うわー、本当にマイケル・ファスベンダーが本年度のアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。

「出演作『それでも世は明ける(12 Years a Slave)』が映画祭で話題になり、あなたのアカデミー・オスカー候補の声があがっていることを、どう感じますか」

じつは去年の秋、ファスベンダーに尋ねていた。彼はあまり表情を変えず誠実に語った。

「なんともビューティフルで、重要な作品。スティーブ・マックイーン監督は最高傑作を作り出した。
ぼくはこの作品に誇りを持ち、関われたことは光栄だと感じている。

でも賞のことは考えないようにする。自分の役目は終わったから。
そのあとに起きることは何であれ、ボーナスでしかない。肝心の仕事は、すでにニューオリンズで終わったのだから」

その後、ファスベンダーは本当にボーナスに授かったのだ。

2014年3月2日、第86回アカデミー・オスカー授賞式。
レッドカーペットを背丈をのばして颯爽と歩く助演男優賞ノミネート役者の紳士的な姿に、多くの人々が魅了されることだろう。

それにしても、演じる役柄によって風貌や雰囲気が変る役者だ。なりきれる彼だからこそ、『それでも世は明ける』で冷酷な奴隷主になる選択は、勇気がいったことだろう。間違えば、人々から嫌われる”過ち”になったかもしれない。彼の私生活での恋人は黒人だったりするわけだし。

でも、ファスベンダーは「人生において”過ち”というものを信じていない」と、語る男だった。

「”過ち”でなく、”選択”を信じているんだ。
すべての事柄は、自分の選択が巻き起こした結果だ。そこから何が学べるか、何をするか、そこがポイントだ。

結果が悪くても、それは過ちではなく、自分が決断した選択によって得た”学べる機会”だと考えるんだよ。

もちろん、やらなければ良かったと後悔する瞬間はある。だけどぼくは過去に起きた過ちの瞬間に捕われたくはない。
その体験を使って、なにができるか、なにをするか、と考えるように努力するんだよ」

映画『それでも世が明ける』

何が起きても、それは学べる機会だと、前進していくタイプ。

それは、まさに私が共感する哲学。
前向きなファスベンダーの受け答えは、聞いていて気持ちがいい。

リドリー・スコット監督作『悪の法則』で彼が主演した題名役「カウンセラー」の役柄については

「自分は魅力的だと、人に見せたがっている男だ」と、分析する。
「乗っている車にしても住処にしても、いろいろ身分不相応な高級品を備えて暮らしている。
これは西洋の資本主義の概念が関係しているんだ。

つまり、ぼくが叩きこまれてきたことさ(笑)。
幸せとサクセスは、つながりがあるものだという概念を売られてきたんだよ」

きゃあ~!
だけど、彼はそれを客観的に捉え、その資本主義の中で溺れている人ではないのだ。

この人、私のタイプだと、私の勝手な妄想的な恋心が膨らんでいく。

映画『悪の法則』撮影風景

「自分が得るモノ、それが自分を定義するものになっている。素敵なモノを手に入れれば、自分はもっと幸せになる。人々からもっと認められ敬われるようになる。もっと自分は魅力的になる。

他人に受け入れられるためにはこういうものを持たなければいけないという物質主義さ」

映画の中で見た一見、とても魅力的な”カウンセラー”は、もっと深いことを考える俳優によって演じられていたのだ。

「それは、彼の本当の姿じゃない。彼は自分を、実際以上のものに見せようとしているだけだ。

もし、彼がそういう物質的なことは全部忘れて、彼女への愛だけに集中したら、すべてはもっとうまくいったはずだと、ぼくは思う」

『悪の法則』では、ペネロペ・クルスと親密なラブシーンも披露する彼だ。

「1つだけ美しいのは、ペネロぺが演じるローラとの仲。それは美しい。本物だ。
彼のベストがそこにある。 なぜなら、彼は本当に彼女を愛しているから。

そういうものを、人生で大切にすること。人生では、そういうものに努力すべきなんだ」

はい、仰る通りです。

それが分かっている彼なら、なおさら人生に後悔はないだろう。
ファスベンダーはこれからも、自分の選択で納得のいく人生を送っていくだろう。

copyright: Yuka Azuma 2014