2015年からアメリカで大ベストセラーになっているのが、「片づけコンサルタント」の近藤麻理恵さんの著作「The Life-Changing Magic of Tidying Up: The Japanese Art of Decluttering and Organizing」。
日本でのタイトルは、「人生がときめく片づけの魔法」ですね。
アメリカでは2014年10月に、ペンギン・ランダム社から発売されて、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーに登場。
60週にわたりベストセラーリストに登場していましたが、アメリカ紙「USAトゥデイ」では2016年1月に週間書籍販売ランキングで1位に躍り出ました。
2016年1月に出たイラスト解説つきの本、「Spark Joy: An Illustrated Master Class on the Art of Organizing and Tidying Up」もたちまちベストセラーとなって、同紙3位にランクイン。
そして「タイム・マガジン」では「世界で影響力を持つ100人」のなかに選出されるという活躍ぶり。
間違いなく現時点で、もっとも全米的に有名な日本人です。
さて、この「こんまり」流ですが、「ときめき」を英語で表現する時に、Spark Joyという表現を使っています。
火花が散るように、ひらめいたり、きらめいたりするイメージが浮かんできて、とても上手い訳だと思います。
では「こんまり」片づけ術を、どうアメリカ人が感じているか、いくつか書評を抜粋してみましょう。
“Ms. Kondo delivers her tidy manifesto like a kind of Zen nanny, both hortatory and animistic.” — The New York Times
「ミズ近藤は片づけのマニフェストを、励まし方も汎神論的な方法も、まるで禅の尼僧のように伝えてくれる」−ニューヨーク・タイムズ
アニミズムというのは「森羅万象すべての物に霊魂が宿る」という考え方ですが、正しくいうと、禅思想とはまったく別ものです(汗)
別ものなんだけど、アメリカ人記者から見ると、大まか東洋思想で一緒になっているんだな、ということも伝わってきて興味深いところです。
“The Japanese expert’s ode to decluttering is simple and easy to follow.” — Vogue.com
「この日本のエキスパートが提唱する片づけ術はシンプルで、従うのがやさしい」—ヴォーグ・コム
“Kondo challenges you to ask yourself whether each object you have is achieving a purpose. Is it propelling you forward or holding you in the past?” — USA Today
「近藤は、あなたに自分の持ち物が目的にかなうものかどうかを問いかける。そのモノはあなたを前に進めるだろうか、それとも過去に縛りつけるだろうか」−U.S?Aトゥディ
この書評を見るとわかるように、「こんまり」流が効果的であるだけでなく、そこにある「思想」も新鮮に感じているようす。
こんなにもアメリカでウケた理由を考えると、まずひとつに「そんなこと今まで考えたこともなかった」という背景があるはず。
アメリカの郊外に行くとわかるのですが、とにかく家が大きい。
そして地下や屋根裏部屋などに納戸があるのがふつうです。
収納スペースが大きいから「断捨離」なんて考える必要がない。
典型的な郊外の一軒家に行くと、必ずウォークインクローゼットがあって、そこに針金のハンガーで、ずらずらずらーッ、と服がかけられている。
それも下がっているのは、たんなるTシャツとジーンズだったりするわけです。
あまりバリエーションはないのに、なぜか数や色だけは大量にあるのが、典型的なアメリカンスタイルというんでしょうかね。
かといってアメリカ人がモノを捨てないとかリサイクルしないということではなく、どこの街にも不要品をおけるドネーションセンターやサルベーションアーミーがありますし、引っ越しなどでヤードセール(不要品を裏庭で売ること)も頻繁にあります。
けれども「快適に暮らすためにモノを減らす」「ときめきを感じるモノだけに囲まれて暮らす」というコンセプトは従来にはなかったもの。
服や道具をたんなる利用品として扱うのではなく、そこに「内面の歓びを感じる」というあたりが、アメリカ人には禅思想っぽく映るもよう。
ちなみにAmazonのカテゴリーでも、こんまり本は「Zen Philosophy」のカテゴリにあります。
すなわち「禅思想」!
ええええ、片づけの魔法って禅思想だったの、と日本人のほうがびっくりですが、実際に「ひとつひとつ手にとって、スパーク・ジョイを感じるか」確かめる、そしてモノを捨てる時に「感謝する」という「森羅万象に魂が宿ると信じる」作業が、東洋思想的に映るようです。
で、おもしろいことに、いまや「こんまり」じたいが英語の動詞となっているんですよね。
たとえばニューヨーカー(おもに女性とゲイ)と話していると、こういう使い方をする人がふつうに多いんですよ。
“ Have you ever done Konmari?”
(こんまりやったことがある?)
“I did Konmari last year”
(去年、こんまりをやったわ)
“I definitely have to do Konmari”
(こんまり、絶対やらなくちゃ)
あるいはKondoそのものを動詞で使う人もいて、
“I Kondoed my recipe books. From an original three heaving shelves down to two.”
(たくさんある料理本を、どうにか積みあげている書棚の3段から2段まで、コンドーしたわ)
大まかに日本語と同じく「こんまりする」という使い方ですね。
すでに英語になっているという驚き!
日本語では「断捨離」という言い回しが浸透していますが、なにしろ漢字の場合は、「断」「捨」「離」と意味が頭に浮かんでくるからわかりやすい。
けれども、アメリカ人にとっては、たんに音でしかないですから、Konmari-methodというわかりやすい呼び方にして、正解だったといえるでしょう。
インスタグラムでも、#konmari で検索すると、海外のコンマリストたちが、
https://www.instagram.com/p/BD8WgZjhEP4/
というわけで、ぜひご自分が「こんまり」する時は、#konmariのハッシュタグをつけてみて下さい!
世界のコンマリストと連帯するかもですよ!
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