子役スターは大人になるとスキャンダラスな落胆者になりがちというジンクスを見事に破り、女優・監督として実績を積んできたジョディ・フォスター。

2013年1月13日、ロサンゼルスで開催された第70回ゴールデン・グローブ賞授賞式で、セシル・B・デミル賞を受賞した。

「47年の経歴は長い道のりだった」

50歳で生涯功労賞だなんて若すぎると思っていたけれど、確かにジョディ・フォスターのキャリアは充分、長い。

その感動の受賞スピーチに、会場のアン・ハサウェイらスターたちも涙ぐんだ。

「じつは私…レズビアンなんです!」と、遂に、この場で告白するのかと思わせる語りぶりでドキドキさせたあと、「じつは私…独身なんです!」というカミングアウトで、場内を爆笑させた。

そして、そのあとで20年間、寄り添ってきた女性パートナー、シドニー・バーナードへの愛と敬意を語ったジョデイ。
別れたいまも2人の子供を一緒に育てていることを明確にして「私はこの現代的な家庭を誇りに思っています」と言い放った。

そのときの可愛らしいジョディとシドニーの息子たちの笑顔は、なんとも微笑ましかった。

そして、84歳の認知症の母親へ「あなたは偉大な母」と、声を大にして愛を訴えた彼女に、私は目頭を熱くした。

ジョディの母親はシングルマザーとして生計をたてるためにステージママとなり、ジョディを3歳の時から働かせた。

スピーチでも言っていたが、彼女はよちよち歩きのときから世間の目に晒されてきたのだ。

12歳のときに娼婦を演じた『タクシー・ドライバー』

12歳のときに、ロバート・デ・ニーロ共演の『タクシー・ドライバー』で幼い売春婦まで演じきったという”普通でない”生い立ち。

取材に応じるジョディは、いつもクールで知的だ。
でも一度だけ、憤慨したように彼女が言い返したときのことを、私はいつも思い出す。

「子供のときから働いてきたため”普通”の生活ができなかったと後悔の念を抱くことがありますか」
という質問が記者会見で出たときのことだ。

彼女はピシャリと言い返した。
「誰が”ノーマル”になんて、なりたがる? 誰も”普通”になんて、なりたくないわよ!」

それは20年も前のことだったけれど、「Who wants to be Normal!?」と、彼女が放った叫びは、いまも私の一部となって残っている。

みんなと同じように普通になる必要なんて、ないのだ。
私はいつもそう自分に言いきかせるようになった。

「あなたって変ってるね」とか言われても、それは良いことだと思えるようになった。

彼女の人生は普通ではない。それで良いのだ。そして同性者に恋することがアブノーマルだとも言えないはずだ。

ジョディに何回かインタビューするうちに、他にも私の中に残って、私の糧となったコメントがどんどん増えていった。

「私は父親の存在を知らずに育ったことを幸いだと思っているわ。だって、男女の違いを認識しなかったことがプラスになったもの。
おかげで、オンナは医者でなくて看護婦になるべきだなんて考えもしなかった」

というコメントも、どんな環境で育っても、それはプラスになるのだと、前向きに考える助けとなった。

そして、「あなたにとってセクシーとは?」と聞いたときに、彼女が眉をひそめながら答えてくれたコメントも忘れられない。

「私は他人の渇望する美の対象になるために、自分の時間を費やしたくないの。
セクシーになろうとするのは、エネルギーの無駄遣いよ。

それよりも、何か自分の好きなことを一生懸命やっていたら、結果、その姿が他人にとっても魅力的に映ると思うの」

私はそんな彼女のコメントに共感し、自分が他人の渇望する美の対象から外れていることを残念に思うこともなくなった。

© HFPA 第70回ゴールデン・グローブ賞授賞式でセシル・B・デミル賞受賞。

『ブレーブワン』の撮影現場では、私は彼女にこう尋ねた。

「あなたのキャラクターはこの街NYに恐怖を感じて、1人で歩くことも怖くなりますが、あなたにとっての恐怖は?」

すると、彼女は「私はまったく恐怖を感じない。微塵も感じない」と、あっさりと答えた。

私はそれは素晴らしい、そうあるべきだと、閃いた。

もしかしたら、私が最近、「恐怖」や「恐れ」から一切、解放されて、ますます幸せになったのも、そんなジョディからの影響があるのかもしれない。

「いつも映画を作るたびに人から聞かれるわ。飛行することに恐怖を感じるか、侵入されることに恐怖があるか、とかね。
正直なところ、まったく恐怖を感じていないのよ。私はそういう不安や心配を抱いて生きたりしないの」

勇気を持ってゴールデン・グローブ授賞式の壇上に佇む彼女には、なんの恐れもない。

私は溢れ出る彼女の思い出を胸に、自分の人生を開拓していった女性の素敵な受賞スピーチに心を震わせた。

Copyright: Yuka Azuma 2013

第70回ゴールデン・グローブ賞授賞式でのジョディ・フォスターの感動のセシル・B・デミル賞受賞スピーチはこちら

https://www.youtube.com/watch?v=NJIAz1b6o1E?rel=0