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がーん、カッコよすぎるぜ!『マトリックス・リローデッド』

ざーん! 「マトリックス・リローデッド」がついに全米公開、週末に699万1010ドルの売上げを記録した。 さっそく行ってきましたよ、2時間ならびで! いやあ、ウォシャウスキー兄弟、やってくれますね。 あれだけマネッこ映画が作られたにもかかわらず、やはり本家本元は違うね。 ちくしょう、カッコよすぎるぜ!

ざーん! 「マトリックス・リローデッド」がついに全米公開、週末に699万1010ドルの売上げを記録した。
さっそく行ってきましたよ、2時間ならびで!

いやあ、ウォシャウスキー兄弟、やってくれますね。
あれだけマネッこ映画が作られたにもかかわらず、やはり本家本元は違うね。
ちくしょう、カッコよすぎるぜ!

SFXはまたも目の玉が転げ出るレベル。
100人のエージェント・スミスと闘うネオだとか、高速道路でのチェイスだとかもう目がくるくるです。
さらに今回はモーフィアスのアクションシーンも満載だし、新キャラのジェイダ「ニオベ」ピンケットもカッコよし。

ただしここでは肝心のBullet Timeやらデザインやらには触れません。
SFXだの元ネタだのについては詳しい人が語るべきで、シロートの私としては米国在住らしいテーマを選んでみようかと。それはなにかといえば、

「SF映画と、わたくしたち有色人種について」

という、なんだかすごい命題のことなのよ。
本当にすごい内容かと期待されたら困るので、まあ、ぐっと肩の力をぬいて、撫で肩になってから読んでちょう。

ええと、アメリカに「スタートレック」という長寿のSF番組があるのは、ご存じでしょう。

これを観ていると「スタートレックの法則」ともいうべき、独特の人種配分があるのですよ。
スタトレでは10人くらいの主要キャストがいるとして、4~5人が白人、3人くらいが黒人かラティーノ、1人がアジア人、異星人が1~2人くらいの割合なんですな。
これがどうも全米的に納得のいく(あるいは政治的に正しい)割合らしい。

つまりアジア人ってのは、異星人と同じパーセンテージであるわけだ。

それでも中国だの日本だの韓国だのは優遇されているほうで、インドやタイやフィリピンなどの東南アジア系はまず見かけないし、アラブ系にいたってはテレビにすら出てこない。
スタトレに「モハメッド」という役名のアラブ系クルーが出てきた時こそ、本当の意味で米国とアラブ諸国の対話が始まると思うのだが、どうかね?

さて話は「リローデッド」における世界設定につて。

マトリックスが支配する世界では、ネオが暮らしていたのはいわゆる典型的なホワイトカラーの環境。
ところが「リローデッド」で全貌をあらわす地下世界、ザイオンでは、かなり有色人種のパーセンテージが高いのである。

これが皮膚感覚としてよーくわかる。
アップタウンに出かけたり、高層ビルのオフィスに行ったりすると、全体が白っぽいんだね。
ところがダウンタウンに行くにつれて、だんだん色が濃くなってくる。
ことに地下鉄に乗っていると、われわれ東洋人も含めて、車内が茶色っぽいのよ。
地下世界はブラウン(笑)

ちなみにザイオンの山というのは聖書に出てくる地名で、ソロモンが神殿をたてた聖なる山のこと。
日本語の聖書では「シオン」(注1)と表記されている、エルサレムの古名です。

これはたいへん象徴的な命名で、救い主イエスのエルサレム入城(注2)というのが、ザイオンを訪れるネオのメタファーになっているわけですな。

そして「支配からの解放を待ちわびる」という意味から、ザイオンという地名は、黒人の信仰においてもかなり重要になっているよう。

ブラック音楽好きなら、ボブ・マーリーの「Iron Lion Zion」(アイアン・ライオン・ザイオン)や「Zion Train」(ザイオン・トレイン)とか、ローリン・ヒルが息子に唄った「To Zion」(トゥ・ザイオン)といった曲で、その名を聞いたことがあるのでは?

というわけで、地下世界のザイオンがサードワールド的というのか、開発途上国的というのか、国連的というのか、有色人種のパーセンテージが高いあたり、非常にリアルな感じがするのよ。

それでいえば「スターウォーズ」は、白すぎるよね。
あまりに白人至上主義的すぎる。
ジェダイのなかに、サミュエル・L・ジャクソンがいちおうアファーマティブ・アクション(差別是正措置)として入っています、みたいな言い訳じみたキャスティングがまた気にくわない。
だったらいっそ徹底的に白人だけのキャストにして、オレたち有色人種のマーケットを当てにするなよ、といいたくなるよ。
世界の子供たちに堂々と人種差別を見せつけて、これが世界の真実だ、わかっておけといってやりゃあ、いいじゃんか。

あ、でもヨーダがいちおう東洋人なのか?
宮沢元総理の友情出演ってことで。

つまり露骨にいってしまえば、スタウォーでは、ふつうの映画で黒人やアジア人がやる役まわりを、異星人やロボットが担っているから、有色人種の俳優はいらないともいえるわけです。

で、このあたりの人種感覚がもうルーカスは徹底的に古いんじゃないかって気がするんだな。
もはや現実に追いついていないよね。

だいたいあのダサいラブシーンはどうしようもないだろうよ。
あんなつまんねえラブシーン入れるなよ。
どうすんだよ、ルーカス先生。
あんな退屈だったら、誰も次作を観ないじゃねえかよ。

対して「リローデッド」はさすがR指定。
全裸のベッドシーンも楽しめますことよ。
今回はネオとトリニティの愛が物語の軸になっているだけあって、二人のメイクラブシーンまでてんこ盛り。
それもかなりしつこく、えんえんと、正常位で。

これが長すぎてかったるいのだが、いままでSF映画では、まともなセックスシーンがなかったので画期的といえるかも。

さて、ここで物語の構造に目をむけると、マトリックスの基本コンセプトから、誰しもフィリップ・K・ディックを想起するはず。

ディックの小説における現実と仮想現実、自分という存在に対する不信感、現象に対する懐疑といったテーマは、その後のSF映画に多大な影響を残してきたのはご存じの通り。

ウォシャウスキー兄弟はどう観てもディック・ファンだし、いかにもオタクらしく、前述のように思わせぶりなネーミングや、聖書や神話からとってきた記号をちりばめている(注3)

まあ、このあたりがゲーム世代のガキむけといえばガキむけではあるし、記号が満載しているわりに深いことをいってないので、映画評論家にはいまいち評判がよろしくないところ。
NEW YORKマガジンの映画評でも「薄っぺら」と批評されていました。
しかしSF映画にそこまでの深みを求めてどうする?
それは文学の領域だろう。

記号は記号として愉しめればいいわけで、私が「リローデッド」を観ながら、強烈に思い出したのは、サイバーパンクの草分けである、ウィリアム・ギブソン(注4)の世界だったのでした

(そういえば「リローデッド」では「モナリザ・オーヴァードライブ」というギブソンの著書を題名にした曲をサントラに使用)

ギブソンの「ニューロマンサー」という小説が、日本で評判になったのが、もう20年近く前だったですかね。
そりゃもう衝撃的だったよね。
脳にチップを埋め込むとか、日本の千葉シティが舞台になっているとか、ミラーサングラスをつけた強いヒロインが出てくるとか、ドレッドヘアの黒人オペレータが出てくるとか、当時は読んで「すげえカッコいいじゃん」とぶっとんだ覚えがある。

そのあとディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」を映画化した「ブレード・ランナー」が公開されて、アジア的な汚い街で、ハッカーやデコーダーやアンドロイドやハンターが活躍するというサイバーパンクな世界観が確立したといえる。

おかげで、それ以降サイバーとアジアという記号は切っても切れない関係になるわけですが、今回私の心を打ったキャラは、ずばり「キイ・メイカー」。

(ここから先ちょいとネタばれなので、読みたくない人は飛ばしてね)

マトリックスの鍵をにぎるキイ・メイカー。
そりゃあ当然、ここで東洋人が登場するよなあ、と納得する。
日本のアニメから影響を受けてきたマトリックスなら、アジアという記号はどうしたって出さないわけにはいかないだろう。

オタクや秋葉原やマンガやアニメやテレビゲームが世界におよぼしてきた影響というものがなにかしみじみと感慨深かったですね。

とどのつまり日本のオタクってのは、日本の銀行や官僚より、世界に通用する力があったってことだな。

どんな国でも文化というのは、社会の中心にいるエリートからではなくて、つねに周辺部から生まれてくるわけですが、これだけ日本経済がだめになってみると、つくづくわかるね。
輸出するなら、やっぱり文化がいちばん保ちがいいよ。

あ、ところで映画が終わってもすぐには立たないで下さいね。
クレジットのあとで「レボリューションズ」の予告編が流れます。

これを観なくちゃウソだろの必見度 ★★★★★

注1)聖書では、エルサレム市民を「シオンの娘」と呼びあらわしている。
ユダヤ人によるイスラエル国家支持を「シオニズム」というのは、ここから。
日本では、千石イエスのおっちゃんが率いた「シオンの娘」のほうが有名。

注2)イエスがロバに乗って、エルサレムに入城したという故事。教会歴では、エルサレム入城からイエスの受難が始まる、という数えかたをする。この解釈でいけば、ネオがザイオンに来たときから、ネオの受難が始まると考えられる。
「マトリックス」では救世主の死と復活という、きわめて聖書的なモチーフが使われたが、「リローデッド」においても、イエスが死者を蘇らせる「ラザロの復活」に近いモチーフが使われている。

注3)ラリーは1965年6月21日、アンディは1967年12月29日、ともにイリノイ州生まれ。
ちなみにウォシャオウスキー兄弟は、米国でも今回のプロモで一切マスコミに語っていない。
ファンたちにあれこれと解釈させたがる、オタクの鑑といえましょう。

注4)ウィリアム・ギブソン。1948年生まれ。84年『ニューロマンサー』でヒューゴ賞、ネビュラ賞を受賞。他に『カウントゼロ』『クローム襲撃』『モナリザ・オーヴァードライブ』『ディファレンス・エンジン』、東京を舞台にした『あいどる』などの作品がある。

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書くことが生きること。NY在住のマルチなクリエイティブティブライターです。もと少女小説家で、日本の女性ファッション誌や男性誌にトレンド情報を書き、さらにブックライター、コピーライター、エッセイ、小説まで幅広く書いています。たったひとつの特技が、書くこと。不得意なことは山ほどあり(汗)

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