映画

デブでハゲのニコラス・ケイジ責め『アダプテーション』

世の中にはたいへんポピュラーな食べ物だが、どうも自分的にはおいしくないという代物がある。私にとってのそれはモロキュウだ。キュウリが嫌いな私にとっては、モロキュウのうまさ、深淵さ、味わい、というものが理解できないのである。なんであんなものを食べたがるのか、さっぱりわからない。役者でいうと、それに当たるのがニコラス・ケイジなのである。

世の中にはたいへんポピュラーな食べ物だが、どうも自分的にはおいしくないという代物がある。

私にとってのそれはモロキュウだ。
キュウリが嫌いな私にとっては、モロキュウのうまさ、深淵さ、味わい、というものが理解できないのである。なんであんなものを食べたがるのか、さっぱりわからない。

役者でいうと、それに当たるのがニコラス・ケイジなのである。

うまい役者だと思うし、いい人そうだし、なんら不快なところも見あたらない。
しかし私にはどうしても藤田まことにしか見えないのよ。なぜハリウッドの大スターであるのか、まるで理解できない。

たしかに「Rising Arizona(邦題:赤ちゃん泥棒)」の頃の痩せていたニコラスには、なにかこうチンピラ的な魅力があったのだが、その後ハリウッドの王道になるにつれヘビー級になるにつれ、だんだんモロキュウに近づいてきた。
ウドとかズッキーニとか、うらなりのナスといったコトバも浮かんでくる。

私にとってはキュウリ科に属する役者、ニコラス・ケイジ。

平たくいえば「ニコラスたん大好き」という女性ファンの心理がよくわからんのです。あ、すいませんが、名優だから好きって理由は、この際なしね。演技のうまい脇役ならたくさんいるわけで、そのなかでニコラスがビッグスターになれたというカリスマ性について語りたいわけです。そのカリスマ的引力が、私にとってはモロキュウだと。

すると、「そんなことないですよ、ニコラスのファンは熱いですよ」といったのは、カメラマンのきくちゃんである。
なんでも友達がニコラスの大ファンなのだそうだ。

「ニコラスは、なさけない男が好きな女の子にはグッとくるタイプなんですよ。なさけない男好きは、ハマっちゃうタイプですよね」

ほほう。なーるほど。思わず膝ぽんとなった私である。
どことなく頼りない、そこはかとなく青くさいキュウリ科な味わいが、どうやらニコラスの真骨頂らしい。

そんなニコラス・ファンに捧げたい話題の作品が「Adaptation」だ。

ニコラスは、主人公のシナリオ・ライターとその双子の弟の二役。
これが腹が出たブーデでハゲで、しかもマスターベーションをする中年男という役どころ。
どうよ、キツいだろう。きみはこの試練を乗り越えられるかな?

監督は「マルコビッチの穴」の才人、スパイク・ジョーンズ。
「Adaptation」という映画の脚本を書いているシナリオ・ライターが主人公という、メタ映画になっている。

そのシナリオ・ライターが、野生のランを追う男について書かれた本を、映画化しようとadaptation(翻案脚色)するのに四苦八苦する。というのが大まかなあらすじだ。
ちなみにこのadaptation という単語には、「適応」という意味もあり、登場人物たちはみな社会にどこか適応できない欠陥のある人たち。

しかしこの際あまり粗筋はカンケイない。
導入部だけで「あ、この先この話はこうなるな」と読めてしまう映画は少なくないが、この映画はまるっきり読めないのよ。
「え、こうなっちゃうの?」とカーブを切ってストーリーは意外な展開へと進んでいくのである。
いやあ、いいね。スパイク・ジョーンズ。輝いていますね。

役者も演技巧者ばかり。ニコラスはもちろんのこと、メリル・ストリープもクリス・クーパーもうまい、うまい。脚本から監督、役者まで、気の利いた料理が並んだようで、おいしくいただける。

さてクリスといえば、ご存じ「アメリカン・ビューティ」で、ケヴィン・スペイシーと衝撃の中年男キスシーンを披露してくれた、あの役者。
なんと今回は、ナマ尻のオールヌードまで曝してくれるわよ。わお!
前歯がない役柄なのだが、これが本当に歯のないような発音で喋ってくれて、そりゃ助演男優賞とるはずだよ、という名演です。

で、クリスの役どころが、野生のランを追い求める男。
それも女房に逃げられたルーザー、すなわち社会の落伍者というわけ。金もなければ、教養もなければ、前歯もない。
だけど、メリル・ストリープ演じるところの都会のインテリ女性がつい惹かれてしまう、という感じがよく出ているのよ。
だめ男なんだけど、つい情けをかけたくなってしまう、負け犬タイプというか。
まさに「なさけない男の魅力」というやつですか?

いっぽうのニコラスはひたすら善人だがカッチョ悪い中年男という、きっつい役柄。
だめ男だが、という但し書きがつくんじゃなくて、だめ男でしかもハゲでデブで(しかもたぶん早漏)という三段責めなのである。
容赦なしのだめ男ガチンコ勝負。
なさけない男の魅力というより、なさけない男そのもの。
監督としてもハリウッドの大スターにこういう役を振るというのは監督冥利につきるだろうし、ニコラスの名演にも感服する。

しかし私がここで問いたいのが、「女性ファンとしてはどうよ?」という質問なのですね。ファン的には「さすがニコラスさま、かわいい」なのか、それとも「ニコラス、それだけはやめて」なのか。
モロキュウのファン心理としては、どうなのよ?

そういえばニッチのブリスさんはカール・アーバンという俳優のファンなのだが、その熱さたるやすごい。
カールならどんな役をやっても、まるで気にしない。
というよりB級映画に出たり、へんな役をやってこその恥辱責めってのか、悶え苦しむ先に愛が輝くようなのである。
試練を乗り越えて行き着く至福の境地、これこそが真のファン魂らしい。

とすると、「Adaptation」こそ、ニコラス・ファンにとっては試金石であるはず。
身悶えしたいファンは映画館に急げ!

ニコラス・ケイジの真性ファン踏み絵度 ★★★★★
(映画としてもむろんお薦めです)

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書くことが生きること。NY在住のマルチなクリエイティブティブライターです。もと少女小説家で、日本の女性ファッション誌や男性誌にトレンド情報を書き、さらにブックライター、コピーライター、エッセイ、小説まで幅広く書いています。たったひとつの特技が、書くこと。不得意なことは山ほどあり(汗)

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