セレブの小部屋

制服姿でハリウッド・デビュー。『キル・ビル』の殺し屋、 栗山千明ちゃんのニューヨーク取材

「オンナを捨て~まァ~し~た~・・」

と、あの演歌、いまでも耳から離れない。

3日で2回も映画『キル・ビル』を観てしまったからだ。

あんなに堂々と最後の節まで演歌「修羅の花」を字幕なしで流しちゃうわ、ルーシー・ルーを日本のヤクザの姉御さんにしちゃうわ、ソニー・チバこと千葉真一には武士魂 バシバシの日本語ナレーションをさせちゃうわ、なんか、すごいハリウッド映画だった。

オタクなクエンティン・タランティーノ監督、遊び感覚で好き放題やっちゃったのねー 、という感じ。

彼は邦画『バトル・ロワイアル』の栗山千明ちゃんを観て、この作品『キル・ビル』の殺し屋女子高生役に彼女を抜擢したという。

“ゴーゴー夕張”という名の制服姿の日本の女の子。「ハーイ」と可愛い声で普通の少女みたいにクスっと笑って挨拶したかと思ったら、いきなり殺し屋の目つきになっ て、ユマ・サーマンに強攻に襲いかかる。
ひゃあ、すごいインパクトなのだ。

『キル・ビル』で初めて千明ちゃんを知った私は、実物の彼女を目の前にしたとき、
「あ、映画の姿と一緒だー!」
と、本人に告げてしまった。制服を着てなかったのに。

英語を話さない千明ちゃんだが、アメリカをはじめ世界中の雑誌からの取材を受けるため、日本での公開前にニューヨークにやってきた。それで私は彼女の通訳になった のだ。

取材をしたジャーナリストたちは、目の前のおとなしいスィートな日本の女の子が、どうやってあんな凶暴で邪悪な悪人を演じることができたのかと、不思議がって聞い てくる。

「自分が死ぬシーンは、一番楽しかった大好きなシーン」

だなんてコメントが、あどけない少女の口から飛び出すのだから、みんな大笑い。映画の怖いイメージと、可憐な花のつぼみような実際の千明ちゃんとのギャップが新鮮 だったようだ。

私も最初は、彼女のルックスが映画と同じだとか言っておきながら、実物の彼女はまったく違うタイプだってことに、すぐ気付いた。
ま、映画と同じだったら、怖いけどね。

特に2日目の早朝、彼女を目の前にしたときはビックリした。アメリカの雑誌のインタビューにノーメイクで応じた彼女。素顔は私の幼なじみの1番の親友クソちゃんに、 瓜二つだったのだ!

クソちゃんもお化粧なんてまったく必要ない奇麗な人で、その素顔が示すように、気持ちがピュアな純粋な女性だ。

「クソちゃ~ん!」と、思わず、中学時代の親友を彷佛して感激。

「え、クソ? 変な名前」だなんて、千明ちゃんには、ひかれてしまったけれど。

親友クソちゃんと同じく、千明ちゃんも頑張り屋さんだ。
それにしてもスターを人前に出す前には、こんなにスタイリストとヘアメイク係がダラダラと時間をかけるものだとは知らなかった。なにを着ても似合うし、メイクなし でもキュートな彼女なのに、あれでもない、これでもないと、洋服を取っかえ引っか え、果てしない時間が続く。彼女は言われるまま、文句なしにスタッフのみんなに協 力していた。

そして洋服がシワになるからと取材が終わるまで椅子にも座れない千明ちゃんを横に、私はというと、ひとり腰かけ、彼女を心配していた。

朝から忙しくて、ちゃんと食事もとってないよ、千明ちゃん。

千明ちゃんは偉かったな。
取材で同じ質問が続いても、初めて答えるように誠意を見せていたし、長く続いた写真撮影でも、どの瞬間でも絵にさせるような気迫を打ち出すプロだった。

彼女のハリウッド・デビュー作『キル・ビル』のアメリカ封切り日、10月10日に19歳になったばかりの彼女。これからもまっすぐ、世界に羽ばたいてほしい。

私は普段、外国記者たちとはよく一緒に映画の取材をしたりするけれど、アメリカ国内の報道陣に触れることはあまりない。

今回、千明ちゃんと一緒に行動できたおかげで、勉強になったよ。

すごいんだよ。こっちの撮影クルーは。
みんな尻出しで頑張っているんだ。

あるアメリカの雑誌のカメラマンは、シャッターを押すたび、ズボンをズリ落としていた。前かがみになってレンズを覗くと、水色のボクサー・ブリーフが丸見えになる。

流行りのファッションとして少し下着を覗かせる、なんてもんじゃない。オシリ丸々、パンツ丸見え、どう見てもファッションと言うより、風呂場シーン。

見て見ぬフリをしていたものの、オシリの付け根までズボンが下がった際には、私は思わず告知した。

「ズボンを落とさないようにね!」

すると、私の横にいたヘアメイクの男性も「これで下着をはいてなかったら最悪だよね」と、付けたした。

私も調子にのって、続ける。
「まだ、あなたの下着は洗いたてみたいだから良いけどね。もし、これが汚いパンツだったら、見たくないわよね」

それでもカメラマンは「これは僕のスタイルなんだ」と、軽く流して、撮影に没頭するのだった。

で、その日の午後には、別のアメリカの雑誌の写真撮影。
今度はヘアメイクとスタイリストのお姉さんたちが二人そろって、尻出しだった。

撮影中、千明ちゃんが違うポーズをするたび、パンツ姿のヘアメイクさんが前かがみになってヘアを直すのだが、そのたびにお尻の割れ目がコンニチワしてしまうのだ。

スタイリストのお姉さんはシースルーのドレス姿で、Tバックのパンティがセクシーで…。

あ、でも千明ちゃんは仕事に専念していたから、そんなオシリの裂け目なんてモンには目もくれてなかったけどね。

千明ちゃんは『キル・ビル』のニューヨーク・プレミアのアフター・パーティで、たくさんの関係者たちから演技を褒められていた。

ルーシー・リューの弟まで、「僕と一緒に写真を撮ってください」だなんて、可愛い千明ちゃんに頼みにきたりして。

それにしても、いつもは取材する側の私が、今回だけは千明ちゃんのお付きになって取材される側に回ったのだから、その舞台裏は面白かった。

いつもプレミアではレッドカーペットの横に端寄せられる私が、今回ばかりは、カメラ・フラッシュが光るレッドカーペットを歩いたのだ! 気分はスター!? 私のプ レミア・デビュー。

可憐な微笑みを浮かべてカメラマンの前でポーズする千明ちゃんの後ろには、背後 霊のように佇む私の姿も写真に収められている。

へへッ!

©2003 Yuka Azuma

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渡米は1982年。ロサンゼルスに13年在住後、ニューヨークへ。84年より映画記事を中心に雑誌等に寄稿。ハリウッド映画スターへのインタビュー歴は30年以上。訳書にマーク・デヴィッドジアク『刑事コロンボ』(角川書店)、同『刑事コロンボの秘密』(風雅書房)、フランク・サネロ『ジュリア・ロバーツ 恋する女神』(講談社)『ヴィダル・サスーン自伝』(髪書房)がある。

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