ハーレムで上演しているミュージカル「ALIVE!」がすごいです!
このミュージカルの出演者は、全員が55歳以上。
いちばん年長は74歳という、シニア・ミュージカルなのです。
こちらは日本でも公演を行ったゴスペルミュージカル「ママ アイ ウォントトゥー シング」“Mama I want to sing” のママ・ファンデーションによる新作。
一般公募から選ばれた18人の出演者たちは元シンガーもいれば、教会の合唱団だったひともいれば、まったくのシロートもあり。彼らがそれぞれの人生の困難を前フリとして語ったあと、持ち歌を披露!
たしか日本でも昔のテレビ番組でありましたね、こういうの。素人の女性が自分の人生の苦労を語りつつ、演歌を歌うってやつ。
しかしそこはハーレム、人生の苦境の乗りこえかたのレベルが違うのよ!
たとえば教育を受けられずに文盲で育ち、17歳から酒浸りになってアル中になった男性が、50歳になってから一念発起して酒断ち。50の手習いで、読み書きを習ったおじいさん(74歳)が歌いあげる魂のゴスペル。
あるいは息子さんを35歳の若さで癌のために亡くしたお母さんがホイットニー・ヒューストンの名曲「I WILL ALWAYS LOVE YOU」を熱唱。
このひとがすごい歌唱力。
いやもう、目を瞑ればホイットニー!
あのホイットニーがサビのところで「アンド・アーイ・アーイ・アーイ」と高音を響かせるシーンが蘇ります。
あるいは生後すぐに捨て子され、生母の名前も顔も知らない男性が、その知らない母に捧げる名曲「ジョージア」。
はたまた過去にミュージカルのオーディションに受かりながら、臆病風に吹かれて第二次選考には行かず、警察の緊急通報用電話番となって25年間働き、9.11の時に緊急の電話を数多く受けたという女性。
警察をリタイアしたことで、なんとこの年になって「ALIVE!」のオーディションに受かったというおばちゃんが歌う「見果てぬ夢」。
このひとが歌うからこそ、ものすごい説得力!
そして一番キョーレツなのが、ドラッグの罪で、40年間監獄にいたという男性が歌う「アンチェインド・メロディ」” Unchained Melody”。
ええええーッ、人生の40年を監獄で!?
しかも彼は監獄にいる間に、女性と知りあって獄中婚までしているのです。
この曲は映画「ゴースト/ニューヨークの幻」でも有名ですが、もともとが刑務所映画の主題歌。
実際に服役していたひとが歌うアンチェインド・メロディとはリアルすぎ!
この18人のパフォーマーたちの歌が本当にすばらしい。
これはどんな歌の巧くても、20代の歌手にはできない、人生の味ですね。
もう苦労が染みる、染みる。
おでんくらい味が染みこんでいます。
その紆余曲折あった人生が生み出した味わい。
この年齢だからこそ醸し出せる人生の機微。
しかも本当に歌が巧い。
これはもうゴスペルが鍛えてきたブラックの文化としかいいようのない、すばらしいレベルです。
こんなのが観られるのは、ハーレムだけ。
ハーレムという場所がまた巣鴨チックなところなんですが、出てくるひとたちの熟女っぷりもハンパないです。
女性陣は全員100キロ超えか、という超熟女ですが、これが歌うと魅せる、魅せる。
コレステロール値はやばいかもしれないけど、歌はどれだけ上手いんだと。
美魔女の概念とか、もう真逆ですよ。
日本だと、誰もかれも美しく、若く、細くなくてはいけないという固定概念があるじゃないですか。
悪いけど、ハーレムではそれないから。
一切そんなもんないって!
デブだろうが、年取っていようが、松葉杖ついていようが「色気」があればオーケイというのがハーレムの掟。
いくつになっても女でいること、男でいることを忘れていない。
これぞまさしくハーレムのソウルです!
コテコテのラメドレスを着た巨大なおばあちゃんが「スローハンド」をねっとりと歌いあげるとき、「若さ」とか「美しさ」に縛られた価値観がアホらしくすらなってきます。
懐メロの名曲に加えて、教会で鍛えられたゴスペルのすごさ、観客のコール&レスポンスのやりとりもハーレムならでは。
人生の苦労が味わいを与えたシニアたちの歌声を聴くときに、きっと勇気を与えられるはず。
年を取ったからって終わりじゃない。
人生はやり直しが効くし、いくつになってもあきらめることなんてない。
人の価値を決めるのは「過去」ではない。
大切なのは、今どんな夢を見られるか。
人生のやり直しに挑戦する、熟年世代のソウルフルな歌声。
ぜひとも生で体験してみて下さい。
やられます!
All Photos Copyright : © 2013 by Carol Rosegg.
5月3日、10 日、31日
6月7日、14日土曜5:00PM ソワレ
5月3日
6月14日
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