セレブの小部屋

マイケル・ダグラスにとって、仕事よりも大切なもの

マイケル・ダグラスに、 私は母の格言を伝えた。

「死際に男が後悔するのは”もっと家族と一緒に過ごせばよかった”ということで、誰も”もっと働けばよかった”とは言わないって、うちの母が言っていたわ」

マイケルは「それは、まったくの真実だ」と頷いた。

女優キャサリン・ゼタ・ジョーンズとの間に2歳の息子がいて、二人めの赤ちゃんが産まれたばかりの彼。その娘のへその尾を自分で切ったと誇らしげに語るマイケルは、別の女性との間にできた25歳の息子を含む、計3人の子供全員のお産に立ち合ったという。

「最初の息子キャメロンが産まれたときは、彼の母親もまだ親になる準備ができていなかったし、僕も仕事に夢中だった。仕事に専念するほうが重要だったから、あまり息子のそばにいてあげられなかった。
でもいまは、仕事より家族のほうが大切だと分かっている。なによりも家庭を優先させているんだ」

仕事よりも愛妻と築く家庭のほうが、うんと大事だと言い切る彼。

なんかマイケル、最近、奥さんの尻に敷かれまくってる雰囲気、漂ってるなあ、と感じてたのだけど、実際、会ってみても、彼はその雰囲気プンプン。
うん、いいじゃない、幸せそうで。

「結婚式は花嫁がやりたい方法でやるべきだと思う。大切なのは、花嫁がハッピーになれる結婚式であること。僕たちの結婚式も、キャサリンの思い通りのものした。キャサリンがハッピーなら、僕もハッピーなんだ。盛大な結婚式になったから、僕はその費用をだせる立場で良かった」

ハイ、ハイ、あなたのおっしゃる通りです。

家に帰ってから、会ったばかりのマイケル・ダグラスは来年には60歳を迎える年だったと知り、改めてびっくりした私だ。どうりで、

「キャサリンの父親は、僕より2歳年下なんだ。僕は義父のことを”ビック・ダディ”と呼ぶんだよ」

と、笑ってたわけだ。
構わない、構わない。そんな年の差なんて。実際、彼は本当に若々しいし、優しくて、なんでもサポートしてくれるダンナなんだから、キャサリンは幸せ者だ。

「まさかこの年で新しい家庭を築くことになるなんて想像もしていなかった」

と、語っていた彼だが、今度こそは家庭を大事にするぞと、彼の年でやり直しができるのは羨ましい気がする。

タイミングってある。
マイケルはすでにサクセスを手にしているからこそ、家庭生活を第一にしながら余裕で仕事に取り組んでいけるのかもしれない。

独身の若い時にゃあ、がむしゃらに働いてもらいたい。
でも家族が一緒にいてほしいと願うときまで、がむしゃらに働いてしまうと、死際の後悔へと至るのかもしれない。

私にしては珍しく、マイケル・ダグラスにはサインをねだった!

マイケルの父カーク・ダグラスは、仕事に没頭した人だったという。
両親はマイケルが4歳のときに離婚。母方にひきとられた彼は、父親には時折、会いに行く程度の疎遠な関係だったという。大スター俳優でもあった父は、あまりに忙しく、彼にとっては尊大すぎる存在だった。

「有名である父を観察することによって、名声をどうやって扱えば良いかということは学べた。でも自分に自信を持つことが、僕にとっては試練となったんだ。何をするんでも自信は真に大切なものなのにね。
役者としても、とても父にはかなわない、自分はダメだと思ってしまいがちだった」

と、マイケルは私に語ってくれた。
彼に自信を与えたのは、1975年映画『カッコーの巣の上で』だった。
彼が初めてプロデュースした、その映画がアカデミー・オスカー受賞の最優秀作品として絶賛されたことで、ようやく「カーク・ダグラスの息子」というカラから抜け出せたような気になったという。

それ以来、『ロマンシング・ストーン/秘宝の谷』など多くのヒット映画を制作してきた彼。主演俳優としても出演作は多い。『ウォール街』ではアカデミー・オスカーを受賞し、『ワンダー・ボーイズ』『トラフィック』などでも、その演技力は称賛を浴び続けている。

それでもだ。彼にとって、仕事は2の次なのだ。
でもそれは、5月23日に全米公開されたマイケル・ダグラスの新作コメディ『 The In-Laws』のスタッフが、みんな口を揃えて語っていたことでもあった。

花婿の父を演じるマイケルと主演共演したのは、花嫁の父を演じたアルバート・ブルック。
彼は48歳で結婚して、幼い子供たちとの家庭生活を謳歌中。それまでは仕事に没頭しなくてはならなかったから、子供を持たなかったと語っていた。

アルバートにも母の格言を伝えたら、

「男が、”もっと働くべきだった”って遺言を残すなんて想像できるかい?。それこそコメディになるぞ」

と、コメディ映画の巨匠は笑い飛ばした。

マイケルの別れた妻を演じるベテラン女優キャンディス・バーゲンは、こう語っていた。

「どっちを優先させるかなんて、私にとってはまったく難しい問題ではなかったわ。だって、私はいつも娘と一緒にいたかったから、必然的に家族が優先されたのよ」

その娘もいまや17歳で、

「そろそろ手放さなきゃならない時期なのかしら」

と、笑う彼女だった。

しっかりした家庭の基盤があってこそ、仕事にも誠意を尽くせる人間になれるのかもしれない。
案外、私生活が寂しくて、つまらない仕事をしている奴に限って、仕事の鬼になりがちだったりするのかも。

それにしても、この日、私が会った『The In-Laws』の映画スタッフたちがみんな、仕事より家族を優先していると口を揃えていたのにはビックリした。
それをダンナに報告すると「当たり前だよ。だれも仕事が一番だとは言えないよ」と、大笑いされた。

「でも“軍隊が一番、自分の家族はその次”と言い放った軍曹もいたわよ」

と、『ワンス・アンド・フォーエバー(原題:We Were Soldiers)』でメル・ギブソンが主演した実在人物ムーア中佐とのインタビューを思い出すと、「軍人は別だ」と説明された。
そういえば、そんなムーア中佐の言葉に、世界各国からのジャーナリストたちは驚異を示して「彼は我々とは違う世界に住む男だ」と、眉をひそめていた。
私も、彼の子供は不幸だなと思った。

でも実際問題として、家族を養うために精一杯、多くの時間を費やして働かなくてはならない一般庶民は苦しいところ。

マイケルは言っていた。

「幸い僕たちの子供たちは、経済的には何の不自由もなく裕福な立場に置かれることになる。だからこそ彼らには慈悲をもって、この地球に恩返しができる、この地球に何かを与えられる良い人間に育ってほしいと願うだけだ」

そんなふうに言い切れるお金持ちもいるんだなあ。

子供にとっては、親と一緒に過ごす時間のほうが、お金よりもうんと貴重だと信じる私だけど、両方あるのも悪くないな、と感じながら彼の話を聞いていた。

思えば、この私があのマイケル・ダグラスと二人きりで、ホテル部屋で向かい合って話していたなんて信じられないような気もする。
『チャイナ・シンドローム』『危険な情事』『氷の微笑』と、昔から映画で見てきた顔がいまや私の目の前にあって、いちいち私の質問に反応してくれるのが、なんだか不思議な気もした。
私は彼の声が大好きで、その声で反応してもらったのも感慨深かった。
でも、なんの緊張感もなくて、みんな同じ人間なんだなあと、しみじみ感じながら楽しいときをすごせたのだ。

彼がお金持ちであろうと、有名であろうと、スターであろうと、マイケルと話していると、本当になんの違和感も湧いてこない。

なんなんだろう、この人の庶民的なアピール。
やっぱりそれは、奥さんの尻に敷かれている男の安堵感かな。

ひと昔前はセックス好きでアブナイ風味たっぶりだった彼も、いまやイメージが変わって平和なり。

©2003 Yuka Azuma

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渡米は1982年。ロサンゼルスに13年在住後、ニューヨークへ。84年より映画記事を中心に雑誌等に寄稿。ハリウッド映画スターへのインタビュー歴は30年以上。訳書にマーク・デヴィッドジアク『刑事コロンボ』(角川書店)、同『刑事コロンボの秘密』(風雅書房)、フランク・サネロ『ジュリア・ロバーツ 恋する女神』(講談社)『ヴィダル・サスーン自伝』(髪書房)がある。

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