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同性婚合法化で全米がレインボーになった本当の意味

On: 特出しコラム とびこみくん

2015年6月26日。

ニュースでもご存知のようにアメリカで、同性婚が最高裁判所により合法と見なされました。

今までは州によって判断がゆだねられていた同性婚が、最高裁判所の判決により、全米的に全ての州で絶対的な権利として認められるようになった、ということ。

これで、ゲイカップルにも異性婚カップルに与えられる結婚による「特権」が平等に与えられることになり、同性婚に関する「法的」争いは、勝利という2文字の元に、幕を閉じることになりました。

最高裁がこの決断を下した日は金曜日で、その日の夜は、キリスト教に基づく保守的なアメリカ社会で、今までは考えられなかった「ホワイトハウス」がレインボーカラーでライトアップされるという、異例なイヴェントが行われたわけです。

これは、かつてから同性婚を認める見解を示していたオバマ政権による歓迎の意であり、オバマ大統領は「これは全てのアメリカ人にとっての勝利である」と声明を発表しました。

FBでも、自分のプロフィール写真の上にレインボーカラーを合わせてこの歴史的瞬間を祝福する動きがあったようです。

私は個人的に、同性婚に関するアメリカ(特にノースカロライナ州)の動きを、全米各州でちらほらと、法的審査が本格的に開始されてからこの3年間、記事にしていたこともあり、やはり人一倍感慨深いものがありました

長いと言えば長いですが、3年でこのように全米が青一色(同性婚が合法の州を示す色)になるとは、当時は考えても見ませんでしたから。

NC州でアメンドメント1が可決された(2012年)
http://xn--eckn5b2dq8n1a1j.com/?p=576
http://xn--eckn5b2dq8n1a1j.com/?p=205

NC州で同性婚が合法化された(2014年)
http://xn--eckn5b2dq8n1a1j.com/?p=8085

日本では、なぜ、全米が大騒ぎしているのか?FBで多くのプロフィール写真がどうしてレインボーになっていたのか?よく理解しないまま、このお祭り騒ぎに便乗していた人なども多かったようです。

そのような記事を読んで、やや違和感を感じたので「同性婚が最高裁で合法化された」という意味が具体的にどういうことなのか、ここで私なりに記しておこうと思います。

なぜレインボーカラーはゲイピープルの象徴なのか、という記事(2014年)
http://xn--eckn5b2dq8n1a1j.com/?p=7966

まず、一番大切なことは何かと言うと、今回の最高裁可決は、文字通り同性愛者に対する「法的権利獲得」の勝利だということ。

ちょっと前までは、他人種/国籍間での結婚がアメリカでも認められていなかったという事実に驚きましたが、全ての人間が愛する人と結婚という法的手段を選択し、結婚すると必然的についてくる様々な法的権利が受けられるべきなのに、結婚相手によってそれが不可とされていたことは、やはりどう考えても、人間を平等に扱わない「違法」であるとしか思えません。

その理不尽な法律が、とうとう全米でもくつがえされたということです。

こういう時には必ずと言って「同性愛」についての固定観念的道徳論/宗教論を唱える人などが出てくるようですが、この際、同性婚や同性愛についての個人的見解(感情)は関係ないのです。

同性婚の合法化は、人間の平等な権利についての問題であると思うからです。

個人の宗教や思想などがどうであれ、最高組織である「国」が、そこで暮らす我々全ての人に対する婚姻の「権利」と付随する特権の譲与を認めたということで、該当する人たちの基本的人権が保障されたということです。

性的指向は、個人的嗜好同様、あくまでも個人の問題であり、人がとやかく言うことではないと、私は思います。
どういう人が恋愛対象となり、どういうセックスを好むかなんて、個人の自由ですからね(でもって、私は、セックスは、相手を痛めたり傷つけたりしない限り、なんでもありだと思っているし、笑)。

同性婚や同性愛に対する考えは、思想や宗教の自由がある以上、これからもずっと議論が続くのだと思います。

そのような個人的意見は今後も並行線を辿ると思われますが、今回の同性婚合法化で明らかに変化が生じることと言えば、例えば、

1)同性婚カップルがジョイントでタックスリターンをファイルできる

  • シングルとして二人分のファイルをしなくても済む=節税&経費節約
  • 配偶者の様々な利益が受けられる
  • 扶養家族が申請できる=児童手当などで税金が戻って来る

同性婚とタックスリターンについての記事(2014年)
http://xn--eckn5b2dq8n1a1j.com/?p=7189

2)健康保険の扶養家族にできる

  • 家族として、保険の加入ができるようになる
  • 病院など医療機関での個人情報(病状説明など)をシェアできる
    (男女のカップルだと証明なしでも夫婦と見なされる場合が多い中、逆にゲイカップルの場合は、血縁兄弟/姉妹だと偽りを強いられて生活していた人もいるそうです。これからは、そのような偽りの生活から免れるようになる、ということ)

3)遺産相続ができる

  • 配偶者として相続税の免除などが受けられる

などなど。

私がアメリカで結婚して、初めて夫婦でレンタカーをした時には、第二運転手の登録が夫婦だととても簡単に済んだということと、保険が安かった、ということを記憶しています。

その時には「(結婚して)ラッキー!」と軽く思いましたが、結婚するとそのような生活における利益が、小さいものから大きいものまで、かなりいろいろとあったんだなと気付かされます。

大体において、男女のカップルは、結婚証明書など見せなくても「夫婦です」ということができましたし(グリーンカード取得のインタビュー時以外は、誰も疑う人はいませんからね)、法的権利を求めなくとも自然と得られる利益が多かったために、むしろ、あえて結婚という法的形式にこだわらない人が増えたわけです。

離婚経験者になると、今度は、再婚における利益が、「離婚した独身者」でいた時よりも減少するパターンもあり(元配偶者からの慰謝料打ち止めや、年金受理の権利など)、再婚を選ばないという人もたちも出てきます。

つまり、異性婚者には「選択する余地」がある、ということです。

それが、ゲイカップルとなると、何をするにも色眼鏡で見られる上に「じゃあ、証明書を見せてください」となるわけで、レンタカー一つ借りる時でも、男女のカップルが何も言わずに割引を受けている時に、割高の料金を払わされ、男女のカップルが、何も考えずに「タックスターボ」などの使い易いと思われるソフトウェアで税金を申請し、夫婦割引が受けられる時に、ゲイカップルは、同性婚を認識できるソフトウェアや税理士を時間をかけて一生懸命検索し探し出さなければいけないわけです(または、諦めて「シングル」として申請するか)。

異性婚をしている人たちが思いもしないところで、同性愛者たちは、国が定めた法律により、不平等で暮らしにくい社会と毎日常に戦っていたのです。

私の友人には、ゲイカップルとして同性婚をしている人たちが結構います。

その中の一組は、ノースカロライナで同性婚が認められる前に他州で合法的に結婚し、ノースカロライナで子どもをもうけ、家族仲良く生活をしています。

昨年、ノースカロライナが同性婚を認めた時には夫婦(二人ともがワイフ)で喜び合っていたのがとても印象的でしたが、それでもその時点では、医学的に授かった彼女たちの子どもは、法的に自分たちの子どもであるとは認められず「出生証明書」さえもらえない、という状態でした。

友人は、配偶者である「ワイフ」の卵子を医学的に取り出して、自分の子宮の中でドナーバンクから得た精子と組み合わせて双子を授かりました。

つまり、妊娠した彼女は法的には「代理母」で、彼女のワイフは、「卵子提供者(ドナー)」です。
代理母は、出産と同時に親権を放棄しなければいけません。

ノースカロライナでの同性婚は認められても、国で認められない限り、彼女たちは、自分たちの子どもを「家族」として法的に守る権利がないという状態にあったそうです。

いろいろ弁護士をつけて、お金をかけて取り組んでいたようですが、それが、今回の最高裁での判決により、ようやく法的にも堂々と家族となることができたわけです。

話を聞いて、かなりややこしい事情だなとは思いましたが、彼女たちのケースにおいても、今回の最高裁の決断は、正しいものだと思えてなりません。

結婚は男女間のものである、という思想は、アダムとイブの時代にさかのぼるわけで、保守的なキリスト教徒にとっては、なかなか受け入れられないことかもしれません。

罪を犯した人間(囚人)でも、結婚する権利はあるわけで、それを考えると、息をする人間なら誰でもが、少なくとも「法的」には絶対的平等が与えられるべきだと信じます。

社会や個人から差別や偏見を取り除くことには時間がかかるにしても…

そういう考えである私は、この社会は長い時間をかけながらも、少しずつ正しい方向へとしっかり導かれていると感じます。

そして、そのような社会の変化は、私たち人間、一人一人の手によるものだと思わせてくれるアメリカ社会を称えずにはいられません。

まだまだ問題の多いアメリカですが、一点の光は常に輝いているように思います。


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