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安全快適より料金か? 噂のチャイナバスでワシントンDC往復

On: イボンヌの部屋

最初にお断りですが、今回はおススメレポートではありません。
ご利用の選択は、あくまで読者の方のご判断に委ねさせていただきます。

と、いささか物騒な始まりになりました。
日本では長距離バスの事故が大きく報道されておりますが、アメリカでも通称「チャイナバス」と呼ばれる格安長距離バスがあります。

チャイナタウン間を結んで運行されているので「チャイナバス」あるいは「チャイナタウンバス」と呼ばれています。

90年代終わり頃に、アトランティックシティのカジノに働きに行くボストンの中国人を安く運ぶためにスタートしたらしいのですが、
今や東海岸はボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンDCなどの主要都市の格安交通として複数の中国系バス会社がしのぎを削っています。

ただ、2011年には死者を出す事故を起こしており、「安くて早いが危険」との風評なのであります。

私が乗ったワシントンDCへは片道20ドル。
アムトラックの鉄道では安くても片道80ドルから、グレイハウンドでも正規料金は40ドル弱で、20ドル札1枚っていうところに惹かれます。

発着はチャイナタウンですので、とにかくマンハッタンのチャイナタウンを目指しました。

「確かこの辺でチャイナバスの看板を見かけたよなぁ」とアバウトな目ぼしでウロウロすること10分、やっと切符売り場を発見。
ウエブで調べたバス会社の名前はApexだったのに、見つけたのはEastern。
「違うよなぁ」と疑問に思いながら、まずはチケットをゲット。

こちらが乗ったバス。

「バスがちゃっちい」と聞いていましたが、あら~立派なバスじゃんか。

日曜8時の早朝発なので、乗客は20人ほど。

ナイキストアの袋を抱えたお買い物帰りとお見受けする長身のお兄ちゃん、
イスラムの装束に身を包んだおっちゃん、
どこの国のかわからない言葉で話していた旅行者風の親子連れ3人などなど、
エスニック度★★★★★

あれー、チャイナバスっていうのに中国の人がいないじゃんかと思っていたら、ペンシルバニア駅でやっと中国語を話す母娘が乗り込んできました。

さて出発進行!

ドライバーは1人。
ジーンズにパーカーのラフなスタイルの中国人の人、乗客かと思っちゃいました。

やっぱ、交代要員なんていないのですよね。

車内は座席も汚れていなくてきれいでした。
噂じゃぁ、ゴミだらけなんて言われていましたが、ちゃんと各座席にゴミ用のポリ袋がぶら下げてありました。

ただ、モニターはありますが、何も上映されていませんでしたし、ラジオや音楽もなし。

帰ってから調べたホームページにはフリー・ワイアレス・インターネットとありましたが、読書灯すら左半分の座席は点灯しませんでしたので、ネットのアクセスがどうだったか????

車窓はご覧のように単調なノベーッとした風景の連続なので、自前の時間つぶしは必携です。

ニュージャージー・ターンパイクをひた走り2時間半すぎたところで、15分のトイレ休憩があったのみ。

実はバスにトイレはあったのですが、やはり使う勇気が出ずにトイレ休憩までひたすら我慢したのです。
見に行く勇気もなかったんだなぁ。

4時間半でワシントンDCチャイナタウンの大門の前に到着。
とりあえず無事に到着はしました。

さて、往路は比較的順調に快適でしたが、復路の出発にちょっとしたドラマが・・・・。

3時のニューヨーク行きに乗ろうと2時45分に行ったら

「ダメダメ、3時はもう満席。4時なら今キャンセルしたお客さんがあるから乗せてあげるよー、そのかわり20分前には絶対来ないと乗せないから」

って、金切り声のこわーいお姉さんに20ドルを払って手渡された切符は半券切り離し状態。(かなり不安)

こりゃ早めに行った方がいいだろと30分前に待合室に着いたら、何と室内は満員。

椅子2つ分くらいの体の大きなおばちゃんはドカンと腰掛けているし、
子どもはウロチョロするし、
大きなキャリーケースを前にしたグループは何やら大声のイタリア語でわめき合っているし、
ピアス顔中と鮮やかなタトゥーのお姉ちゃんはただただパソコンを打ち続けているし、

あー、ナンだろうこの空間はぁ!でございました。

さて、目の前にバスが現れると、待合室の乗客はみんな立ち上がって外に出ようとそわそわ、

「まだまだ、呼ぶまで待っててもらわないと乗せないよー」

と今度はバス会社のほっしゃん。似のおっちゃんの厳しいお達し。

そして「さーさー、オンラインで申し込んだ人からだからねー」とのおっちゃんの号令。

ええー?????オンライン優先???そんなの聞いてなかった!

待合室の全員やら外で待っていた人やら、大雨の中をバスのドアに殺到。
コンファメーションのプリントアウトや切符を振りかざして、押せや押せやです。

「私、乗れるのかしら?今日中にマンハッタンにたどり着けるだろうか?」いよいよもって不安になってきました。

あー、ここはアメリカの首都ワシントンDCでしょうが!
まるで、テレビで観たどこぞの国の乗車風景のようでした。

申し訳ないが譲り合いなんてしていられません。
整然と列に並ぶ麗しい日本人気質をぐっと抑え込み、やっとこさ、押し合いへし合いで乗り込んだものの、車内はほぼ満席。

運転席の真後ろの席をどうにか確保できました。

乗車バトルで15分も遅れていざ出発という時に「オレ様はこのバスに予約していたんだ乗せろー」と男性が乗り口から登場。
バス会社のおっちゃんと「乗せろ、乗せない」の押し問答が始まりました。

おっちゃんは「もう満席だから絶対ダメ」と叫び、男性は「これを見ろ、ちゃんとコンファメーションが取れている」とスマホの画面を振りかざして、バスから降りようとしません。

ついにおっちゃんは「ナンなら警察呼んでもらってもいいよ」と開き直った上に「乗客のみなさ~ん、この人のせいで出発できませ~ん」と言い出す始末。

おっちゃん、私ら乗客に始末を預けるとはどうなっとるんや!

ここで、どこからか「発車の20分前までに来るように書いてあったぞー」の一言に、男性は渋々降りて行きました。
いやはやネゴが当然、ゴネりゃ何とかなるが常識のアメリカですが、チャイナバスだけはネゴもゴネも効きませぬ。

乗客の拍手喝采と一緒にワシントンDC、チャイナタウン大門の前を出発したバスはひたすらマンハッタンのチャイナタウンに向かって走り出したわけです。

が、運の悪い事にこの日は警報が出るほどの大嵐。

フリーウエーに入ると前や横を走る車が上げる水しぶきでバスの前は真っ白。
おまけに凄いスピード。

シートベルトをしっかり締めて、心の中で「スピード出さなくていいよ、安全運転でいってよ」と唱えておりました。
悪天候&猛スピードのスリル満点5時間でマンハッタンに到着したときには、体はカチンカチンに凝りまくっておりました。

申すまでもなく、復路のバスの中の中国人とおぼしき人はドライバーだけ。

学生、旅行者だけでなく、ワシントンDCやバルティモアの家族や親戚を訪れる人の足になっているようなのです。

こんな話に友人は簡単に「メガバスがあるよ」と一言。

こちらはイギリスから参入した会社で、かなりマシなのだそうでございます。
後の祭りとはこのことざます。

実は8時の早朝バスに間に合わせたいが為に、チャイナタウンまでタクシーに乗っちゃったのです。
料金しめて15ドル。

20ドルのバスに乗る為に、15ドルのタクシー代は損得いずれだったのでございましょう。