夜の到来とともに、博物館の展示物が蘇って動き出すという人気映画シリーズ『ナイトミュージアム』

ニューヨーク自然史博物館に眠っていた魔法の石板 (タブレット)が、モノに生命を吹きこんで動かしてしまうアドベンチャーだが、本当にこのような現象を起こす魔力を秘めるものが存在したら‥‥。

『ナイト・ミュージアム/エジプト王の秘密』(日本公開は2015年3月20日)

世界の不可思議な現象が大好きな私は「あなた自身は、魔法の石板のようなモノが存在すると、信じていますか」と、博物館の警備員ラリーを主演するベン・スティラーに聞いてみる。

「ワオ…。ガーシュ! どうかな、分からない!
そんなものが存在したらクールだけど」

と、ベンは率直な反応。そして、一言。

「じつはね、その魔法の石板を家に持ち帰ったんだ」

「えーっ! 家にあるモノが蘇って動きだしませんでしたか?」と、私。

「大事にいたらないように、祈るしかないね。ハハハ!」

スターの雰囲気がなくて普通の常識人
頭が良くて、しっかりした回答を肩はることなく自然体で返してくるベン。

普段は真面目な表情だが、彼が大きな声で笑うと回りがパッと明るくなる
さすが、コメディアンでもある彼だ。

「シリーズ3作目の撮影を終えた時点で、ショーン・レヴィ監督がプレゼントしてくれたんだ。
その石板を飾るスタンドを作っている最中で、僕の小さな来客用ゲストハウスに置くつもりだ。
僕の家のモノが蘇って動きだすか、ただ待つしかないね」

と、目の前に座るベン。

「じつはもう一つ、そこには別の映画からの思い出の品も飾られている。
僕の監督映画『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』に登場したトム・クルーズの毛むくじゃらの腕さ!
それが、夜中に動き出すかもしれないね」

トム・クルーズが演じたあのハゲ頭のオヤジの毛むくじゃらの腕が、夜中にベン・スティラーの家で動き回るのを想像して大笑い。

『ナイト・ミュージアム/エジプト王の秘密』でルーズベルト大統領を演じるロビン・ウィリアムズ

“毛むくじゃらの腕”というと、私はロビン・ウィリアムズのことを思い出す。
彼にインタビューしたときに、ロビンは毛の生えた自分の腕を私に見せて

「妻は、僕のこんな猿のような側面を気にいっているのさ」

と、笑わせてくれたのだ。

2015年3月20日に日本公開される3作目『ナイトミュージアム/エジプト王の秘密』は、ロビン・ウィリアムズの最後の出演作品でもある。
彼が演じる米国大統領セオドア・“テディ”・ルーズベルトの銅像も生き生きと蘇るのだ。

「ロビン・ウィリアムズのことを、聞く予定?」と、取材前にスタジオの係員が小声で私に聞いてきた。

2014年8月に自らの命を絶ち、多くの人々に衝撃を与えたロビン・ウィリアムズの死。あまりに衝撃の悲劇だっただけに、このコメディ映画の取材では彼のことに触れないようにと、他の記者たちには指示が出されていたのだ。

「ただ、ロビン・ウィリアムズの魅力について聞く予定です」と交渉すると、私にはオーケーが出た。
暗くならないように、さらりと彼のことをベンに質問した。

「彼はじつに優秀な役者だった。
とても寛大で、愛にあふれる人」

と、ベンは 一言一言、噛みしめるようにゆっくり答えてくれた。

「でもそんな言葉で表現できるものではない。
彼のスピリットとハートは、彼の演じるどの役柄からも、あふれでている。
だから、彼には世界中に多くのファンがいるのだ。
彼は永遠に天才であり、僕のほんの小さな役割でも彼と一緒に働けたことに心から感謝している」

そう話す目の前の彼の瞳が、ウルウルと潤っていくのに気づいた。

やっぱり、彼のことは気軽には聞けないトピックだったのだ。

コメディアンというのは、じつは私生活は悲しい人だったりする場合が多い。
悲しい思いがどんなに辛いか分かっているからこそ、他の人々を笑わせてあげようという気が生まれてくるのかもしれない。

じつは、この『ナイトミュージアム』シリーズで共演している俳優オーウェン・ウィリソンも自殺未遂事件で世を騒がせた人だ。

ベンが監督した『ズーランダー』やウィルソンが脚本を担当した『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』でも共演し、彼とは仲の良いベン。

そんな笑いを届けてくれる友人たちが抱えてきた悩み。
それを感じる心情が一瞬、彼の瞳に表れたような気がした。

なんとか笑顔でインタビューを終えてから、私は彼に「イルカの友達でいてくれて、ありがとう」と、伝えた。

イルカへの愛をビデオで訴えたことのあるベンなのだ。

イルカ猟をやめて欲しいと願う日本人として「ありがとう」と、直接伝えられたことは嬉しかった。
「ああ、もちろん」と、彼は力強く頷いてくれた。

ベンは会う度、好感度がアップする人だ。

Copyright: Yuka Azuma 2014