ニューヨークで学ぶ! NYでファッションデザイナーになる! パーソンズ奮戦記

第七回 「大量の課題に囲まれて」

今回はパーソンズでの課題について実例をまじえてお話しします。 まず、この学校は課題の量が多いことで有名です。

今回はパーソンズでの課題について実例をまじえてお話しします。

まず、この学校は課題の量が多いことで有名です。

日本にいた際に、アメリカの学校は日本に比べて全体的に課題が多いと聞いたことがあります。
しかし、こちらの友人に聞くとパーソンズのそれは群を抜く多さだそうです。

僕が在籍するAASのファッションデザイン科の学生は、1セメスターにつき平均的に6~8教科を受講しています。
各教科は週に1クラス(2時間40分)です。

楽そうに聞こえるかもしれませんが、全ての授業でそれなりの量の課題が出ます
優先順位をつけなければ到底追いつかない量です。

先生によっては課題の少ない楽なクラスもあります。手を抜いてもいい成績を取ることができるクラスもあります。

これは僕個人の意見ですが、遊びと学業を両立することはパーソンズでは難しいのではないでしょうか。

週末にしっかりと遊んでいる学生もいます。
しかし、そういう学生の多くは、残念ながらデザイン性やクウォリティーが高いものは作っていません

パーソンズの成績は絶対評価です。

また、残念ながら、パーソンズの先生の多くは授業に出席して課題を毎週出していれば簡単に高い評価をつけます。
そのため、学生自身に主体性がないと、卒業までに得られるものは相対的に少なくなります

僕のゴールはパーソンズに入学することでも、いい成績を取ることでも、卒業することでもありません。

将来、自分が作った服を着て頂き、それによりその方々に少しでも幸せになって頂くこと、これが僕の求めているものです。

これはパーソンズ入学時点から変わっていません。
この気持ちを常に心に抱いて課題に取り組んできました。


それではここから、これまでの課題から抜粋してご覧頂きます。

“Imperfect Beauty”、作品の一部

これはパーソンズでまさに初めて作った課題の一部です。

この授業のタイトルはProcess & Skillsといい、ポートフォリオ作りのごく基礎的なことを学ぶ授業です。

この時の課題は次のようなものでした。

“Imperfect Beauty”というコンセプトで写真や絵を用いて30ページのブックレットを作りなさい。
文字は一切入れてはいけません。また、Web上の写真を使用してはいけません。

自然界のものほど美しいものはない、と僕はいつも考えています。

では、すでに完璧な姿であり、30の形に変化させても美しいものは何かと考えた時に、この卵の殻を用いたアイディアにたどり着きました。

すぐに部屋を即席のカメラスタジオにし、中身を空にした殻を用意しました。後はその卵を立たせて、少しずつピンセットで砕いていき、30枚の写真に収めました。

一枚一枚の写真が一つの作品として成り立つことを考えながら、また、砕き過ぎると後戻りは出来ないため、集中力のいる作業でした。

基本的にこの2年近くの間に作って来た課題で満足しているものはありません。
作った翌日以降には色々な修正点が見えてくるためです。

ですが、この作品は今でも自分自身の満足度の高いものです。

次に、これは2セメスター目で作った課題です。

Project “Cowl”, Front
Project “Cowl”, Back

この課題は”Cowl”というドレーピング技術を用いたドレスをMuslin(練習用の安いコットン)で翌週までに作って来なさい、というものでした。

背面に見られるのが“Cowl”というものです。

背面のデザインはすぐに思いついたのですが、フロントのデザインに頭を悩ませました。
背後から続くラインをフロントにどのように持ってくるか。

授業の際に、先生が過去の学生の作品の写真を数十枚見せてくれたのですが、それが良い意味でプレッシャーになりました。

それらにはない新しいもの、でも奇抜ではなく誰かが着用しても違和感のないものを心がけました。

課題が出てから5日間考え抜き、残りの2日間でドレーピングと縫製を行いました。
この授業は週に2コマあり、必然的に課題が毎週2つ出ていました。

これだけ聞くと、大して大変に感じられないかもしれません。

しかし、そのクラスを受講していた学生19人の内、最後の授業まで課題の提出が一切遅れたことがない学生はたったの3人、と聞くとどうでしょうか。

もちろん、その3人の中には僕もいます。他の2人はインド出身の友人たちです。

実はこの課題には後日談があります。

この課題を授業中に先生にチェックして頂いている際に、複数のクラスメートたちが周りに集まっていました。
その輪の中に前述のインド出身の友人がいました。

翌週の授業中、他の生徒が別の課題のチェック中に、その彼女が教室の外で話をしたいと言って来たので、何だろうかと思いながら彼女についていくと、彼女がこう切り出してきました。

「卒業後に新しいブランドを$4,5million規模で立ち上げるの。今、そのブランドの若手デザイナーを探していて、まさにそのポジションについて欲しいのだけれど、どう思う?」

彼女はすでに自分自身のブランドを持っていて、上手く経営を行っていることは他の友人たちから聞いていました。
それに、パーソンズの学生の中にはマンハッタンで月数十万円の豪勢な部屋に暮らしている人たちも多くいます。

ですので、その話を聞いて驚いたのは金額ではありません。

その友人とはこの授業で初めて出会いました。
また、この課題は3週目というセメスターの早い段階で出されたものです。

それにも関わらず、そのような大事なブランドのデザイナーになってほしい、と言ってもらったことに驚きました。

この時、同時にこのようにも感じました。

手を抜かずにやって来て良かったな、と。

今後、このブランドの話がどうなるか分かりませんが、今の僕を支えてくれている貴重な経験の一つです。

次に、3セメスター目で作った課題をご紹介します。

それは“Zero Waste Fabric”というものです。
この課題は、生地をなるべく無駄なく用いて服を作りなさい、という内容で出されました。

もちろん、これも与えられた時間は一週間です。

この課題の説明の際に、先生が過去の学生の作品を前述同様に大量に見せてくれました。

それらを見た時の僕の感想は、え?これがパーソンズ生の作品?というものでした。

どれもが、生地に首を通すための穴があいているか、あるいは更に腕用の2つの穴があいているというもので、それらはとっても原始的で、人間がマンモスを追いかけていた時の服のようでした。

その時に、こういった服は絶対に作らないと心に決めました。

とはいうものの、発想の転換というのは本当に難しいことです。

その課題が出された授業のあとに、たまたまニューヨークで開催されていたジャン・ポール・ゴルティエ氏の作品展を観に行きました。
素晴らしい作品の数々に驚嘆したものの、その課題とは切り離して観ていました。

それから3日間、前述の課題のデザインを考え続けていたのですが、同時に毎晩同じ夢を見るようになりました。

それはその作品展で観たリボンを使ったドレスです。

他にもアイディアを考えたのですが、そのドレスだけが頭から離れなくなり、結果的に課題のインスピレーションになりました。

4.5yardsのmuslinを16枚のパネルに手で裂き、それをドレーピングする方法を考えつきました。

Project “Zero Waste Fabric”, Panels

ドレーピング前に具体的なデザインは全くありませんでした。

つまり、全てアドリブです。
ボディのシェイプ、生地との“会話”によって作っています。

Project “Zero Waste Fabric”, Front
Project “Zero Waste Fabric”, Side

非常にシンプルなアイディアですが、細かな修正を行わないと綺麗に見えないので、指先による1mm単位の修正を何度も経て、5時間後にようやく完成しました。

課題が出たときの先生の指示が、縫製しないこと、というものだったので、このときは縫製していません。

なお、このドレスをprototype(原型)としたウェディングドレスを作ってほしい、という仮注文を知人からすでに頂いています。
このアイディアでドレスを作るにはミシンによる縫製は不可能なため、昔ながらのハンドソーイング、いわゆる手縫いと言う方法で作ることになります。

とても大変な縫製になりそうですが、考えるだけでも完璧主義の血が沸き立ちます。

実はこの課題にも後日談があります。

この製作直後に、Calvin Kleinのイヴニングやクチュールのドレスを作っている部署のassistant directorに、この作品を含めて過去の課題を観て頂く機会がありました。

そして、その方にこう仰って頂きました。

「あなたの作品はとてもクチュール的で、高い技術力を持っているわね。綺麗な作品を見せてくれてありがとう。」

その時点では、クチュールについてほとんど知識はありませんでしたし、服作りの勉強を始めて実質的に一年経ったばかりでした。
何事にも効率性を求められる現代において、自分の完璧主義な性格を受け入れられることはほとんどありません。

そのため、Calvin Kleinのassistant directorとの出会いによって、ようやく自分の居場所、自分が作り続けていきたいものが見つかったような気がします。

今後は、クチュールにもっと意識をおいてドレスを作っていくことになりそうです。

クチュールと言えば、ニューヨークを代表する美術館、メトロポリタン美術館で、アメリカが誇るクチュリエ、Charles Jamesのエキシビションが8月10日まで行われています。
ちなみに、メトロポリタン美術館の料金はDonation制です。

チケット売り場に金額が表記されていますが、僕はいつも大人一枚、と言って1ドル札を一枚差し出しています。

ニューヨークに遊びにいらっしゃる方はぜひご覧下さいね。

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