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No.79 だれもが憧れる優美な大女優ヘレン・ミレン

On: セレブの小部屋

ロシア帝国の貴族を父親とする彼女には、高尚なムードがつきまとう。

大英帝国勲章を受勲し、デイムの敬称を冠したヘレン・ミレン。
エリザベス1世、2世、シャーロット王妃と、実在の皇族に華麗に扮し、エリザベス2世を演じた『クィーン』ではアカデミー賞主演女優のオスカーに輝いた。


The Queen『クィーン』

ヘレンはさらりと笑って語ってくれた。

「あなたは“クィーンだけあって王者らしい威厳がある”とか
言われるのは、もうごめんだわ、と思ったの」

「それで、いろいろ違う役にトライするのよ。
1つのイメージや偏見で見られるのでなく、オープンでありたいから」

それで、アクション・エンターテイメント『REDレッド』と続編『RED リターンズ』では、元CIAエージェントという役どころをこなす。なんと、現在68歳の”アクションヒーロー”だ。


Red 2『RED リターンズ』 イ・ビョンホンと共演

素顔のヘレン・ミレンは、知的で、なんの気取りもない女性なので高尚というイメージではない。
どんな質問にも揚々と丁寧に答え、時には人を大笑いさせる。

「ブルース・ウィリスに少しばかりときめいていたから『REDレッド』に出演同意したというのは本当ですか」
との、とんでもない質問も、うまくかわした。

「私はブルースに恋していたの! 彼にときめいているの。
でも彼に言っちゃ、駄目よ。私の夫にも内緒よ。あ、でも夫は知っているけれどね。

それは、2種類のときめきよ。まずは典型的な意味での、トキメキ。わかるでしょ。
そして、もう一つは美学的なときめき。俳優としての彼に、女優として抱く羨望。彼はワンダフルな役者ですもの!
ええ、だから私は2種類の羨望を彼に抱いている。欲得と敬意の両方よ(笑)」


Elizabeth I『エリザベス1世 ~愛と陰謀の王宮~』

そして、ヘレン・ミレンは回りの人たちに気遣いできる優しい人でもある。

『RED リターンズ』の記者会見で、ブルース・ウィリスがトルコ反政府運動について質問された。その情勢に無知だった彼をさりげなくフォローする彼女、その助け船の出し方は見事だった。

「人々が木を倒させないと公園を占拠しているのよね。
だけど、それだけの問題ではなくて、それはトルコ政府への抵抗を意味しているのよね。

でも、そういうことに関してこういう場で私達にコメントを求めるのは、少し無理があるような気もするわ。私達は政治家ではないでしょ。それに住んでる人達にしか分からない複雑な問題は、私達には分からないことだから。

私達が何か言えば、それは簡単に広まる可能性もあるし、勘違いされる。
だから、唯一言えることがあるとすれば、ブルースがさっき言ったように、同情します、ということしかないと思うの」

彼女のおかげで、ブルースが恥をかかずにすんだことに、私はホッとした。


Helen Mirren 若き頃のヘレン・ミレン

そして、いままで私が何度かヘレン・ミレンに取材してきて、いちばん気に入った答えが、これ!   
「あなたが恐れる怖いものは何?」と聞かれたときの、彼女の答えだ。

「プラスチック! ビニール袋とかペットボトル。
ほら、ここにあるボトル。これよ」

彼女はテーブルの上に置かれたペットボトルをさした。

「なぜ、水がこの容器に入れられなければならないの?
海のことを考えただけで、ビニール類を恐れるわ」

生物分解されずにゴミとして1000年残るプラスチックやビニールのゴミ。
海に流れ、その汚染で多くの海洋生物が被害にあっている。

一回の飲用でゴミとなるペットボトルは購入しないようにと、私が日頃から気にしている環境問題に、彼女も敏感であることがとても嬉しかった。

私にとっては、演技が上手、美貌の人、貴族の出身、ということは、まったく羨望の理由にはならない。でもヘレンのように、みんなに気遣いできて世界の課題に目を向けていて優雅な人とくれば、憧れる。

インタビューのあと、「彼女はなんてグレート」と、溜め息つく記者をときに目にする。
そこの空気が変るのだ。ヘレンが真に優美な人だからーー。

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