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No.6 テレビで観るブロードウェイのお祭り! 2015年トニー賞授賞式ウォッチング

On: アメリカのテレビ番組ガイド 観るっきゃナイト!

6月7日、今年で69回目となるトニー賞の授賞式が、ニューヨークのラジオ・シティ・ミュージックホールで開催された。

司会者は、ブロードウェイの人気者、クリスティン・チェノウェスアラン・カミング

さすが舞台で活躍するエンターテイナーのお二人。
ブロードウェイのお祭りにふさわしく、舞台上の早変わりのごとく衣装もとっかえひっかえ。

ジョークたっぷり、歌声たっぷり、幕間劇たっぷりで授賞式を盛り上げてくれた

タキシードジャケットを着て美しい脚を見せる、ジュディー・ガーランド風の装いのチェノウェスと、バミューダパンツをはいて毛むくじゃらのスネを見せるカミングのコンビのオープニングナンバーも、派手さはないものの、業界ネタにあふれていて楽しい

特に、映画『Finding Neverland』の舞台ミュージカル化でブロードウェイに進出したものの、批評家の評判も悪く、トニー賞レースにも絡めなかった映画界の辣腕プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインをいじっては、彼からちしゃ猫のような笑みを引き出す場面が最高だ。

 

このオープニングから、ミュージカル部門の作品賞候補『Something Rotten!』の紹介へとつながるのだが、ミュージカルへの自虐的オマージュとパロディにあふれた作品中のナンバー「A Musical」が、授賞式のオープニングにぴったりはまってこれまた楽しい。

わたしなど、ついテレビの前で脚を振り上げラインダンスを踊ったくらいだ。

 

そのほかにも『王様と私』『オン・ザ・タウン』『巴里のアメリカ人』『Fun Home』などなど、ノミネート作品が次々と紹介される。

授賞式というのは、どの作品がどの部門で受賞するかワクワクしながら見るのが楽しいが、トニー賞授賞式の場合はライブパフォーマンスを見るのが特に楽しい

なんせ、実際の舞台と同じ衣装、同じセット、同じ照明で、作品の一部をちらりと見せてもらえるのだ。

テレビを見ているこちらは、「あれを見に行きたい!」と、一種の旅行計画モードに切り替わる。

今回のパフォーマンスの中でも、渡辺 謙のノミネートで日本でも注目を浴びた『王様と私』は、主演女優、主演男優、助演女優のそれぞれの魅力をたっぷりと見せつけるメドレー仕立てがうまい。

 

渡辺 謙のセクシーな手つきを見たら、彼の英語をどうのこうのいうのはバカらしく思えてくるのではないか?

この作品で6度目のノミネートとなったケリー・オハラが、とうとうトニー賞を受賞したのも嬉しく、「自分がやっていることがただ大好きなので、賞は必要なかった」という彼女の受賞スピーチと、踊りながらの退場に笑みがこぼれる。

82歳でブロードウェイの主役をはるチタ・リヴェラか、はたまた司会のクリスティン・チェノウェスが受賞する可能性も高かったのだが、オハラの受賞には誰もが納得のはずだ。

 

納得といえば、同じく『王様と私』ルーシー・アン・マイルズの受賞も納得だ。

彼女が演じる王妃ティアンを見ると、ティアンという女性について考えさせられると言うが、壇上でiPhoneに保存されたスピーチ原稿を読むマイルズを見ると、彼女の人柄についてつい考えてしまう。(あの表情!)

 

その他、主演男優賞にノミネートされたトニー・ヤズベクの魅力が溢れる『On the Town』も、稀代の振付家、クリストファー・ウィールドンが演出・振付した『巴里のアメリカ人』もメドレー仕立ての作品紹介がうまい。

 

 

だが、パフォーマンスのハイライトといえば、ミュージカル作品賞を受賞した『Fun Home』「Ring of Keys」だろう。

『Fun Home』アリソン・ベクデルの自伝的グラフィック・ノベルをもとにしたミュージカルで、ゲイとして、文学を愛する者としてお互いに共感を覚えながらもすれ違いを続けた父と娘アリソンの喪失と再生を描いた、2013年にオフ・ブロードウェイで上演され評判となった作品だ。

ここからミュージカルナンバーを披露するのは、子供時代のアリソンを演じて助演女優賞にノミネートされたシドニー・ルーカス。(ちなみに、大人のアリソンと、その中間のアリソンを別の2人の役者が演じ、それぞれトニー賞にノミネートされた。)

 

トニー賞でちょっぴり残念なのは、生パフォーマンスでの作品紹介がミュージカル作品だけで、ストレートプレイは舞台の録画クリップになること。

さらに残念なのは、一部の賞が、テレビCM中、あるいはテレビ放映が始まる前にアナウンスされること。

授賞式がのびればそれだけテレビ放映時間ものびるアカデミー賞とは違い、いつもきっちり3時間の放映時間を守るトニー賞授賞式は、一部の重要な賞の発表が犠牲となる。

たいてい「クリエイティブ・トニー」と題されて、テレビ放映前に発表されることが多く、舞台作品は脚本や照明、舞台美術等が重要な役割を担うだけに、これらの一部の賞がネットワークテレビできっちり放映されないことにいつもがっかりしてしまう。

しかも、今年は、この1年の間に亡くなった演劇人へのオマージュも、「早回しか?」と疑うほどのスピードで流され、名前を読むのも追いつかず、正直かなりがっくりきた。

どうせなら、外れた音で歌うジョシュ・グローバンのアップをカットして、時間調整してもらいたかったもんである。

 

時間が押したのか、授賞式の大トリ、ミュージカル作品賞を受賞した「Fun Home」のプロデューサーたちが、式のクロージングナンバーを歌うために登場したジャージーボーイズ達に、追い立てられるかのように晴れ舞台を奪われたのも少々残念。

なにはともあれ、今年のお祭りはこれにて終了。

来年のトニー賞に向けて、これから始まる新年度にどんな作品が登場するか、これまた楽しみである。

第69回トニー賞のノミニーと受賞者一覧はこちら


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Photo Credit : Theo Wargo / Getty Images