セレブの小部屋

図太く押せ、押せ、ケイト・ウィンスレット

細いのに「痩せなきゃ」と心配している女性に会うと、ハアーッ、とタメ息ついてしまう。食糧難を乗りこえた親の世代から「食べられるうちに食べとけ」という黄金の教訓を、いつのまにか受けついだ私は、大食い女。

遠い昔、日本人男性とディナー・デートに出かけたときの話。
さて、これからメインコースだぞ、と思ったときだ。彼は「もう、お腹いっぱい」と、先に食事を終えてしまった。そして「女の子はあまり食べないほうがいいよ」というコメントまで投げそえた。
“この男とは縁なし“と悟った瞬間だった。いま思い出しても、むかつく。

こういう男が、ガリガリの女どもを敬うのだな。
名前は忘れたが日本の有名人で、どう見ても拒食症で病的に痩せているタレントが、棒のような手足を放りだして日本の雑誌のグラビアを飾っていたのには、ビックリした。痛々しいほどでも痩せていればいいわけ?

だから、ケイト・ウィンスレットが「私は自分の太い足に満足してるわ」と、堂々と言い放ったときには、「こうでなくちゃ!」と、フレー、フレーと旗を振った私である。

映画『タイタニック』でも、その役柄のためにダイエットして痩せたにもかかわらず、レオナード・ディカプリオが彼女に押しつぶされるのではないかと噂された、少々、胴太の女優。

でも今年2月号のイギリス版「GQマガジン」誌の表紙を飾ったケイトは、細い足でスレンダーだった!
じつは、このスリムな姿、コンピューター・グラフックの賜物。デジタル処理され、実際より細めにエアブラッシュされたのだ。
それに対して「私の姿を変換するとは!」と、彼女が怒りを表明したことを、マスコミが騒ぎたてたところだ。

そこでインタビューに応じてくれた彼女に真相を聞くと、
「私は怒ったわけじゃない。ただ私はあんなふうに見えないし、あんなふうに見られたいとも願っていない。それを伝えたかっただけよ」
と説明してくれた。

看板役者のイメージをよくするためにデジタル処理でクマ隠しすることは、よくあること。ただ今回の場合、ケイト自身が、表紙を飾る女性は細身でなければ、という考えに同意しなかったことから問題になったのだ。

世間で望まれているサイズに、自分の体型を変える必要はないと、つらぬく彼女。

ちょうどキャサリン・ゼダ・ジョーンズがマイケル・ダグラスとの結婚式の写真を無断で掲載した雑誌社を訴訟して「太めに映っている私の姿は、これから役をもらえにくくするほどイメージ・ダウンだ」と騒ぎたてたあとだけに、ケイトの態度は新鮮だ。

他人にどう思われるかってことに左右されない強さ。それがケイトの自信なのだし、それは、とっても素晴らしいこと。

「私には娘がいて、娘が私にとっては何よりも大切で、それに比べたら足の太さなんてたいした話題じゃないのよ」
と、手巻きタバコを慣れた手つきで巻きあげて、イップクしながら語る彼女。

そう、そうだよね!
と、彼女と同じく母であり、足太仲間でもある私は、彼女の堂々たる態度に、共感の大歓声。

「ファッション雑誌は、うちには置いてはならぬもの。だって中身は読むものもなくてカラッポじゃない。私はもっと、いいものに囲まれていたいのよ」
というケイト。

お、他にも、私との共通点があったぞ。
私もファッション雑誌なんぞ買ったことがない。自分の書いた記事が載ったりしないかぎりは無縁の仲。なぜ宣伝広告ページ見るためにお金出さなきゃならないの、って思ってしまう。
というか、私の場合は、ただ単にファッションに無頓着なだけなのだけど。

それにしても、彼女は図太い。

『乙女の祈り』で、初めて彼女をインタビューしたときも18歳とは思えないほど、しっかりした子だなと感心した。
そしていま、彼女は27歳。
『タイタニック』で世界の大スターになり、3度もアカデミー・オスカー賞にノミネートされ、母になり、離婚歴も経て、ますます骨太に、頑丈に。

いまアメリカで上映中の彼女の新作『The Life of David Gale』のアラン・パーカー監督が、
「ケイトはしょっちゅう僕に電話をかけてきては“自分しか、この役をできる女優はいない”と、主張し続けた」
と言っていた。
スタジオ側は、ケイトではなく、アメリカ女優を希望していたという。

監督から正式に、その役柄のオファーがでるまでの8、9か月は、とても長く感じられたとケイトは語る。
その間、彼女は直接、パーカー監督にアタックし続けたのだ。

「いつも枕もとに脚本を置いていて、アー、やりたいわ、って脚本を触っては、彼に電話して、まだあの役は決まってないか、私は本気でやりたいの、って口説き続けたのよ」

その役とは、ケビン・スペーシー演じる死刑囚にインタビューするジャーナリストの役柄だ。
1年に1作品だけ出演すると決めている彼女にとって、『The Life of David Gale』は、彼女が熱をこめて選択した作品だったのだ。

『The Life of David Gale』でジャーナリスト役を演じたケイト・ウィンスレット

それにしても、エリザベス女王から勲爵士に任命されたベテラン監督に直接せがみとおすとは、なんというガッツ。
それって女優のやることかい。普通はエージェントの仕事だ。
それって、ヘンだと感じなかったかって、聞いてみた。

「監督に直接電話して役をくれって頼むことは、まったくヘンだと思わなかった。私はね、ダメでもともと、って考えるのよ。
『タイタニック』のときだって、ジェームス・キャメロン監督に直接、電話して頼みこんだのよ」と、ケイト。

ハァー、あっぱれ。
欲しいものは向こうからやってくるまで待つタイプの私とは、この点、まったく違う。

「What do you have to Lose?(ダメでもともとでしょ?)」

と、彼女は繰り返す。
このタイド、大いに見習うところあり。

©2003 Yuka Azuma

 

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渡米は1982年。ロサンゼルスに13年在住後、ニューヨークへ。84年より映画記事を中心に雑誌等に寄稿。ハリウッド映画スターへのインタビュー歴は30年以上。訳書にマーク・デヴィッドジアク『刑事コロンボ』(角川書店)、同『刑事コロンボの秘密』(風雅書房)、フランク・サネロ『ジュリア・ロバーツ 恋する女神』(講談社)『ヴィダル・サスーン自伝』(髪書房)がある。

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