映画

ビンボー青年が巨万の富をつかむ「スラムドッグ$ミリオネア」

08年の映画賞を総なめ、ゴールデン・グローブ賞で4部門ノミネート、米俳優組合賞(SAG賞)でもノミネートされている作品が、「スラムドッグ$ミリオネア」 ひとことでいえば、インドの貧しい青年がミリオネアになるという、わらしべ長者のような物語なのだが、これが全米で大ヒット。アカデミー賞にもノミネートされる期待大なのだ。

©2006 FOX AND ITS RELATED ENTITIES.

08年の映画賞を総なめ、ゴールデン・グローブ賞で4部門ノミネート、米俳優組合賞(SAG賞)でもノミネートされている作品が、「スラムドッグ$ミリオネア

©2006 FOX AND ITS RELATED ENTITIES.

ひとことでいえば、インドの貧しい青年がミリオネアになるという、わらしべ長者のような物語なのだが、これが全米で大ヒット。アカデミー賞にもノミネートされる期待大なのだ。

魅力は、なんといってもストーリーテリングのおもしろさ。
物語は、主人公の青年ジャマールが逮捕されるところから幕をあける。

テレビ番組「きみはミリオネアになりたいか?」に出場して、みごと正解を答え、巨万の賞金を手にいれるジャマール。

いったいなぜ孤児のストリートキッズで、学校も行ったこともなければ、文字も読めないジャマールが難問に答えられたのか?

インチキに違いないと嫌疑をかけた警察に拷問され、厳しい取り調べを受け、ジャマールは彼の過去について語り始める。

宗教闘争、幼児虐待、売春、強盗。孤児の少年が必死にサバイバルしながら目にしてきたものは、偶然にもクイズの問いにかかわっていた……!

©2006 FOX AND ITS RELATED ENTITIES.

これはいいよー!
世界的不況だとかリセッションだとか株価暴落だとかで、メゲメゲになっている時にこそ観ていただきたいッス!

インドのあぜんとするような貧しい現実と、そのなかでどんな不運にもめげずに溌剌と生きる少年たちのバイタリティを見ていると、すげー! とシビれます。

監督はギリス人映画監督ダニー・ボイル。
スピーディな映像は代表作の『トレインスポッティング』でよく知られているし、子役の生き生きとしたかわいらしさを引き出す手腕は『ミリオンズ』でも証明済み。

脚本は『フルモンティ』のサイモン・ビューフォイによるもの。
原作と違っているのは、映画のほうがラブストーリーと、兄弟愛を軸にしているところ。

原作はヴィカス・スワラップ作の『ぼくと1ルピーの神様』
日本では、ランダムハウス講談社から邦訳が出ています。

原作では、主人公は「三つの宗教を象徴する名前を持つ」ラム・ムハンマド・トーマスという名前。
つまりインドにおける宗教対立を皮肉っているネーミングなんですね。
じつは登場人物たちも原作とあまり一致しない。
枠組みだけ同じで、ぜんぜん違うエピソードになっています。

主人公が出会う事件も、原作のほうがさらにダークな現実が盛り込まれていて、インド社会の縮図になっているんだけど、映画ではそのあたりをバッサリと簡略化。

主人公のひたむきな純愛を軸にしたメロドラマにまとめていて、
「ワルな兄」
「生きるために盗みもやるけど、心はピュアな弟」
「ヤクザの情婦」
といった、昔の任侠映画にでもありそうなモチーフがてんこ盛り。

でもそのメロドラマがスピーディな映像と、テンポのいい語り口のために、観客を飽きずに最後までひっぱっていって、主人公を応援したくなること間違いなし。

© 2006 FOX AND ITS RELATED ENTITIES.

まるで昭和30年代の日本みたいに、電気店のテレビにインドの往来のひとたちが鈴なりになってクイズ番組を観るシーンがあるんだけど、ここがいいんだよー。今の先進国にはなくなったエネルギーが溢れている。

そう、見所は背景となる、インドに溢れる生命力そのものなのだ。
冒頭で警官に追いかけられる幼い兄弟がスラム街を縦横無尽に走っていくシーンに目を奪われます。

カメラがパンして、彼方まで続くトタン屋根のスラム街を映しだす俯瞰図や、川で色とりどりの布を洗濯する女性たちや、大陸を横断する列車のシーンもすばらしい。

作者のヴィカス・スワラップは本業が外交官という異色の作家。
エリートながら、登場人物たちの描き方にヒューマニズムがあって、いいひとっぽさが滲み出る作風ですね。
おそらくインド社会の問題に直面してきて、思うところがあったのではないかと推察できます。

孤児の少年がつぎつぎと過酷な運命に巻きこまれる展開は、まさしく現代の「オリバー・ツイスト」

貧富の差が激しくて、生きるのに必死な社会のようすは、チャールズ・ディケンズが描いた19世紀のイギリスと変わらない。

それでも主人公が逆境にめげず、たくましく生きていくバイタリティと、ピュアな恋心が、爽やかな感動を呼んでくれます。
タイトルロールのボリウッド映画なダンスシーンも楽しくて、いい気分になって映画館を出たいひとにお勧めよー!

「でも再会した幼なじみの少女がブスになっていたら、主人公はどうしていたのか?」
とか、
「組長の情婦だったオンナがフツーに暮らせるものなのか?」
といった心によぎるツッコミは、とりあえず無視ということで(笑)

ところでこの小説、日本でベストセラーにはなっていないようなんだけど、なぜなんだろう?
わかんねーな、おもしろい小説なのに。

読みやすくて、エンタメとしてよくできている。
貧富の差や社会の問題についても考えさせてくれるし、ヒューマニティに溢れている。
さらに読んだあとに、生きることに希望を与えてくれる。
ほらね、ジュブナイルにぴったりの本でしょう。

インド社会の悲惨な現実が描かれていても、ケータイ小説ほど露骨じゃないしね。
中高校生にぜひ読んでもらいたいものです。
ぜひとも学校推薦図書にして欲しいと思うのだが、全国の司書さん、学校の先生、どうでしょう、プリーズ!

不況の時代にぴったり度    ★★★★
子どもがかわいい度      ★★★★★

黒部エリのホームページはこちら
ブログ「エリぞうのNY通信」はこちら
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書くことが生きること。NY在住のマルチなクリエイティブティブライターです。もと少女小説家で、日本の女性ファッション誌や男性誌にトレンド情報を書き、さらにブックライター、コピーライター、エッセイ、小説まで幅広く書いています。たったひとつの特技が、書くこと。不得意なことは山ほどあり(汗)

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