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同級生は異邦人 No.4 中国人のビリーと一冊の本

On: Across the Universe(更新終了)

ランチタイム。
最近、中国南部出身のクラスメイト・ビリーと、広東語と日本語を教え合いながら楽しく過ごしている。

ビリーは、妹が東京の会社に勤めているので、日本に非常に興味を持っていて、自分なりに日本語を調べてきては、ふざけて私を口説こうとする。

「ワタシ・ナットクシタイ・アナタニ」

どうやら、「君の事を知りたいんだ」と言いたいらしい。ヘイ、ビリー。もしかして翻訳ソフト使っていないか!?

こんなビリーだが、彼との交流は、私に意外な発見をもたらし、ポジティブな好奇心をかき立ててくれている。

実は先月の4月、中国では相次いで反日デモがあり、日中関係についてさまざまなニュースが飛び交っていた。でも、私はそのことをとやかく語る前に、自分の歴史に関する無知を恥じてしまうところがある。

日本の歴史はもちろん学校で習ったけれど、それは「今」起きていることではないから、日本ではなく、どこか遠くで起きたことのように思っていた。そのせいか、今は人物名や年号を覚えていないうえ、歴史的事件の順番がめちゃくちゃだったりする。

今、私のいるニューヨークは、日本とは生活習慣の違いがあるし、さまざまな人種・文化が混在している。ここでは否が応でも自分が日本人であることを感じ、日本にいた頃は気付かなかった日本の良さ・悪さを客観的に考えたりもする。

そうやって自分のアイデンティティが自然に湧き上がってくるにつれて、自分は実は日本についてあまり知らないことに気付く。そして、その日本の歴史や文化を学ぶうえで無視できないのが、多大な影響を及ぼした中国だということにも。

しかし、実際のところ、中国のことは他の国以上に知らない。「これは日本文化のひとつで……」と紹介したものが、「それは中国から伝わったんだぜー」とチャイニーズの友人に指摘されることもしばしば。

だからそんな折、以前からずっと読みたくてようやく読んだ本がある。10年ほど前に出版され話題になった本で、『ワイルド・スワン』というノンフィクションだ。作者は中国人女性ユン・チアンで、彼女の祖母、母、そして彼女の三代に渡る長い長い手記になっている。

中国の歴史と呼ぶにはぐっと現在に近い話(1909~1978年)だが、中国国民党と共産党の争いや、毛沢東による文化大革命などがあった厳しい時代に生きた人々の心理描写により、今まで未知であった中国という国、そして人々の特徴を感じることができる。

それまであまり外に出されることのなかった中国国民の実態を綴っているので、出版当時は一種の暴露本とも言われたそうな。もちろん、この話をどう受け止めるかは人それぞれだが、私は自分の国や影響を及ぼした国について関心を持ついい経験となった。

そして、この「ワイルド・スワン」、留学を目指す人にもぜひおススメしたい。

作者は猛勉強の末、四川大学の英文科に入学したものの、強制労働ばかりで授業はまともになかったらしい。また、外国人と話す機会もないどころか、英文文書が規制されていたため、毎日図書館に通って限られた資料でコツコツと勉強していたそうだ。最終的にはその努力が実を結び、彼女は難関な国家試験を突破し、イギリス留学の切符を手に入れた。

もちろん、今の自分の社会的・経済的環境とは大きく違うが、同じく留学をしている者として、彼女の勉強への熱意にはハッとさせられた。

この本を読んだ事はないビリーだが、私は本の中で驚いたり、感動したことが何かあったら、次の日彼に話してあげた。そうするとビリーはさらにくわしく説明してくれたり、それに関する彼の家族の体験談などを教えてくれたりした。

こうして、この『ワイルド・スワン』は、お互いの歴史や文化に興味のある私とビリーをさらに強くつなげてくれたようだ。

たとえば今日のランチタイムが終わる頃,私たちの横にいた隣のクラスのヨーロッパ系の生徒が、最近の日本と中国の関係に絡めて、私たちを少しからかうようなニュアンスで冷やかしてきた。するとビリーは、

「Forget about it! (うるせえなあ!)」と、すごく怖い顔で一蹴してみせた。

私は一瞬どう答えたらいいかわからなかった。でも、日本人として、いずれは何かしら自分の意見が言えるように、さらに歴史や文化を勉強したい、と、そのとき強く思った。

「アホ」

「カワイイネ」

「アンタ ヘンナ ヒトネ」

あやしい日本語を連発するビリー。それでも、一生懸命覚えたんだろう。日本語の正しい使い方を英語で説明するが、お互いつたない英語力につき、時々漢字で筆談する。これだと、英語より話が早い。こんなとき、中国と日本はやはり密接なつながりがあるな~と改めて感じる。

こんな風に私はクラスメイトを通して、自分の国についての発見をしているのである。

☆ ビリーの国:中華人民共和国 (People’s Republic of China)
1949年現共和国成立、人民民主共和制。首都北京。人口は約13億人で、92%が漢民族。言語は中国語(漢語、広東語他)。宗教は仏教・イスラム教・キリスト教など。通貨は人民元。日本とは経済的・文化的に強い繋がりがある一方、歴史教科書問題や尖閣諸島問題などの問題も根深い。
ニューヨークではマンハッタンに大きなチャイナタウンがあるほか、クイーンズのフラッシングなどにもお店が多い。チャイニーズのデリバリーのお店はいたるとことにあり、安くて美味しいものを食べることができる。最近Sallyは『豆腐花』(杏仁豆腐のような豆腐のスイーツ)にハマっている。安くてヘルシー!

国情報参考データ:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/data.html

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NY日記COLORS http://nycolors.exblog.jp