マンハッタンのミッドタウンで、4月にオープンした和食レストラン、「鈴木」。
タイムズスクエアからもロックフェラーセンターからも近い絶好のロケーションです。
地下一階にある店内は広々としていて、大きなメインダイニングルームが懐石料理を提供する「鈴木」、そしてその奥に鮨カウンターの「皐」、さらにバーの「スリー・ピラーズ」も併設されています。
店の雰囲気は、モダンでラグジュリアス系。
グロッシーな黒が基調になっていて、クラブ感が漂います。
こちらのメニューは懐石のコース料理。
この日いただいたのは、前菜、椀盛り、造り、凌ぎ、強肴、焼物八寸、煮物、食事、留碗、水物という正統派の献立です。
いやー、NYの和食も隔世の感がありますね。
20年くらい前の和食で、一流店といえば、日系企業の駐在さんが接待で使うような店でした。
そこにNOBUが登場して、創作和食がどどーん!と躍りあがったわけです。
和洋折衷の素材をもちいて、アメリカンに演出してある。
NOBUからMORIMOTO、MEGUといったアメリカ人に受ける、ドラマチックでパンチある和食がのしていったんですね。
その手のヌーベル和食は、だいたいモダンな都会的インテリアというのが特徴であって、ラグジュリアスなクラブ感が漂っているわけです。
そして2017年に登場した「鈴木」。店舗はラグジュリアスでドラマチック系ですが、出す料理はまっすぐ懐石料理です。
うおおお、前菜からして美しい!
盛りつけも繊細です。
この日いただいたのは、ゴマ豆腐、ホタテ貝酢味噌和え、南京カステラ、鶏つくね、梅麩といった取り合わせで、どれも美味しく、かつ味わいが色とりどり。
酸味や甘味、肉の味わいからホタテと野菜といった、さまざまなバリエーションをまとめあげ、そこにトリュフチーズという風味豊かなチーズを添えてあるのが、さすがのセンスでした。
お造りのプレゼンテーションも美しい!
ボタンエビに、鮪の赤身やトロ、そしてウニが〜!
ああああー。このウニの新鮮なこと。
うますぎ注意報です。
和牛のすき焼きは、悶絶ものの美味しさ。
さすが日本の和牛、口のなかで肉が溶けていきます。
あううううう、なんという官能的な味わいでしょう。
全体的にいえば、とてもオーセンティックな懐石料理です。
そこに強肴としてリンゴのグラタンを入れたり、前菜にトリュフチーズを添えたり、すき焼きを入れたりといった鮮やかな点を打っていているのが特徴です。
しかしケレンというふうではなくて、東京でも好まれそうなテイスト。
決してアメリカむけに誇張していません。
ああ、ニューヨークの和食も、ここまで進化したんだなあ、と感慨深いものがありました。
東京とNYが同じ感覚というのか、同じ速度になっていますね。
そしてこの懐石を、アメリカ人たちもごく当たり前のように堪能しているのが、さすが今どきです。
周囲のアメリカ人の意見を聞くと、どれも違和感なく美味しく、ことに刺身、和牛のすき焼き、穴子鮨といったものに、激しく惹かれていたようでした。
こちらで提供するのはコース料理のみで、80ドルのアヤメ、120ドルのサクラ、150 ドルの卯月のコース。
精進料理は70ドルです。
150ドルのコースを選ぶと、これに飲み物や税金がついて、おおまかご予算220~250ドルといった範囲でしょうか。
そして鮨バーの「皐」では、10席のみというプレステージあるカウンターでお任せの鮨が饗されます。
もと「すし膳」の名人、NYではレジェンドになっている鈴木俊雄さんが握っています!
5:30のプレシアターの鮨コースは$130
7:30もしくは 9:30に始まるお任せコースは、$250ドル。
これに飲み物や税金をいれると、ご予算330~350ドルといったあたりでしょう。
高価なコース料理であることを考えると、富裕なフーディ、ビジネスの接待や旅行者といった客層になりそうです。
そしてまた興味深く感じるのが、ミッドタウンのグルメ化ということ。
かつてタイムズスクエア近辺といえば、観光客相手の、高くてマズくて騒がしいというローカル民が行かないレストランばかりだったもの。
ところがかつてアッパーイーストサイドにあったフレンチの「オレオール」がタイムズスクエア近くに移転して、質のよい料理を出すことで繁盛して、グルメのマップが塗り替えられてきているのです。
つまりNY観光の楽しみにグルメな食べ歩きをマストにする観光客が増えた、あるいは全米全体で、だんだん味に対する規準があがってフーディが増えた、ということなんじゃないでしょうか。
東京と同じ速度で、美味を味わえる「鈴木」。
大切な日に訪れてみたいレストランです。
住所:114 W 47th Street New York, NY 10036
電話:(212) 278-0010
URL: www.suzukinyc.com
営業:鈴木、皐 5:30PM – 11:30PM/スリー・ピラーズ 〜12:00am
日曜定休
黒部エリのホームページはこちら ブログ「エリぞうのNY通信」はこちら