セレブの小部屋

猫に小判、私に“ロード・オブ・ザ・リング”

ウーン、はっきり告白してしまっても良いのだろうか。それともオタク族から石を投げられることを恐れて黙っているべきか。

これはオタク族に崇拝される神聖な大作だ。『ロード・オブ・ザ・リング』3部作シリーズ。
だけど、じつは、どーも私はバトル・シーンの多いエピックものは苦手なのだ。

なぜ、こんなに覚えにくい横文字だらけのキャラクターが複雑多彩に登場するのか。単細胞で成りたつ私の脳ミソは、男と女くっつくのか、くっつかないのか、というストーリーでなければ消化しきれない。

それに、なぜ。まだ映画も完成していないのに、取材せねばならぬのだ。
1作目もそうだったが、2002年末に封切られた2作目『二つの塔』も前評判をたてるために、その作品の編集中であった2002年9月に記者会見が開催されたのだ。
「いち早く20分のダイジェスト版が見られるなんて羨ましい限りです!」と、日本の映画配給者から言われてもねェ…。

取材の前日に、1作目『旅の仲間』のビデオを借りてお勉強した私だが、まだその深さに呆然状態。頭のなかでは、モンドールやら、サウロンやら、エレンディルやら、わけの分からない暗号のような横文字がゴチャゴチャ整理しきれずに浮かんでは消えていく。
そこに第2作の知識をどうやって、ぶちこめというのだ?

私は、主演のイライジャ・ウッドに「ロケ現場訪問じゃないのに、映画完成前にインタビューするなんて初めてで、なんかヘンな感じ」とグチたれる無礼者。

まさに“猫に小判“だ。ニャンコには理解できぬ、この作品の真の価値。
これほどの大作3部作を同時撮影するという偉業をやり遂げたピーター・ジャクソン監督には脱帽するが、やはり小判よりもトロ刺身のほうが・・・・・。
そんなワタシメには、この作品について語る権利などありませぬが、恐る恐るこっそり、この記者会見の模様を報告したい。

いちばん強烈だったのは、温泉場で履くような日本のゾウリを履いて登場したリヴ・タイラー。確かに美しい。でも、それも口を開くまでだ。

ウーン、キラキラ光る華麗なアルウェン姫なのだから、リヴ・タイラーは表にださないほうがいいのでは? と、アドバイスしたくなってしまう。率直でいいのよね。おべっか使う人よりも、こういう飾り気なしの人、好き。でも、でもねェ。

「今日はここに来る気がしなくて、何も話す気になれなくて、さっきまではすごいビッチだったのよ。でも、もうベターになったわ」
と、言う彼女にビックリ。え、これで、ましになったのって?

「不死性を失うことについて聞かれても、いま、今日、ニューヨークで、そんなことは考えられる題材じゃないわ」

って、けだるく言われてしまったら、報道員としては他に何を聞けばいいの? 映画では、愛のために限りある命を選ぼうとする劇的でロマンチックな役柄なのに。

「原作も読んでなかったし、オーデションも受けずに、いきなり電話でオファーされたの」と言うので、この作品への思い入れがどれくらいだったのかなあと興味を持った私は「簡単に役をもらったから」と、質問を切り出した。
するとリヴは「簡単に得たんじゃないわよ!」と、オカンムリになってしまった。

「いままでの私のハード・ワークがあってこそ、オファーがあったんだからッ!」

と、唇をとんがらせる彼女。
ああ、うらやましい。どんな表情をしても美女は得だ。怒られても、あらら、どうしましょ、って、まだ微笑ましくリヴの顔に見入っている情けない私。
それにしても、これは5人のジャーナリストと同席のインタビューだったので、彼女とは一対一でなくて良かったあ、と内心ホッとする思い。

いっぽう困ったのは、エオウィン役のミランダ・オットー。

リヴとは違っていろんな情報をたくさん話してくれる人なので、グループ・インタビューのあと、独占インタビューの機会も与えられてしまった私は、もう他になにも聞くことがない。ホテルの密室で、彼女と私のふたりだけの、もったいない時間。そもそも私はその日まで、この女優さんの名前すら耳にしたことがなかったのだ。

じつはインタビュー直前に上映されたダイジェスト版の試写にさえ、私は遅れて駆け込んだ。だから、彼女はどこに出てたんだろうか、というハテナ・マークをいろいろ形を変えて質問にしている状態。

ああ、本当に、次回『ロード・オブ・ザ・リング』3作目のインタビュー小判は、私のようなシロウトにまかぬよう、お気をつけなされ。

でも、無知な私だったこそ、楽しめた会見ではあった。
ドワーフ族のギムリだからと、小人を想像していたら、目の前にはドカーンと長身の大男俳優が現れて、オヨヨーと、肝を抜かしたり。
子供だと思い込んでいたイライジャ・ウッドが、うっすらとヒゲをはやした大人の男性だったということを発見(?)したり。

「お、このイケてる黒髪男は誰?」と、目の保養ボーナスもあり。
エオメル役のカール・アーバンだった。

端正な顔。トム・クルーズに似てるけれど、彼よりも素朴な雰囲気がいい。目に力があって、いつか大スターになりそうな雰囲気いっぱい。報道陣にもひとりひとり彼のほうから握手を求めてきて、ちゃんと目を見て挨拶。好感度バッチリだ。

「撮影開始から6か月もたっていたんだ。もう僕はダメかと思っていたら、いきなり役柄オファーの電話を受けてビックリ、ジャンプして大喜びしたよ。これ以上、ビガーな仕事なんて他にないさ!。タダでだって、この仕事はやっていた!
役者になって10年、いまはこのときをエンジョイするだけだ」
と、純粋な喜びようで、この作品の酔い醒めやらぬカールだ。

ゆか先生にささぐ(または押しつける)(笑)こんなもんでよろしかったでしょうか。 ブリスのラブたん、カール・アーバンですわ。おおさめあれ。

「いきなり300人もの騎兵たちを起用したバトル・シーンから、僕の撮影は始まった。僕の最初のシーンだ、ヘマしちゃならないぞ、と心臓がすごい早さでドキドキしていたのに、ふとモニターを覗くとイアン・マッケランとリヴ・タイラーが撮影を見にやってきてるじゃないか!。
ただでさえ初めての撮影でナーバスになっているところに、これ以上プレッシャーを与えないでくれよ、って思ったよ」
と、彼は笑った。

ピーター・ジャクソン監督を尊敬するコメントもいっぱい飛び出してきて、それはそれは忠実な家来ぶり。上司なら、そんな彼をうんとこ可愛がってあげたくなるだろうな。でもカールに限らず、 監督はみんなから敬われていた。

本年度のアカデミー賞で、最優秀作品にノミネートされた『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』。なのに、最優秀監督にはピーター・ジャクソンが選出されなかったという不思議な現象。
キャストたちは、膨大な労働力と精密さを注ぎ込んだオタクな彼こそ、監督賞に賞賛されるべきだと唱えていたのに。

でも、どうも終結作『王の帰還』への期待のほうが大きいらしい。
面白かったのは、2作目『二つの塔』の中間報告のための記者会見だったのに、みんな「3作目はスゴイぞ」と、口をすべらせていたこと。特に、サム(ショーン・アスティン)の活躍が楽しみにされていた。

イライジャ・ウッドなんて、3作目でアカデミー賞・主演男優部門にノミネートされるだろうと、業界では早くからウワサがたっていた。
それを当の本人に言うと、彼は目を丸くして驚いた。

「いったい誰がそんなことを言っているの!?」

2作目の完成前に、そんなことを耳にしたイライジャは「それはクレイジーだ」と頬を紅潮させたが、そのウワサの真相は2004年早春まで、おあずけだ。

(c) 2003 Yuka Azuma

 

Advertisements

渡米は1982年。ロサンゼルスに13年在住後、ニューヨークへ。84年より映画記事を中心に雑誌等に寄稿。ハリウッド映画スターへのインタビュー歴は30年以上。訳書にマーク・デヴィッドジアク『刑事コロンボ』(角川書店)、同『刑事コロンボの秘密』(風雅書房)、フランク・サネロ『ジュリア・ロバーツ 恋する女神』(講談社)『ヴィダル・サスーン自伝』(髪書房)がある。

0 comments on “猫に小判、私に“ロード・オブ・ザ・リング”

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Google+ photo

You are commenting using your Google+ account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

%d bloggers like this: