アメリカニュース ヒトコの小径

アメリカの非常事態

年の瀬が迫り世の中があわただしく動いているように感じる2015年の12月。 来年の大統領選を前に、アメリカでは、出馬候補者の発言やスキャンダルなどで、毎日、ニュースで大騒ぎとなっている。

年の瀬が迫り世の中があわただしく動いているように感じる2015年の12月。

来年の大統領選を前に、アメリカでは、出馬候補者の発言やスキャンダルなどで、毎日、ニュースで大騒ぎとなっている。

フェイスブックでは、著名人の政治的発言を中心にヒートアップし、友人同士でも討論になったりして、

「It is ridiculously political on FB right now.
I cannot even look at my friends pages any more.
(信じられないぐらい政治的になっていて、今、フェイスブックで友達のページすらもう見れない)」

という友人も多い。

ロバート・レッドフォードやリチャード・ギアが政治的発言をして業界追放騒ぎになったのも遠い昔。

人々は、面と向かって今まではタブーだとされていた政治や宗教について意見を交わすようになり、それがフェイスブック上でとなると、さらに盛り上がる。

過激な人が増えている。

それでもまだ人々はモノたりないわけで、自由気ままに言いたい放題の著名人に人気が集中するわけだ。

友人曰く、今のアメリカは「民主党はますますリベラル化し、共和党はさらに保守化している」ということで(つまり、それぞれの党が、その主張を元に過激になっているということ)、国民は、どちらか両極端派となり、昔のように、民主党だろうが共和党だろうが、常識を踏まえたごく一般的マイルドな考えの人たちがいなくなっている、ということらしい。

なるほど、確かにその通りかもしれない。

フランスのテロ事件があって以来、毎日の安否に関して、不安な思いでいる人も多いと思う。

そんな時に、アメリカでは銃乱射事件が相次いでおり、アメリカという国はもしかしたら、「最悪」な国であるかもしれないと思わざるを得なくなってくる。

パリ同時多発テロ事件後は、アメリカでは銃を購入する人たちが増えているという事実に、嫌悪感すら覚える。

ここで気付かなくていけないことは、身を守るはずの銃が、これだけ多くの惨事をもたらしているということなのに。

12月4日付けのニューヨークタイムズでは、

End the Gun Epidemic in America

というタイトルで、「社説(エディトリアル)」の記事が同紙の一面に掲載され、話題になっていた。

hitoko122015_1.jpg

ニューヨークタイムズはもともとリベラルよりの新聞として知られているので、銃規制を含むこのような記事はよくあったが、一面に「社説」が掲載されたのは、1920年以来初めてなのだそうだ。

この記事は12月2日に起こったカリフォルニア州での銃乱射事件を受けての社説であるのだが、この事件でも容疑者が使用したと言われるのが、機関銃のようなタイプの長銃であったことから、

「残忍なほどに素早く、効率的に人を殺害するために設計された武器を、市民が合法的に購入できるのは非道徳的であり、国家的な恥だ」(訳:毎日新聞)

というサブタイトルで、銃規制を主張した。

同紙発行人のアーサー・ザルツバーガー・ジュニア氏は

「銃の悲劇を目の当たりにしてどうすることもできない国の無能さに対する怒りとフラストレーションを強くはっきりとした形で訴えるべきだと感じ、この社説を一面に掲載することを決めた」

と言っていたようだ。

過激な記事が多いニューヨークタイムズの社説なんて、誰も真剣に受け止めない、というアメリカ人の友人もいるが、私はまったくをもって、この記事に同意する。

ちょうどこの記事が出る数日前。

私たちが住むチャペルヒルでは、地元の名門州立大学(UNC Chapel Hill)で武器を持った怪しい者がキャンパス内にいる可能性があると報じられ、全く関係のない5マイル以上離れている子どもたちが通う公立学校でも「ロックダウン(学校厳重監禁)」が実施された。

それぞれ子どもたちが通う学校の校長先生から電話やメールでその知らせを受けたが、ちょうどその日は、カリフォルニア州サンバーナディーノ銃乱射事件が起こった当日だったので、尚更、身震いがした。

幸いなことに、ロックダウンは学校と学校付近の安全を確認した後にすぐ解除された。「子どもたちも全員無事で、これからも学校側は子どもたちの安全を何よりも優先し指導を行います」とのメールが来たのだが、その「指導」というのがどういうものなのか、複雑な心境になった。

私のオフィスでは、つい先日に「アクティブシュータードリル」の参加が全従業員に義務付けられ、3日間に渡り行われた次第だ。

FBIがアメリカ合衆国国土安全保障省と協力してプロモートしているプログラムの説明や、それに関する様々なヴィデオを見て、最終的には、予行演習する、というものだ。

Run, Hide and Fight

この手の訓練は、本当に受けること自体が怖く、必須だったが受けたくない、と実はボスに言った次第だ(が、勿論軽く受け流された)。

「アクティブシュータードリル」というのは、私はこれで2回経験したことになるが、恐怖心が芽生え精神的にもかなり落ち込み、結果として日常生活において、必要以上に警戒心が高まることになる。

「アクティブシュータードリル」の過去記事はこちら

FBIが唱えている生き残り方法とは

Run if you can;
Hide if you can’t run;
and
Fight if all else fails

というものであり、もっともなように聞こえるが、実際に、このようなハリウッド映画的ヒーローになれる人がどのぐらいいるのだろう?

12月18日のニューヨークタイムズでは、

‘Run, Hide, Fight’ Is Not How Our Brains Work

という否定的記事がタイミングよく出ていたので、リンクを載せておく。

つまり、実際にこのような状況に陥った時、人々は、腰を抜かしたり、恐怖で動けなくなる場合が多い、ということ。

では、そういう場合は、大人しくどこかに隠れてセルフォンからソーシャルミディアなどを利用して外部へ助けを求めるなど、いろいろな方法もあるが、元々、FBI のそのプログラムでは、犯人に居場所を気がつかれないように、セルフォンやその他デバイスは、早いうちから電源を切ることを勧められている。

手も震えてなかなか長いテキストが打てないと思うし(うちの職場には、そのような時に簡単にテキストできる短縮コードがしっかりとあるが)、はやり、シナリオ通りにはいかないと思う。

私は、この訓練そのものにも疑問を感じる。

これは正に、人々の恐怖心を掻き立てるものであり、防衛の目的で銃が必要なのではないか?と助長しているようなものだと感じる。

実際に最後の「Fight」の部分では、身近にあるハサミやカッター、または消化器など「武器になるもの」を探し(または、相手から、銃を奪い取って)、それで相手をやっつける、ということ。

訓練会場で、怯えながら動画を見ていた私たちは、いきなり変わる展開に勇気付けられ、相手を負かすシーンになると、ほぼ全員一致の拍手喝采となるわけだ。まるでハリウッドのアクション映画の展開だ。

更に怖いなと感じるのは、訓練の最後でも警察の人が念を押すように言っていたが、事件現場から、救出される時には、「犯人と間違われないように」手を上にあげ、しっかりと「自分は犠牲者である」ことを証明することが大切だということだ。

下手に手をポケットの中に入れたり、怪しい動作をするだけで、警察側から犯人だと思われ、撃たれる可能性もある、というわけだ。

警察が笑いを浮かべながら、警察の正当防衛を主張し、冗談さえ言ってしまうところにも、吐き気がした。

銃は完璧にこの世の中からなくなればいい、と個人的に思う。

私が子どもの頃は、兄が好きだった『ダーティーハリー』や『ジェームズ・ボンド』を見て、かっこいいなと思ったたのは、それが非日常であるとわかっていたからだ。
チョウ・ユンファの映画に、手を叩きながら喜んだのも、ハードボイルドのかっこよさにではなくて、やり過ぎゆえに、現実離れしたエンターテインメント性が面白かった。

薬師丸ひろ子が、セーラー服姿で機関銃を撃ちはなった時には、学校では「快感!」と言って銃を撃つ真似をして遊んでいた同級生がいたことも思い出す。

だが、それを見ていた大人たちは何も疑問視しなかった。
私たち世代は、無邪気に幸せに育ったのだ。

それに引き換え、今の子どもたちは、可哀想だと思う。

学校は、コトが起こる度に、「ロックダウン」となり、日頃からそのような本番に向けての訓練だってさせられるわけだから。

大人でも体が震えるほどの訓練なのだから、純粋な子どもたちがどのような気持ちで、そのような訓練を受けているのかと思うと、ぞっとする。

楽しいはずの水鉄砲でさえも「子どもの遊びとして不適当」だと禁止される場合もあるし、うちの子どもたちが小さかった頃は、お友達が持っていたスーパーヒーローのフィギュアの腰元からは、剣や銃がしっかりと抜き取られてしまっているご家庭もあった。

なんとも過剰反応だなと思う反面、アメリカでは、そこまで銃や暴力が私たちの日常に近いところに存在しているという証しでもあると理解していた。

子どもたちの未来のためにも、私たち大人がもっと切実になって銃規制をしないといけないと思う。

ニューヨークタイムズの社説が言ったように、来年の大統領選を控えているこの時期に「アメリカにもまだまだ良識があるということを示す絶好のチャンス」であるのだから。

果たして、ドナルド・トランプが出馬候補に挙がってしまうアメリカに「良識」が残っているかどうか?というのは、またまた大きな疑問ではあるのだけれど。

上山仁子その他のサイト・HP子育てブログノースカロライナ&その近郊情報集
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1 comment on “アメリカの非常事態

  1. Pingback: 銃規制について : ノースカロライナ&その近郊情報集

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