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楽しいキャンパスライフには危険もいっぱい:深刻なしごき問題とパーティー事情

ちょうど、先日のニューヨークタイムズに記事が出ていたので、タイミング的にもこれを機に、私自身の意見も添えて記事にしておこうと思った。 ニューヨークタイムズが揚げているのは、アメリカのキャンパスライフで重要な位置を占める「フラタニティー」と「ソロリティー」の「しごき」問題についてだ。

ちょうど、先日のニューヨークタイムズに記事が出ていたので、タイミング的にもこれを機に、私自身の意見も添えて記事にしておこうと思った。

「Hazing and Drinking Deaths at Asian-American Fraternities Raise Concerns」

ニューヨークタイムズが揚げているのは、アメリカのキャンパスライフで重要な位置を占める「フラタニティー」と「ソロリティー」の「しごき」問題についてだ。

アジア系クラブにおいての「しごき」問題に重点が挙げられていたが、ヘイジングと言う「しごき」は、どの人種の社交クラブにおいても、エスカレートしており、今更出てきた問題ではない。

日本でも、ついこの間、東京大学のテニス部のサークルのコンパで一揆飲みし、アルコール中毒で死亡した事件があったばかりだ。

アメリカでも、そのような新入生に対するアルコールがらみの「しごき」、そして同時に起こりうるパーティー時のレイプなどは、かなり前から問題になっているわけで、特に派手な社交で知られる「フラタニティー」と「ソロリティー」内で起きている様々な事故は、悲しいことに毎年この時期になるとニュースとして報道されるわけである。

アメリカでは、大学生活が始まったばかりの9月中旬から10月初旬にかけての時期、キャンパス内では、「リクルーティング」と言って、どのクラブ(寮)に入るかの、選考活動が盛んに行われる。

このような期間のことを「ラッシュウィーク(rush week)」というが(勧誘期間)、それは新入生たちが、どこのクラブに加入するか慌てて決める、という意味から生まれた言葉なのだそうだ。

私たちが住む地元の州立大学(UNC・ノースカロライナ州立大学チャペルヒル校)にも、当然「フラタニティー」と「ソロリティー」がキャンパス内にたくさんある。

クラブのホームであるハウジング(学生寮)付近で、制服のようなきれいなドレスを着て、女子生徒たち(なぜかフラタニティーよりもソロリティーのメンバーが目立つ)が、列になって並び、「ビューティーコンテスト」でもしているのか?と感じさせる華やかさでクラブの儀式や伝統にそって何やら行われる姿が、毎年、見られる。

「選考活動」と訳したが、つまりクラブ加入を承認してもらえるように、数週間にわたって行われるいろいろなイヴェントや活動を通して、入会希望者は自分たちをアピールするわけだ。

ただ、外部にはそのことは絶対に知られてはいけないなど、クラブによって従わなければいけない秘密の掟があったりする。

選ばれないと当然、加入できない。

このようなクラブは、選りすぐられているだけに、エリート集団と見なされ、学生にとっては、各フラタニティー&ソロリティーのグリークシステムに入ることは、最高のステータスだと言うことだ。

だから、学生も必死になる。

グリークシステムと呼ばれる由縁は、寮などのサインにギリシャ文字が使われているからであるらしい(そしてメンバーは「グリークス」と呼ばれる)。

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UNCのキャンパス内にある寮。

キャンパス内にはそれはそれは他にもたくさん意味不明のギリシャ文字が付いた建物がたくさんある。

今年は天候に恵まれない週末が続いていたが、キャンパス内を通る度に見られるこのような風景は「ああ、9月になり大学が始まったんだな」と、私にとっては季節を感じる風物となっている。

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UNCのソロリティーの一つ。

このサイトからしてもわかるように、会員は、みんながとってもきれいな(同じような顔をした)ブロンド系(w)。
そういうルールがあるのかは微妙だが、どの大学のクラブでも、入会者は美男美女が多いと言われている。

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そう言えばこういう映画もあった。
リーズ・ウィザースプーン主演の「リーガリーブロンド」。
ハーバード大学のソロリティーに所属するブロンド女子大生のキャンパスサクセスストーリー。

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アメリカの大学における社交クラブについてわかりやすく描かれたのが「アニマルハウス」という映画だそうだ。

比較的最近では「ソーシャルネットワーク」という映画でもこのような「クラブ」が背景にあった。

元々は、一部の白人系のクラブのみであったが、最近ではニューヨークタイムズが言っているように、アジア系など様々な人種のクラブが「公平に」存在するようになった。

そうなると今度は、クラブ同士の対立も出てきたりするわけだ。

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スパイク・リー監督の映画「スクールデイズ」では、黒人と白人のクラブの対立が描写されている。

そもそも、私がこのような「社交クラブ」の存在を知ったのは、4年ぐらい前、まだまだ小学生だった長女のところへ「ビューティーコンテスト」のお誘いが来た頃だった。

その招待状には

「地元の様々な推薦により、あなたのお嬢さんは、次回のミスティーンビューティーコンテストの参加権が与えられました」

というようなことが書いてあり、当時は特にお稽古事などさせていなかったし、

「地元の様々な推薦って何?」

と思いつつも

「うちの娘ったら、可愛いから、誰かの目に留まったのね?」

と、親ばかにも喜んだ。

とりあえずは、関連イヴェントに参加したり、いろいろな人たちから話を聞いたり交流を深めたりして、情報を集めていった。

すると、何らかの形で私たちの個人情報が、地元の「ソロリティー」などのメーリングリストへ伝わり、どうもそこを介して、そのような「勧誘」が来たらしい、ということがわかった(アメリカで個人情報を守るもなにもないし、このような招待状は他のルートで来る場合もある)。

私はアメリカの大学を卒業しているが、どちらかというと一匹狼的性格で、若い頃は人とつるむこともあまり好きでなかったという気質上「ソロリティー」というクラブの存在も、その時まで、まるで知らなかった。

どうも、かなり閉鎖的で怪しい集団のようだ。

極めて庶民である私たちが、なぜそのようなところから限定特権付きお誘いを受けたのかは、謎であるが、あまり表だって出てこない閉鎖的部分のアメリカ社会の仕組みを理解する上で、とても役に立ったと思っている。

長女が若すぎる(彼女が参加できるコンテストは、「ジュニア・プリ・ティーン」というメインのミス・ティーンコンテストから2ランクも下の付属のものだった)ということ。

私はビューティーコンテストなどが好きでない、ということ。

イマイチ理由がわからないのだから「選ばれました」と言われても、手放しで喜ぶほど親ばかではなかったこと。

ビューティーコンテストに出るためのトレイニングやスポンサーの広告料などにお金を使っていられない、ということ。

理由は様々あったのだけれど、ホテルで行われたコンテストの最終オーディションで「トップ5」に残りました!というところでストップ。

それ以上は進まない方向で、辞退することにした。

ついでに言っておくと、ソロリティーは、コミュニティー活性化の一環として(?)、地元高校生を対象とした社交界デビュー(デビュタント)という輝かしいイヴェントなども主催している。

「選ばれた」女子としては、最高に嬉しいだろうし、一応は「良家」であるという規定のもとで話が来ているのだから、家族(親)としてもとても光栄なことでもある。

実際にデビューできるようになるまでには、様々なトレイニングや社会活動、各種パーティー主催などもこなさなければならないが、そのような夢のイヴェントに家族で参加できるのも特権階級である証拠だ。

お金を出してくれそうな家のメーリングリストから次々に当たっているだけという噂もあるが、実際にデビュタントにはいろいろなお金がかかるわけで、経済的にもそういうことができる家庭をターゲットにしている立派な「ビジネス」とも言える。

地元良家としての誇りもあるし、娘の晴れの舞台を見届けるためにも思う存分、お金も出します(地元に還元する)、という仕組みになっている。

なるほど、そういうことか。

ヨーロッパと違い、アメリカの社交界とは、多少のお金を出せば誰でもがデビューできるものなのだ(ニューヨークのウォルドルフアストリアでで開催される社交界デビューだけは、正真正銘格式のある名門良家でないと参加できないと言われている。ただ、その誇り高い伝統も、ウォルドルフアストリアが中国企業に買収されてしまった今は、変わっていくのかもしれない)。

日本の社会などには、このような「クラブ」がない(と思う)ので、なかなか日本人にとっては、馴染めないと思う。

男性限定のクラブが「フラタニティー」で、女性限定のクラブが「ソロリティー」。

ウィキぺデイアなどで、検索すると「友愛」と出てくる。

(建前的)難しい提議は、ウィキピデアを参照してもらうとして、この友愛組織は、アメリカの社会では、かなり深くはびこっている、という事実に驚くものがある。

特に、比較的しっかりとした伝統のある大学に行けば行くほど、キャンパスライフには欠かせないものとなって存在するようで、生徒の80%が何かしらの「友愛クラブ」に参加しているという。

つい最近も、子どもが大学へ入ったばかりというママ友から、

「ヒトコの住所、子どもが入りたいと思っているソロリティーに渡してもいいかしら?何か届いても寄付なんてしなくてもいいし、勿論、全然無視してもらってかまわないから。でも、住所とかたくさん集められる方が有利らしいの」

などと言われたばかり。

みんなクラブに入会できるように、できる限りの努力をしている。

会員として認められるまでに、いくつかの「試練」を乗り越えなければならず(それがまたヘイジング=しごきとなることも多いのだが)、なんらかの規定をクリアし選ばれた人たちのみが「プレッジ」と呼ばれる「誓約」を交わす。

それが入会の儀式の一つでもあるわけだ。

日本では、「サークル」のようなものかもしれないが、思いっきり秘密結社なる伝統を引きずっている部分があり、会員になるためのハードルを乗り越えたら、会員同士の仲間意識は強く、先輩後輩の縦の関係はかなり厳しいようだが、みんながブラザー・シスターになる。

そして、そんな会員同士は、秘密の誓約を交わした仲であるわけで(秘密をわかち合った者同士はそれだけでも親密になる)、どんなことがあっても助け合うことを約束させられる。

この関係は、その辺の学閥のつながりよりも、断然強力であるらしい。

つまり、一生寂しい思いはしないし(そういう意味では、アメリカンライフを思いっきり満喫できる、という目的で留学生にもお勧めだが…)、困った時でも助け合うことを誓った会員同士のネットワークがあるために、大学を離れた後の人生においても(特に就職時など)いろいろと有利に働く、という特典付き。

クラブのミッションは、基本的には、勉学の合間をぬった社会奉仕やボランティア活動などをしながら、地元社会への貢献度を高めるというものであるが、そのような徳なことをしながら地元社会との交流も深め、人間的にもより優れた人格を形成する。

入会は簡単ではなく、共通の目的を持った有志(学生)が集まり社会奉仕をするというクラブは、当然のことのように「特権階級」としてみなされている。

が、実際蓋を開けるとその実態は、週末は昼間から寮内外でアルコールを飲み、「社交」としてのパーティー三昧という派手な部分だけが目立ってしまっている。

UNCの男子寮にも、以前から屋根の上に椅子が置かれていたのが気になっていたのだが、私のオフィスにインターンで来ていた同学生にそのことを聞くと

「あれは、フラタニティーの男子が、通りかかる女子を眺めるための椅子よ。
基本的に彼らは、そうやって女子をナンパするのが好きなのよ。フラタニティーの寮の近くを歩くのイヤになるわ。彼らは自分たちがマッチョでとってもかっこいい男たちの集団だと思い込んでるの。いい迷惑!」

と言っていた。

外部者からは冷めた目で「フラタニティー&ソロリティー」=「パーティーやドンちゃん騒ぎが好きなお金持ちのボンボンやお嬢様の集団」と批判的に捕らえることも多くなっているのが現状だ。

美男美女の集まりであるということに対しても、差別である、とひがみから生じる批判もある。

クラブ内の問題は、実はしごきだけと言うわけではなく、他にも、会員同士でも、家族同様のシスター・ブラザーになったはずなのに、やはり現実では、馬が合わない人たちもいるわけで、孤立してしまうケースもあるとか。

そういう場合は、退会することになるわけで、加入したからと言って、将来が約束されたというわけでもないし、内部での「いじめ」もあると聞く。

地元UNCでもここ数年は、警察や消防署から「新入生は友愛クラブには入らないのが賢明である」という警告が毎年正式に出ているらしい。

何かと問題の多い社交クラブなのである。

ニューヨークタイムズで述べられているように、しごき問題をなくすためには、もっとクラブ内の実態をあからさまにし、内部の人間の意識を変えていかないといけないと思う。

ただ、秘密主義的要素があるので、クラブ内で問題が起こっても、なかなか表に出ることもなく、率先して公にする人もいない、というのがネックとなっているわけだ。

自由と平等を唱える国であるはずのアメリカに、未だこの閉鎖的「友愛社交クラブ」が存在するということそのものにも疑問を感じてならない。

私がこのような友愛クラブが嫌いな理由は、閉鎖的であるということ以外にも、ほとんどのクラブが、同性愛、人種差別、男尊女卑など、現社会で解放へ向かっているという社会問題が「伝統」という名の元で、ほぼ100年前と変わらない状態で軽視されている、ということだ。

フラタニティー会員の多くの男性は、根底では「misogyny」ではあるが、セックスの対象として女好きである、と分析する人もいるらしいし、クラブそのものが、差別をする集団であると言っても過言ではないと思う。

特権階級であるという内部意識があるために、クラブ外には上から目線的なところも好きじゃない。

クラブ内の上下関係についても、アメリカの精神に反していると思う。

現代アメリカ社会と大きく矛盾するようだが、アメリカで権威ある人たちは、政治家や企業のトップを含め、必ずと言っていいほど、このようなクラブに加入しているという事実もあり、社会に多大な影響力を残している。

いろいろ賛同できないところも多いが、大人の友愛クラブなどになると、さすがに大学生の間で問題になっているようなことはなくなり、真面目に社会のために尽くそうという体勢となっているようにも思われる。

秘密主義と言ったら話が面白くなるが、「匿名」で静かに徳のある行いを提供しているという意味では、それはそれは関心することも多い。

一部の大人の友愛クラブや大学では、秘密の「誓約(pledge)」を廃止するという動きも出てきているらしい。

伝統とは言え、問題に気が付いている人もたくさんいるはずだ。

数年後に子どもを大学へ送ろうとしている親としては、このアメリカのキャンパスライフのグリークシステムのあり方については、かなり気になるところだ。

友人も言っていたが、親としては、とても心配だと思う。

深刻な社会問題となってはいるが、こればかりはどうすることもできない、と感じる。

私にできることがあるとしたら、それは、ひとりでも多くの人たちに、このような事実を伝え、問題の表面化をサポートすることではないか、と思った。

自分の子どもには、なるべくそのようなクラブへの参加は避けてもらいたい、と身勝手かもしれないが、願わずにはいられない。

もし、子どもたちがこのようなグリークシステムに入りたいと思っている場合は、是非とも親子で、ヘイジングに対することなど、充分に話し合うべきだと思う。

上山仁子その他のサイト・HP子育てブログノースカロライナ&その近郊情報集

Featured Photo Credit : http://unc.kappadelta.org/

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