世界から受け入れられている映画監督、原一男。
それでも、上映4時間の作品に、アメリカで、誰が足を運ぶのだろう。日本の参院選候補者たちが題材となったドキュメンタリーに、それだけの時間を費やす価値ありか、という問いに立ち向かう原一男監督は勇敢だ。
そんな原一男監督の長編ドキュメンタリー『れいわ一揆』が、2月12日(水)北米プレミア上映される。会場はなんと、ニューヨーク近代美術館(MoMAモマ)だ!
優れたノンフィクションが上映されるMoMAドキュメンタリーフォートナイト映画祭(MoMA Doc Fortnight 2020)の参加作品に、『れいわ一揆』が選出されたのだ。
そして、この新作は、2020年1月28日、ニューヨークより一足先にロッテルダム国際映画祭でインターナショナルプレミアされたばかり。
「この映画が270分だと知ったとき、”わざわざ見なくても”と思ったことを認める」
と、ロッテルダム国際映画祭に駆けつけたギリシャ人の評論家パノス・コザタナシス氏。彼は、レビューをAsian Movie Pulseに載せた。
「ところが、全シーンとは言わずとも、大部分において、これだけ興味を持続させる映画に出会えたことに驚いた。
あまりにも意外な国会議員立候補者達、特にこの映画の中心となる安冨歩氏は、面白いという言葉では言い尽くせない」
「言う事は尽きた。もし4時間半の時間があり、社会政治的ドキュメンタリー映画が好きなら、悪いことは言わないから『れいわ一揆』を見てほしい。本当に優れたドキュメンタリーだから」— Panos Kotzathanasis 翻訳:Chiaki Nagasawa-Karabalaev
映画『れいわ一揆』は、「れいわ新選組」からの10名の候補者たちが放つ熱い言葉を捉え、比例代表候補として出馬した東京大学の教授、安冨歩にフォーカスをあてる。「子どもを守り未来を守る」というスローガンを掲げて全国遊説の旅に出る彼女を追ったドキュメンタリーだ。
被爆国なのに、いつのまにか核兵器とつながる原発が日本のあちこちに設備されてしまった。自民党政権の下、平和憲法9条が変えられ、膨大な国費を武器に注ぐ国になってしまっている。日本を戦争のできる国に後戻りさせたい力が猛威を振るっている。
そんな政府に疑問を投げかけ、革命を起こしてきた山本太郎を代表とする「れいわ新撰組」。参院選によって「れいわ新撰組」からは晴れて、木村 英子さんと舩後 靖彦さんが参議院議員となった。
大企業や大富豪にとって好都合なトンデモない法律がどんどん出てくる中、国民の生活を苦しめていくTPP協定、種子法、特定秘密保護法などに反対。消費税も廃止。原発は即時禁止。これ以上被爆させない社会作り。
真の独立国家を目指し、なんと勇敢にも地位協定の改定まで求める。そんな画期的な日本のインディーズな政党が、市民一人一人を落ちこぼさない政策を求めてくれている。
そして、このドキュメンタリーで、令和元年夏、「れいわ新選組」のとんでもなく個性的な立候補者たち10名が参議院選挙に挑んだことが、アメリカ人たちにも知られることに。
原一男監督にとって、ニューヨーク近代美術館(MoMAモマ)での上映は初めてではない。実は昨年、原一男の業績を称えるレトロスペクテイブがMoMAモマで開催され、マイケル・ムーア監督も駆けつけて敬意を払った。
業界人からも、権威ある現在美術の団体からも認められている原一男監督は、『ゆきゆきて、神軍』(1987年映画)で世界に衝撃を与えた。元日本兵・奥崎謙三の姿を浮き彫りにしたドキュメンタリーで、日本映画監督協会新人賞を始め、ベルリン映画祭カリガリ賞、パリ国際ドキュメンタリー映画祭グランプリなどを受賞した人。
そんな彼の新作。4時間作品の中で、浮き彫りされる安冨歩とは?
海外の原監督ファンたちも好奇心を抱いていることだろう。この北米プレミアは、NYタイムズ紙にも、”来週観るべき映画”として大きく取り上げられ話題になっている。
原一男監督と安冨歩氏がニューヨークにやってくる!
この映画と彼らのトークがどうニューヨーカーたちのハートをつかむだろう。
映画のみの入場料は、一般12ドル。シニア10ドル、学生8ドル。
チケット購入はニューヨーク近代美術館(MoMA)のウェブサイトで。https://www.moma.org/calendar/events/6397
Photo :「れいわ一揆」©風狂映画舎
『セレブの小部屋』No.112
© Yuka Azuma 2020 / あずまゆか
UPDATE:
2020年2月12日、NYのモマでの北米プレミアには、坂本龍一氏など多くの日本人も駆けつけた。4時間の上映後、Q&Aに応じる原一男監督と安冨歩さん。

Photo by Yuka Azuma