうから、これを羽織らなきゃ」と、目の前でブルーのファーふわふわのジャケットを着用してくれた。
一瞬、動物苦悩の代物である毛皮かと恐れをなしたがフェイクファーだった。しっかりと目立つ「毛皮反対」のピンを着用して、ヘレンはプレミアに壇上してくれたのだ。なんて素敵な人なんだ!
この人、大好き! 賢くて、優しくて、誠意があって、上品で、美しい。誰もが憧れるヘレン。
「あなたが恐れる怖いものは何?」と、いつか、彼女に聞いたときの答えを、いまも思い出す。
(私の過去の記事:セレブの小部屋 No.79「だれもが憧れる優美な大女優ヘレン・ミレン」)
海のことを考えただけで、ビニール類を恐れるわ」
と、彼女は答えた。
どれだけプラスティックが海を汚染し、海洋生物を傷つけているか。彼女はそれを認識している人。そんな意識の高い人こそ、私が心から尊敬する人。
そんな彼女が一昨日、ブルーのドレスに身を包んで現れて、「ブルーは海の色」と語ってくれたのだ。
水は命ーーー。
今年最後のこの記事で、自分が敬意を持てるヒーローにフォーカスをあてたいと思ったら、今年、「水は命」であると、世界に認識させてくれた「水の保護者たち」と呼ばれるノースダコタ州のアメリカ先住民スタンディングロック・スー族の人々たち、そして彼らに賛同する活動家たちの顔が、私の頭に浮かんできた。
私にとってのヒーローは、スターとかではない。
自分のアートや自分の生活や自分の家族や友達のために頑張っている人たちではなく、世界の困っている人々や動物や環境のために情熱を持って生きている人たちこそが、私にとってのヒーローだから。
何百人もの人々の水源であるミズーリ川の下を掘る石油パイプライン「ダコタ・アクセス・パイプライン」の建設をめぐって、そのアメリカ先住民の居留地の水源が汚染する懸念から抗議デモを続けてきた「水の保護者たち」。そんな非暴力の抗議者たちを、政府は暴力で取り締まる。
同じことが、いま沖縄でも起きている。
高江や辺野古の自然を守りたい人々の意思を無視して、力づくで米国軍基地が増設されようとしている。
沖縄の抗議者も、スタンディングロックの抗議者も、政府や軍産複合体に向けて非暴力で対抗しているのだ。
今月、私はスタンディングロックの水の保護者のために、NYの米国連邦ビル前に座り込んで、日本人のお坊さまと一緒に太鼓を叩かせていただいた。
そのとき、ひどく感動してくれたアメリカ人女性がいて、「ここの空気を浄化してくれて、ありがとう! 私はジョシ・フォックスの友達なの」と言ってきた。

ダコタ・アクセス・パイプライン建設に抗議するアカデミー賞ノミネート監督ジョシ・フォックス。 Photo: © Erik McGregor
ジョシ・フォックスは、天然ガスフラッキング(水圧破砕)の環境汚染により、きれいな水道水さえ与えられない人々が存在する問題を扱ったドキュメンタリー『ガスランド』で、2010年、アカデミー賞ノミネートされた監督だ。
ジョシは、映画を通してだけでなく、私たち市民が通りで訴えるデモにも、今年よく足を運んでくれた。
そんなフィルムメーカーが、私は大好き。
そして今月、私たちニューヨーク在住日本人も、スタンディングロックのために、クリスマスの買い物客でにぎわうグランドセントラル駅でマネキン・フラッシュモブを開催した。
私の友達ワカコさんが考案をし、少数の日本人仲間で主催したイベントに、車椅子で駆けつけてくれた私の友人を含む、多くのアメリカ人たちが賛同してくれた。

私たち日本人がNYで主催したマネキン・フラッシュモブ。 Photo: Bud Korotzer/DesertPeace
スタンディングロックの先住民たちのおかげで今年、集団意識となった”Water Is Life! (水は命)”というキャッチフレーズ。
そして、「ダコタ・アクセス・パイプライン」に資金調達している銀行名をサインにし、資金援助を打ち切るようにとマネキンのようにじっと動かず、サイレント抗議した。
クリーン・エネルギーが可能な時代に、いままで汚染エネルギーで金儲けしてきた裕福層をさらに裕福にするために地下に眠る資源を掘り続ける大国アメリカ。
恥ずかしいことに、日本の銀行も、この環境汚染をもたらすアメリカのパイプライン計画に関わっているのだから、私たちも無関心であってはならない建設だ。
イベントには私の娘も一緒に参加した。
そして、これは、このイベントの様子を、私の15歳の息子が作成したビデオだ。
水は命。地球は命。
これからも、地球の市民として、自分ができることをやっていきたい。
そして、地球のために活動してくれているヒーローたちを応援していきたい。
「セレブの小部屋」No.96
copyright: 2016 Yuka Azuma