セレブの小部屋

「みんながいろんな音楽を聴けば、世界は変わる」レイ・チャールズ役でオスカー候補、ジェイミー・フォックスが語る平和哲学

レイ・チャールズの伝記映画『レイ』で、実在した伝説のミュージシャンになりきったジェイミー・フォックスは、今年のアカデミー・オスカー賞の最優秀主演俳優の有力候補になっている。

「レイ・チャールズと初めて会ったとき、挨拶を交わしてすぐに、僕はピアノの前に座らされた。ブルースとかセロニアス・モンクとかを弾いたんだ。

しばらくしてレイが“なぜ間違った音符を弾いたんだい?”と聞いてきた。
僕が“分からない”と答えると、彼は言った。

“音符はいつだって君の指下にあるんだよ。ただ時間をかけて、正しい音符を打つことを確かめていけばいいのさ”ってね。

それがいま、僕の人生の教訓になっているんだ。
音符が人生なんだよ。
人生はいつでも僕の手の下にある。僕はただ、正しい鍵盤を打てるように確認していけばいいんだ、ってね」

と、インタビューに応じてくれたジェイミー・フォックスは語った。
知的な物腰、リラックスした喋り方、まったく映画で見てきたイメージとは違う男性が目の前にいた。

「僕の父親は、ジョージ・ブッシュがテキサス州知事だった当時、10年間、刑務所に入れられたんだ。
23ドル(2400円)相当の麻薬所持の疑いで、10年だよ。

投獄されたのは、僕にフットボールから、南部の紳士になることまで、僕の知っているすべてを教えてくれた男だったんだ。

ジョージ・ブッシュたちはテキサスの刑務所設備を私有所持していた。だから、囚人の数が多ければ多いほど金儲けができるという背景があったんだ」

だからか!
私はそんなジェイミー・フォックスのコメントにショックを受けた。

ジョージ・ブッシュのテキサス州知事時代、テキサスは囚人のベッド数を5万から15万5千という数に増加した。
非暴力者の囚人数を増加させたのだ。

「犯罪にタフな男」というキャッチフレーズで世間にアピールしながら、ブッシュはその裏でお金儲けをしていたのだ。

ブッシュはなぜ州知事当時、152人もの人々を殺したのだろうと、いままで不思議だった。
ジョージ・ブッシュはアメリカ史上、最高人数の死刑を執行した州知事なのだ。

無罪を訴える貧しい黒人男性が、たった一人の証言で死刑になった。
裏には、殺せば殺すほど、お金儲けにつながるといった事実があったのかもしれない。

そのくせ、ブッシュは中絶は支持しない。
産まれる前の命は女性の自由や権利を奪いとる価値があるほど尊いけれど、産まれたあとの命は犠牲になるべきもの、という彼の政治方針には、腹がたつ私だ。

地球を汚染して、野生動物の命を奪い、地球の未来を無視して、でも自分が関係する大企業を優先する方針を貫いてきた彼らたち。

本当の意味で、命の尊さを分かっていないブッシュ派を、なぜモラル的に筋が通っていると勘違いできる人たちが、アメリカにはこんなに多いのだ?

ブッシュが大統領に再選されたことに、私は怒り、落胆した。

ところが目の前のジェイミーは和やかな表情をくずさない。

もちろん彼は「世界を旅行してきたジョン・ケリー」を指示したが、ブッシュが視野の狭い政治を展開してきたのは、
「彼のせいではなく、パスポートさえ持たずに育ってしまった生い立ちのせいだ」
と、怒りではなく、理解を示すのだ。

「ハリウッド業界人のほとんどが民主党なのは、僕たちは旅行するからさ。他の文化の外国の人々と触れる機会があるからなんだ」と、彼はいう。

「音楽は最初のインターネット・コネクションさ。世界を結びつけるものだと思う。

僕が大学で音楽を専攻していたとき、そこには81カ国からの人々が集まってきていた。だから自然に、いろいろな国の文化を学んでいけたんだ。

みんながいろんな音楽を聞くようになれば、世界は変わっていくのにね。
それを、いまのアメリカがやってくれたらと願うよ。

まったく他の国の文化を知らずに突き進んでしまう大人たちは、子供たちにも世界を教えてあげられない」

そんなことをジェイミーは落ち着いて、優しい口調で語るのだ。

「それにしても、父親に対しては、なぜ、こんなことになったのかと怒りがあったさ。だけど僕は父親に手紙を書いたんだ。刑務所から出たら新しい人生を始めよう、ってね。僕はその手伝いをする、って約束したんだ」

ジェイミーはいま、3年前に出所した父親と一緒にロスアンジェルスの一軒家に住んでいる。
妹たちも同じ家に住ませているというから、結婚こそしていないけれど、立派な一家の大黒柱だ。

ジェイミーが率いる家族なら、どんな波乱があっても平和なムードなんだろうなあ。
そんなことを想像させる温和な彼。

テレビ、映画、音楽業界で、大活躍する彼の人生が、いつまでも世界に通じるハーモニーを奏でていくように祈りたい。

©2005 Yuka Azuma

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渡米は1982年。ロサンゼルスに13年在住後、ニューヨークへ。84年より映画記事を中心に雑誌等に寄稿。ハリウッド映画スターへのインタビュー歴は30年以上。訳書にマーク・デヴィッドジアク『刑事コロンボ』(角川書店)、同『刑事コロンボの秘密』(風雅書房)、フランク・サネロ『ジュリア・ロバーツ 恋する女神』(講談社)『ヴィダル・サスーン自伝』(髪書房)がある。

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