セレブの小部屋

キアヌ・リーブスに漫画で問いかけた日本の漫画家とは?

漫画:中邑みつのり Manga by Mitsunori Nakamura 講談社「ヤングマガジン」掲載漫画 Young Magazine, Kodansha Co.

これは、講談社『ヤングマガジン』誌に掲載された「中邑みつのり」さんの漫画だ。
映画『地球が静止する日』の取材で俳優キアヌ・リーブスにインタビューした体験が描かれているが、なんともリアルな描写だ。
本当に起きたことが、そのまま描かれているのだ。

なぜ、それを証言できるのかというと、この漫画に出てくる「通訳さん」というのが、私なのだ。

外国人記者4~5人と同席して行われたインタビューだった。
ホテル部屋でキアヌ・リーブスの登場を待つ間、カメラのシャッターを押した漫画家の中邑さんに二人の女性記者たちは眉をひそめた。
「ノー! 私の写真は雑誌に載せてもらっては困る」と、外国人記者たち。

「資料として撮っただけなので、写真は載せませんから」と、伝えたものの、その逸話がちゃんと漫画になっていたので、笑ってしまった。

こういう取材では、遠慮を知らない英語堪能な記者たちがどんどん質問を投げかけるので、おとなしくしていると質問を入れ込むチャンスさえ回ってこない。
それこそ、漫画にあるように「早い者勝ち」なのだ。
つまり、みんなにペースをもっていかれる前に一番最初に質問しましょうと、私と中邑さんは作戦を練っていたのだ。

ところがキアヌ・リーブスが部屋に入って来た途端、誕生日はどうやって過ごしたか、どんなワインが好きなのか、なんていう雑談が始まってしまった。
キアヌが私たちの横に座って、2分。
ああ、はやく質問せねばという緊迫感と共に、中邑さんは行動に出た。
他の記者が質問を言い始めたところで、彼は急に英語で声を張り上げたのだ。

「ディス・イズ・マイ・クエッション! オーケー!?」

じつに凄かった。
手の動作も大きく、堂々と入り込んできたので、話の途中だった記者も圧倒されて彼を見つめるばかり。

そして、そこからいきなり紙芝居が始まったものだから、回りは唖然。
彼の一声に続いて「彼は漫画家なので、漫画で質問します!」と、私は通訳を始めた。

中邑さんは小学生のときに彼自身が実際にUFOを目撃した話を、何枚かのスケッチ絵を使ってキアヌに伝えた。

「キアヌはUFOやエイリアンに遭遇したことがあるか?」
という質問に辿り着くまでの紙芝居に、回りの外国人記者たちはかなり肝を抜かしたようだ。

「ジョーダンでしょ?」「いつまで続けるつもり?」
と鼻息荒い文句を耳にした私は「ごめんなさい、これは質問の一部なの」と記者たちに早口で伝えて、キアヌに語り続けた。

当のキアヌはというと、目を大きくして「ワオ‥!」と、漫画に興味津々に見入っていた。
実のところ、中邑さんが飛行機の窓からUFOを目撃したときの話は、とてもリアルで興味深いのだ。
キアヌは「クール! ファンタスティック!」と、反応した。

そして肝心の質問を聞くと、一言「ノー」。
あまりにシンプルな回答に回りの報道陣も笑って、場は和んだのだった。

「ノー!」だけで終わってしまうのかと、私も一瞬、ヒヤッとしたが、キアヌはとてもいい人なのでちゃんと答えてくれるだろうと思っていた。
やはりキアヌはいろいろと真面目に話してくれた。
この質問を発端に、こんな中邑さんの話を信じるか、可能性としてエイリアンと遭遇できると信じているか、 という話題へと膨らんでいったのだ。

「ああ。彼の話を信じない理由がないよ。
でも僕はエイリアンに拉致されたり、何かを体に埋め込まれたりするのはご免だね。
だけど窓の外に彼らの姿を目撃するなんて、まさに楽しそうじゃないか!」と、キアヌ。

なんて純粋できれいでおっとりした人だろう。
私は毎回、彼に会うたび、そう感心してしまう。私はキアヌという素朴な人間が大好きだ。

でも今回はいままでやったことのない変った質問方だった。そんなインタビューも無事に終わり、帰ろうかと思ったときだ。
私は映画スタジオの係員に呼び出された。

「あんなスタント、見たことないわ! キアヌのパブリストから”これ、いったいなに?”って、あのとき私は睨まれてしまったのよ」と、スタジオ係員から叱られてしまったのだ。

「漫画を使って良いかは、まず私に聞いて欲しかった」と言われて、確かにそうだったと反省したが、
事前に聞いていたら、この”スタント”にオーケーはでなかっただろう。

「ぼくは漫画家なので漫画で質問したい」と言われ、「それは面白い」と思った私。
おかげで、私はあやうく映画スタジオのブラックリストに載るところだった。いや、もう載っているのかもしれないが、キアヌを不快にさせたわけではないので大丈夫。

それどころか、キアヌは中邑さんのアートを「クール!」と感心したように呟きながら楽しんでくれたのだ。
これで日本の漫画家、中邑みつのりさんも世界デビュー。
私はそれが嬉しかった。

copyright: 2009 Yuka Azuma /あずまゆか

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渡米は1982年。ロサンゼルスに13年在住後、ニューヨークへ。84年より映画記事を中心に雑誌等に寄稿。ハリウッド映画スターへのインタビュー歴は30年以上。訳書にマーク・デヴィッドジアク『刑事コロンボ』(角川書店)、同『刑事コロンボの秘密』(風雅書房)、フランク・サネロ『ジュリア・ロバーツ 恋する女神』(講談社)『ヴィダル・サスーン自伝』(髪書房)がある。

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