ニューヨークの風物詩にもなっているグリーンマーケット。
これは近郊の農家が農産物を産直販売するという青空市場なのです。

NYの近郊農家が農産物を直販売するファーマーズマーケット
1976年にスタートして、家族経営の農場が産直販売をでき、NY市民がローカルのフレッシュな農産物を買えることを目的としてスタート。
当初は12の農場であったのが、現在では54箇所で230もの農家が参加。
すべての農産物や肉類、魚介類はローカルです。
小規模農家によるオーガニックや、あるいは最小限の農薬を使用した農作物が中心であるのが、嬉しいところ。

農家で作られるゴートチーズは人気の高い産物
わたし自身もグリーンマーケットには長年親しんでいて、時折買ってきたのですがべつだん買うための知識なんてものはなく、テキトーに購入していたという次第。
じゃあグリーンマーケットでのお買い物のコツというのはあるものなのか?
そこで! 前々から興味のあった通称たまちゃん、島田ボッチャーさんが行っているグリーンマーケットツアーに参加してみることにしました。いえい!
たまちゃんは元プロの料理人。驚くことなかれ、イタリアンの鉄人であるセレブシェフ、マリオ・バタリのなかでもトップに位置する高級レストラン、デル・ポストでスーシェフまで勤めた才能の持ち主なのです。すごい!

元スーシェフでプロの料理人、たま島田ボッチャーさん
そのたまちゃんが解説してくれるマーケットツアーは、オンラインで事前に申し込みが必要。
当日はユニオンスクエアの指定場所に集合します。
参加したのは、夏のグリーンマーケット。野菜が溢れる季節です。
芽や茎が伸びているニンニクやタマネギはこの時期だけの旬の味だそう。

茎つきのまま売られている新鮮なタマネギ。
「買ったら、家ですぐ茎の部分をカットして下さいね。球根の部分から葉が栄養を取ってしまうので」と説明してくれる、たまちゃん。
「ニンジンは葉の栄養素が強いんですが、買ってきたらすぐに葉と実を切り離すこと。
そうでないと栄養素が葉に取られてしまうから」
ファーマーズマーケットには教えてもらわないと目につかなかったような珍しい野菜もたくさんあります。
こちらのスタンドで売っているのはパースラン(Purslane)。

オクラや、フェンネル、コールラビなどを売っているスタンド。 右上にあるのがパースラン。
和名で「すべりひゆ」といい、日本では園芸種のようですが、アメリカでは食用にもするんですね。
サラダやパスタの具、あるいは炒めたりして食べたりするそうです。
風味の高いロカンボール・ガーリック。こちらもマーケットの名物。

ニンニクのなかでも最も香りがいいと評判のロカンボールガーリックは茎がついたままで新鮮。
チーズや卵、牛乳、手作りパン、蜂蜜といったようにさまざまなスタンドが並んでいます。
スーパーマーケットの蜂蜜が既に熱処理されていて酵素がなくなっているのに対して、グリーンマーケットの蜂蜜は生きているのが嬉しいところ。

熱処理されていないために酵素が生きているハチミツは栄養価が高い。
こちらはバイオダイナミックの農作物。
バイオダイナミクスってなに? というと、シュタイナー理論に沿った産物のこと。
神智学で高名なルドルフ・シュタイナーの理論に従って、天体の動きなどを考慮しながら作られるそう。
日本でおなじみの「はくれいカブ」が売られていて、和野菜の人気を感じさせます。

シュタイナー理論によるバイオダイナミクス農法で作られたオーガニック野菜
曜日によって出店する農家が違いますが、トマトならばこのスタンド、チーズならこのスタンド、卵ならこのスタンドといったように得意分野があるのを、たまちゃん
が教えてくれます。
人気が高い作物は朝8時半頃に行かないと、すぐに売り切れるとか。
どこのスタンドがお勧めか知りたい方は、ぜひツアーにご参加を!
いびつな形をしたエアルーム品種のトマト(Heirloom tomato)はとても美味しくてお勧め!

形はいびつながら、味はトマトの旨みが凝縮したエアルーム・トマト
エアルーム品種というのは原生種とも呼ばれていて、「F1品種」のような人為的に交配された品種ではない原種に近いもの。
一族で代々栽培され続けてきたものだそうです。
これが美味しいんですよ。まさにこれだよ、これ、これ、これがトマトの味だよ! と感激する、トマトの旨みがギュッと詰まった味わい。
ズッキーニや茄子など夏の野菜がいっぱいあり、「サラダ菜も重いものはずっしりと栄養を抱えています」と、たまちゃん。

めずらしい円錐形をしたコーン・キャベツ(Cone Cabbage) 葉物野菜だけでも数々のバラエティがある。
このツアーの嬉しいところは、たまちゃんが料理方法も教えてくれるところ。
たとえばマッシュルームというのは炒めていると水分が出やすいと思うのですが、「マッシュルームはまずフライパンをかんかんに熱していて、お肉を焼くつもりで焼いて下さい」と、たまちゃん。
この野菜はこうやって調理すると美味しい、こうするといいといったプロしかできない智恵を伝授。
また「セロリは農薬の残留が多い野菜なので、なるべくオーガニックを選ぶといいです」といったように、役立つ知識も教えてくれます。

豊富な食の知識で、野菜の選び方から栄養価、料理の仕方まで伝授してくれるたまちゃん。
「あ、あれはABCキッチンの買い出しですね」と指摘する、たまちゃん。
ABCキッチンは、NYのセレブシェフ、ジャン・ジョルジュ・ヴォンゲリヒテンのオーガニックレストラン。
このファーマーズマーケットでも素材を仕入れていたんですね!
さらにDEL POSTO(デル・ポスト)、BlueHill(ブルーヒル)Per Se(パー・セ)やGramacyTavarn(グラマラシータバーン)などの一流レストランのチームが買いに来ているのを鋭く看破するたまちゃん。
感心したのは、NYの高級レストランはこうした良い素材を仕入れているのだなということ。
安くはないけれど、良い素材を仕入れているとは、ダテに高級店なわけじゃない。
正直いえば、ファーマーズマーケットの農産物は必ずしも安くはないです。
品物によっては、スーパーで売っている野菜のほうがよっぽど安い。
けれどもファーマーズマーケットの生産物は、有機農法であったり、好ましい環境で育てられた家畜の肉や卵であったりと、手間暇のかけられた農産物であり、小規模
生産であるから、そう安価に作れないのは当たり前のこと。

スーパーでは見かけないアボガド・スクワッシュといった珍しい野菜とも出会えるのが嬉しい。 ナッツのような風味とクリーミーな味わいが特徴。
アメリカの農業ではいかにコストを抑えて合理的に生産するかを追求して、単一の作物を大量生産し、家畜の肥育も工業製品のように大量生産されているのが主流。
だからこそ丁寧な作り方をしている小生産者、輸送のカーボンフットプリントの少ないローカルな生産者、旬の作物、なるべく農薬の少ない作物を選ぶというのは、自分たちの食を守るも重要であるわけです。
「野菜のスタンドでもいろんな種類の野菜を置いているでしょう?
単一の作物じゃなくて、いろんな野菜を同時に育てることで、病害や虫害で全部がいっぺんにダメにならないように工夫しているんですね。
良心的な作り方をしている小規模農家を、買う方もサポートすることが大切なんですよ」
と、たまちゃん。
食に携わってきたたまちゃんだからこそわかる野菜の見分け方や楽しみ方を教えてもらえ、さらに農産物への意識も開かされます。
食べるものが、そのまま自分のエネルギーとなり、生きる力になることがよくわかります。

手作りパンのスタンドもいくつも見かける。 このスタンドのパンは、ミルク、卵、オイルを含まないヨーロピアンブレッドで、保存剤なし。
四季折々に出てくる野菜も違えば、曜日によって出店する農家も違うので、シーズンによってそれぞれ特徴があるので、違う季節にまた参加したいなと感じました。
ローカルな野菜に親しめて、買い物のコツもわかるたまちゃんによるファーマーズマーケットツアー。
ツアーや料理教室の情報についてはホームページやフェイスブックで日程をご確認下さいね。
http://ameblo.jp/tama-house/
https://www.facebook.com/TamasKitchen
黒部エリのホームページはこちら ブログ「エリぞうのNY通信」はこちら