今回はパーソンズで必要とされる英語力と、ニューヨークでの生活についてお話ししましょう。
まず、英語力について。
パーソンズでは、母国語が英語でない留学生は、2年制のAASへの入学にはTOEFLのiBT(インターネットベース、120点満点)で79点以上、4年制のBFAへは92点以上のスコアが語学面の入学条件として求められます。
詳細はこちらをご覧下さい。
しかし必ずしもTOEFLのスコアにこだわる必要はありません。
パーソンズが所属しているThe New SchoolのESLに通い所定のレベルをクリアすると、同様に入学条件を満たしたと判断されます。

The New SchoolのESLが行なわれているキャンパスの一つ
なおESLというのはEnglish as a Second Languageの略で、英語を母国語としない人々が学ぶ語学学校、もしくは語学コースのことを指しますが、今回は前者の意味で使っています。
僕はTOEFLである程度の点数を取ってからESLに通うことを選択しました。
なぜなら、ESL在籍中にNYの生活に慣れておきたかったからです。
おかげで、パーソンズ入学後は授業に集中することができました。
パーソンズの授業は非常にハードです。ですから、事前に少しでも学業に集中できる環境を整えておく必要があります。
The New SchoolのESLにはLevel 3からLevel 6まであり、レベル分けテスト(Grammar, Writing, Interview)の結果によって自分に適切なレベルが決まります。AASに入学するためにはLevel 5を、BFAへはLevel 6をクリアしなければなりません。

ESLのディレクター、ケイトリン。 学校側のミスで僕の渡米が危ぶまれた時、彼女にはとても助けられました。
ただしESL在籍中にTOEFLのスコアが入学条件を満たせばその必要はありません。
このケースでLevel 6をスキップしBFAに入学した友人もいます。
あくまでも、TOEFLもしくはESLのどちらかで語学面の条件を満たせばOKです。
ちなみに、僕のTOEFLの勉強方法ですが、日本にあるTOEFL試験対策の学校で勉強していました。SpeakingやWritingのセクションの試験内容を考えると、独学では得点は伸びません。やはり専門の学校で学ぶのが一番です。
TOEFLの勉強をしているとファッションデザインと関係ないことを学んでいるような気がするかもしれません。
しかしListeningセクションで流れてくる学生同士の会話、教授やアドバイザーとのやり取りは現実的な話なので、事前にアメリカでの学生生活を知るためには多少なりとも役立つと思います。
またWritingセクションにも徹底的に慣れておいてください。
こちらで相手とコミュニケーションをする際、日本の起承転結型な話し方は相手にフラストレーションを与えます。プレゼンテーションなら尚更です。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、リスニング力の上達にはTEDがおすすめです。
プレゼンテーションの勉強にもなります。
TED初心者の方は、ご自身の興味のある分野、内容からトライしてみてください。
字幕付きのものもあります。
さて、ESLのことに話を戻します。
基本的な授業のカリキュラムはこちらをご覧下さい。
1クラス10数人の少人数制の授業スタイルです。一コマ3時間弱を授業によっては休憩なしで行ないます。
ちなみに僕が在籍していた時のクラスメイトの国籍は、韓国、中国、台湾(ここのESLでは中国とは分けています)、イタリア、ウクライナ、ベネズエラ、ロシアでした。
なお、こちらの授業で重要視されるのは授業内での発言です。
無遅刻無欠席、全ての課題を期限内に提出していたとしても、授業中の発言がなければ授業に参加していないと見なされ、その授業は容赦なく落とされます。
僕のWritingの授業では先生が順番に当てることはありませんでした。他のクラスメイトが話し終わる瞬間を見計らって発言する訳です。手を挙げて発言の許可を先生に求めたりなんてしません。
発言した内容が間違っていてもそれは問題ありません。
ただし、先生が求めている答えを述べることが最も大切なことです。
授業で発言するには、しっかりとした予習復習が必要です。
ましてや宿題をしないなんて言語道断です。
僕は朝10時から始まる授業に合わせて、急な予定が入らない限り授業開始最低1時間前には学校近くのカフェに着き、そこで毎日その日の予習をしていました(前職の時からこの習慣は続いています)。
また、その日の授業が終わるとStudy center(自習スペース)か家で復習、宿題、予習を行なうのが日課でした。

Study center。学期末の試験前になると満席になります。Wifi完備。
僕にとって一番タフでかつ面白かった授業は前述のWritingです。
たとえば、Grammarは答えが決まっているので覚えてしまえば楽です。
それとは対照的なのがWritingです。
求められている課題について自分の意見を述べる。これには明確な一つの答えは存在しません。
まずは文章の軸を考える。そして大まかな流れを考える。
そして、相手がスムーズに読めるよう、使う単語をしっかりと吟味する。
一度書いたらそれで終わりではなく何度でも読み返して推敲をする。
僕にとって、これはまさにデザインプロセスと同じことだと感じました。
美しい服を作ることと、美しい文章を作ることとは僕にとっては同じことです。
つまり、妥協は許されません。見る人が見れば、手を抜いたことなんてすぐにバレます。
この授業では、毎日のJournal(日記)の提出と、ほぼ一週間に一回のペースでEssayの課題が出ました。
後者は先生が添削し、OKが出るまで再提出をしなければなりませんでしたが僕は再提出の経験はありません。その課題が楽しかったので、しょっちゅう朝の5時ぐらいまで起きて課題をやっていました。

Writingの面白さを教えてもらった思い出の教室。
なお、The New SchoolのESLでは各セメスターが前期と後期に分けられます。前期の時点でその授業に追いつけないと判断された生徒は担当の先生から警告を受けます。
「後期で目覚ましい成長をみせないとパスできませんよ。」と。
これは脅しではありません。警告です。
The New SchoolのESLは甘くありません。
自分が努力しているつもりでも客観的な評価を伴った結果が出なければ落第します。
しかし、肝心なことを忘れてはなりません。
ESLはあくまでもパーソンズへ入学するための通過点に過ぎないということを。
そこはパーソンズのスタート地点ではありません。
語学面でいうと、ESLとパーソンズは桁違いでした。留学生のみが在籍するESLでは授業や友人との会話はほとんど聞き取れていました。しかし、パーソンズでのスピーキングのスピードはいわゆるネイティブレベルのものです。
TOEFLで耳にしていた速度よりも速いと思います。
しかも、一度も学んだことのないファッションデザインの授業をそのスピードで受ける訳です。
最初の一ヶ月は、聞き間違いで間違った課題をするなど本当にストレスフルでしたが、精神的にタフでいられたのは明確な夢があったこと、そして何よりも素晴らしい友人達に恵まれたおかげです。
当たり前ですが、パーソンズは語学学校ではありません。デザインを学ぶための学校です。
ここを忘れてはなりません。
自分の聞き間違えで宿題を間違えたなんて言い訳は通用しません。
僕はネイティブの友人が周りに多くいるため、彼女達(AASファッションデザイン科の学生の約95%は女性)に自分の“耳”になってもらうことで聞き間違いのミスを減らすことができました。
授業中、彼女たちによく確認していました、「今、先生が言ったこと、自分はこう聞こえたんだけど、合ってる?」と。
ただしパーソンズのハードな授業と課題の中で、友人に一方的に助けてもらおうなんて甘い考えは捨ててください。
ここは、あくまでもgive and takeの世界です。自分自身の強み(才能)が何であるかを見極め、それを相手のために活かす、それがこちらで友人を作る武器になります。
さて、次にNYでの生活に話を移しますね。
まずニューヨークでの居住エリアとして、現在日本人の留学生たちにとって人気のあるエリアはQueensのAstoria地区です。
MTAの地下鉄の駅名で言うと、NとQラインの”Broadway”、”30Av”、”Astoria-Ditmars Blvd”が特に人気が高いエリアです。

”Astoria-Ditmars Blvd”の周辺は特に閑静なエリア。ラガーディア空港までは車で約15分。
このあたりは比較的安全なエリアですし、”Broadway”には日系スーパーがあるので生活面での不自由は感じません。
また、マンハッタンまで地下鉄で約10〜15分と交通の便も良い所です。(しかもイーストリバーまで地上を走っているのでスマートフォンが繋がります)

QueensのBroadwayにある日系スーパー、ファミマことFamily Market。
留学生や若い社会人にとって家賃の高いニューヨークでは、ルームシェアが一般的で、これは基本的に2〜3人で部屋をシェアするスタイルです。通常リビングやバス・トイレ、キッチンを共同で使用し、各々の部屋を持ちます。
共同生活をする人たちをこちらでは一般的にroomy(ルーミー)と言いますが、roomyが異性というのはこちらではよくあることです。
僕が最初に住んだブルックリンのシェアルームは、8畳ほどの大きさで、家賃が$1000(光熱費&Wifi込み)でした。
マンハッタン市内となると、スタジオ(日本のワンルーム)でも1600ドル以下の物件はないでしょうし、クイーンズのアストリアでもスタジオで1200ドルくらいは見積もったほうがいいでしょう。
そしてニューヨークに住む上で決して忘れてはいけない注意がひとつ。
道端に置かれているベッドやソファーなどには絶対に手を触れないでください!

NYでよく見かける風景。たとえ気に入っても絶対に持って帰ってはいけません!
というのは、Bedbugがたかっている可能性が高いからです。
ベッドバグ(日本名:トコジラミ、南京虫)というのは体長数ミリの虫で、日中はベッドの裏などの暗い場所に潜んでいます。
こちらでは家具付きの物件もよくありますが、少なくともベッドは信頼できる人が使っていたものでなければ、使わないで捨ててください。
僕は渡米直後に住んだ部屋で、これに悩まされました。
実はその部屋もベッドを含めた家具付きの物件でラッキーだと思って住み始めたのですが、しばらくしてその虫による悪夢が始まりました。
毎晩、暗くなった部屋のベッドの陰から静かに現れ、安眠中の人間の血を吸ってはその強烈なかゆさで眠れなくなるのです。
そのかゆさは蚊よりも厄介です。
僕の場合、3日間ほどそれが肌の赤みとともに続き、そして赤みはその後もしばらく残りました。
しかし、それだけでは終わらず、その赤みに触ると再びかゆみに襲われる、という地獄の日々を二週間ほど続けました。
最初はベッドバグの存在を知らず、ダニかなと思い、頻繁にシーツなどを洗濯していたのですが、ずっと毎晩悪夢に襲われ、さすがにこれは変だとインターネットで調べていくうちにベッドバグを探り当てたのです。
そして、シーツカバーを外しベッドの表面をチェックしたところ、ついにご対面!
生きている成虫二匹、卵二個。
すぐにオーナーさんを呼びそれらを見せたところ、その場でベッドは破棄。(その時に分かったのですが、中のスポンジはボロボロのかなりのお古でした)
さらにベッドバグ用のスプレータイプの殺虫剤を購入してもらい、部屋の隅々にそれを吹き付けました。その後、それは一週間に一回、その部屋を引っ越すまでの約2ヶ月間のルーティーンワークとなりました。
そこを引っ越して半年以上経ちますが、今でもその時の体験はトラウマです。
美術館の階段や公園のベンチには座ろうとは思いません。
ベッドバグは家の外にもいます。羽を持たない虫なので、そこら中を這い回っているのではないでしょうか。「食事付きの宿」を探して。
ちなみに、安いホテルなども危険だと言われていますので、観光でニューヨークにいらっしゃる方々も十分に気をつけてくださいね。
ブログ:Masa’s Eyes
All photos by Masa