私が初めてロブ・マーシャル監督に会ったのは、2002年。
アカデミー賞など多くの賞に輝いて大絶賛された映画『シカゴ』を、彼が監督したときだ。

取材で、この気の良さそうなオジサマの前に座った私は、彼の寛容な笑顔に照らされた瞬間、ニタニタし出した。

ボブ・フォッシーのブロードウェイ劇映画『シカゴ』

だって、ロブ・マーシャルは会った途端、まるで私のことが大好きみたいな様子でニコニコ。いきなり包容力ある男に優しく包まれたような気分になって、私もつられてニコニコ

質問には、精魂こめてしっかり答えてくれるし、熱気と優しさを感じさせるオーラいっぱいで眩しい!
なんて“イイ人“!

愛を感じさせる彼の笑顔。

ロブ・マーシャル監督

舞台振付師としてキャリアをスタートした彼だが、その後も『SAYURI』『NINE』『パイレーツ・オブ・カリビアン / 生命の泉』と、映画監督として活躍。
そして、新作『イントゥ・ザ・ウッズ』が2014年クリスマスに全米公開され、また、あの笑顔に会える機会がやってきた。

彼と会うのは12年ぶりだなんて感じなかった。私を幸せな気分にさせてくれる笑顔は、前とまったく変わってないから。ついこの前、挨拶したよね、って感じでニコニコ。で、彼を目の前にした途端、私もニコニコ

『イントゥ・ザ・ウッズ』は2015年3月14日、日本公開

『イントゥ・ザ・ウッズ』は1987年に初演のブロードウェイ・ミュージカルを、ディズニーが豪華キャストで実写映画化した話題のミュージカル映画だ。

「ときに、話すだけじゃ充分じゃない、というときがある。
だから歌うんだ。
その表現がうまくできたとき、それよりベターなものなんてないよ。

だって、それは人の内側に入りこめたということだから。
人が感じているものを表現できたということなのだから、そこにはマジックがある。
だから僕はミュージカルというジャンルが好きなんだ」

と、ロブ・マーシャル。

ハッピーエンドで終わったおとぎ話のその後を描く『イントゥ・ザ・ウッズ』は、本当に音楽の素敵なエンターテイメント作品だ。シンデレラ、ラプンチェル、赤ずきん、その主人公たちのリアルな側面が楽しく描かれる。

「この映画の重要なメッセージとしてはね、現代の子供たちに言いたいんだよ。
だれもひとりぼっちじゃない、と。

大切な人を失ってしまった子供に、親的な存在となるシンデレラが歌うスティーヴン・ソンドハイムの『No One is Alone / みんなひとりじゃない』という曲。
この作品にはいくつもメッセージがこめられているけれど、この曲の言わんとしていることが、僕にとってはいちばん大切なレッスンだ。

現代の子供たちは、僕が育ってきた時代よりも情緒不安定な世の中に住んでいると思う。そんな彼らに、大丈夫だよ、ひとりじゃないよ、この世は安全だよ、と伝える必要があると思うんだ」

そんなことを熱く語ってくれる彼の笑顔を見ているだけで、この世は安泰です、という気になる。
こういう穏やかな人が父親だと、子供たちも幸せだろうなあ。

NYで開催された『イントゥ・ザ・ウッズ』ワールド・プレミアでのロブ・マーシャル監督と プロデューサー・振付師のパートナー、ジョン・デルーカ

雑誌とテレビ用に取材した2週間後、私はニューヨークで開催された『イントゥ・ザ・ウッズ』のワールド・プレミアにも参加した。
レッドカーペットの上を、出演者のメリル・ストリープ、エミリー・ブラント、クリス・パインなどが歩き、私たち報道陣はマイクを手に手短なインタビューをやっていた。

「私、ロブ・マーシャル、大好きなの。あんな人が旦那だったら、さぞかし奥さんは幸せでしょうねぇ」

と、彼がレッドカーペット上に現れるのを目をパチリと輝かせて待っている私に、映画配給社の親切な上司がさりげなく教えてくれた。

「彼はゲイですよ。この映画のプロデューサーがパートナーです」と。

ああ、どうりで、素敵なわけだわ。
なんだ、私のことが好きなわけじゃなかったのねと、ゲイダーのない私は妄想に楽しんでいた自分に苦笑しながら、彼の到来を待つことに。

ところが、ロブ・マーシャルは各国の取材陣の質問に丁寧に答えていたので、列の最後のあたりに立っていた私の前を通る頃にはプレミア試写の開始時間が過ぎていたのだ。

「申し訳ありません、もう時間がないので彼は質問に答えられません」と、係員が早足でロブを連れて、私の目の前を素通りすることに‥‥。

「えっ! 監督のコメントは必要なのに! 一言、日本へのメッセージが必要なのに」と、青ざめた瞬間だった。

係員に背中を押されて会場へとエスコートされていたロブは、ふと彼の左側に並んでいる報道陣に目を向けた。
そして、なんと、私に気づいてくれたのだ!

そして、あの例の笑顔で「ハーイ!」と近寄ってきてくれて、私の頬にキスしてくれたのだ!

ありがとう、ロブさまぁ!!! レッドカーペット上での彼への最後の質問を、私がなし遂げる結果となったのだ。
「日本のみなさん、ジョニー・デップの歌のプレゼントがあるよ」と、しっかり彼のコメントを録画できた。

ああ、なんてイイ人なの
ロブ様、また会える日まで、ずっとあなたの笑顔を胸に微笑み続けます。

Copyright: Yuka Azuma 2015