ヘアカラーしていない私の髪は真っ黒で長い。
黒髪はアメリカでは希少価値があるらしい。ニューヨークに住む私はよく髪を褒められる。

なんとグウィネス・パルトロー、アンジェリカ・ヒューストンなどの大女優からも、会った途端、「髪がきれい」と褒められた。

褒められた最多記録は1日に3人。
映画『ドリームガールズ』の取材日だった。

歌姫ビヨンセ、ジェイミー・フォックス、ジェニファー・ハドソンという豪華キャストが、申し合わせたようにまったく同じフレーズを私に浴びせたのだ。

「あなたのヘアが好き」

別々にインタビューしたのに、次から次へと同じことを言われて目が回った。
俳優ジェイミー・フォックスはそのときだけじゃない。違う作品の取材で会った時にも、やはり彼のほうからヘアのことを話題にしてきた。

「女性は君のようなヘアを手にいれるためには死に物狂いになるだろうね。
ああ、少なくとも僕が女だったら、僕は死に物狂いになるさ」

そう言って、 ジェイミーはニタリと笑った。

途端、私はブッと吹き出した。
私の脳裏に女装姿のジェイミー・フォックスの姿が浮かんだのだ。

いまやアカデミー主演男優賞受賞の大俳優だが、多彩なジェイミーは90年代、コメディ・テレビ番組「イン・リビング・カラー」でワンダという女装キャラクターを演じてブレイクしたのだ。
黒いロングヘアに包まれて目をパチパチさせるジェイミーが、いやに生々しく目に浮かんでしまう。

テレビ番組『イン・リビング・カラー』で ワンダというキャラクターを演じるジェイミー・フォックス

ところで、取材中に、同じようなコメントを反復されて気づいたことがある。
西洋人の中には、ロングの黒髪の東洋人はみな同じに見えてしまう、という人がかなりいるようだ。

コメディ俳優トム・アーノルドは、私に向かって言ってきた。
「ああ、君か。今朝も僕にインタビューしたね」

えーッ! 彼に会うのは、そのときが初めてだった。

「私たち(東洋人)はみんな一緒に見えるからね」
と、きついジョーダンを返したら、コメディアンの彼なのにひどく慌ててしまった。

「いや、いや、そんなことはない。君の前にインタビューした記者(注:ショートヘアの女性)と君は全然、違うルックスだし!」
と、必死になって真面目に弁解してくれたが、でもやはり、私が他の長髪の東洋女性とあまり見分けがつかないことは事実であるようだ。

俳優バリー・ペッパーも、私を見るなり叫んだ。

「ワォ! 君はルーシー・リューにそっくりだ!」

ちなみに、私はこれっぽっちもルーシー・リューには似ていない。
でもまあ、あんな美女と比較されるのは悪くない。

黒髪の女優ルーシー・リュー

そういえば『ナイト・ミュージアム2』のプレミア会場でも「ルーシー・リューだと思って、サインを頼むところだった」と、知らない人に言われた。

そうか。ならば白髪に支配されるまでの束の間はヘアカラーせず、せいぜい美女のフリをして黒髪をなびかせよう。

©2009 Yuka Azuma/あずまゆか