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ブライズメイズの理想と現実

On: 特出しコラム とびこみくん
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今となっては1年前のある日、ニューヨークに越してきてから知り合った女友達から婚約のニュースを告げられた。

彼女の薬指にはお約束の巨大なダイヤモンド。表情はもちろん笑顔。
物腰はさすがにもう30にもなるせいか、はしゃぐこと無くおちついていた。

特に変わった様子もない。
婚約のアナウンスメントとはだいたいこういうものなのだろう。

異例だったのは、今回始めてブライズメイズになってくれと依頼を受けたことだった。

西洋のしきたりでブライズメイズというのは、花嫁のいわばサポート役的感覚で、結婚式の観客としてではなく儀式の一部として結婚式に立ち会う女性または複数の女性のことをいう。

場合によっては結婚式の当日に新郎新婦と共に壇上に立つだけでなく、花嫁よりブライズメイズの依頼を受けてから式までの準備を手伝ったり、様々な催しを開いたりと花嫁並みに忙しかったりもする。

たいていは、花嫁に姉妹がいる場合は彼女らに、また別の親戚や女の親友に依頼するのが普通で、本来はとても名誉ある指命と考えられてきた。

ここで問題なのが、私は個人的にこのようなしきたりを古くさく、名誉どころか迷惑だと思ってきたことにある。

実は、このブライズメイズのしきたりには、花嫁を心理的にサポートするという名の裏側に、大抵準備にかかる莫大な金銭的負担と、複数の女性が集まったときにおこるいざこざというものがあるからだ。

このことは、アメリカのウエディング・カルチャーを風刺し昨年大ヒットしたコメディー映画「ブライズメイズ」を見れば明らかである。

ここで私の不安を察した花嫁は、「大丈夫。式は西海岸だから準備は自分と家族でやるし、こちらが選んだドレスを着て式に出てくれるだけでいいから。」となだめられ、渋々承諾してしまった。

そして私の悪夢はここから始まる。

ブライズメイズの認定を受けて数ヶ月、花嫁一行から結婚式に関するニュースは一言も無くすべては穏やかな様子だった。
9月には花嫁の誕生日パーティーがあり、婚約祝いも兼ねて市内で盛大に行われた。

まだ他のブライズメイズにさえ紹介されていなかった私は、このパーティーに出席した際に初めて他の5人と知り合う。

一人は西海岸代表のリーダー格ですでに結婚済みということもありメイトロン・オブ・オナーという肩書きの派手な性格で元ダンサーの黒人女性。

もう一人は最近ニューヨークに引っ越してきた花嫁の真ん中の妹で、パーティー好きのアッパラパーな東海岸のリーダー格。

それに西海岸在住の花嫁の一番下のおとなしい妹と、もう一人比較的おとなしそうなニュージャージー州在住のラテン女性。

最後に、この初対面の場で、ツンケンした態度をとってしょっぱなから他のブライズメイズ達の反感を買い、後に私の新たな親友的存在になった花嫁の幼なじみの韓国人女性。

お互いにこれまでほとんど面識のない女達がこうして一カ所にそろったところで、翌日全員でブライズメイズの衣装を試着しに出かけることとなった。

 

ブライズメイズの悪夢その1:お揃いのドレス

そもそも私のブライズメイズ嫌いの原点はここにあるかもしれないと思わせるのが、多くのブライズメイズが無理矢理着させられるお揃いのドレス。

しかも費用は自己負担。

そして、なぜかこれらのドレスは決まってセンスが悪い。
色も全員均等に似合うことがほとんどない。

今回のそれも例外ではなかった。

独特のコバルトブルーに安っぽいシフォンのストラップレス。
幼少時代、お姫様ごっこをしていた当時の自分には良かったかもしれないが、今となっては人生二度ときることの無いであろうドレスに150ドル。

しかし、ここで忘れていけないのは、これは私が自分を魅力的に見せるために着るのではなく、結婚式当日の花嫁を引き立たせるための舞台衣装であるということだ。

確かにこれだけ残念なドレスを着た女性に囲まれれば、引き立つこと間違いないだろう。

更に残念だったのが、他のブライズメイズ達が純粋に満足している様子であることだ。
なぜこんな悪趣味な連中に囲まれなければならないのか。

そんな中でもう一人不満そうに、はしゃげないでいる人がいる。
昨晩、多少高慢な態度で反感を買った花嫁の幼なじみだ。

あの人とならお友達になれるかもしれない。
機会があったら別に話しかけてみよう。

そうしてブライズメイズ達は再びそれぞれの住むところへと散っていった。

 

ブライズメイズの悪夢その2:バチェロレッテ・パーティー(旅行編)

「式に参加するだけでいいから」という条件でブライズメイズに任命されて半年。
西海岸のリーダーからグループメールが届く。

花嫁のバチェロレッテ・パーティーについての問いが回ってきたのだ。

知らない方には、いちいち下らないしきたりが多くて申し訳ない。
バチェロレッテ(男性の場合はバチェラー)・パーティーというのは、元々結婚前の新郎新婦がそれぞれお互いに「永遠の愛」たるものを誓い合う前に、独身生活最後に羽目をはずす機会を設けるパーティーである。

この場合、花嫁はニューヨークにいるので当然このパーティーも市内で適当に出席できる者達で行われるのだろうと甘く見ていた私は、センスの悪いドレスに続き、再び痛い目に遭うこととなる。

というのも、メイトロン/メイド・オブ・オナーの仕切りで候補に挙がったのは、1.マイアミ 2.メキシコ 3.北カリフォルニア。

しかも、個人の旅費はもちろん花嫁の旅費もブライズメイズ負担だという。

反論する間もなく場所はマイアミに決定。
全ては花嫁へのサブライズという前提でいまいち納得できずも花嫁にも相談できない雰囲気だ。

これまでにこつこつと貯めてきた飛行機のマイレージ5万ポイントに加え、ホテル代、タクシー代、食事代、クラブ入場料、ドリンク料と更に費用はかさむ。

実はここで別にちょっとしたドラマが発生していた。

マイアミへの出発前に、ジャージー州出身のラテン系ブライズメイズから、ブライズメイズ全員でブライダルTシャツを特注しようというまたしても悪趣味な提案があったのだ。

しかもその話の切り出し方が、「ところで、例のお揃いTシャツの件なんだけど。」

なんでも一人20ドルかかるこのTシャツ、そもそもそんな提案があったことさえ私は聞いておらず、さすがにここで反撃に出ることにした。

「相談もせずに人の金を勝手に使うな」と。

ここですかさず私の見方に付いたのが例の花嫁の幼なじみだった。

私たち二人は断固として譲らず、6人全員お揃いで着るはずのTシャツも4人お揃いにとどまり、6人グループの女集団に一発目の亀裂が生じた瞬間だった。

二泊三日の旅行中、二晩とも朝の4時までナイトクラブを引きずり回されるうち、その溝は徐々に深まっていった。

 

ブライズメイズの悪夢その3:ブライダル・シャワー (東西編)

全く前もっての相談も無かったバチェロレット騒ぎの請求書が各ブライズメイズに届けられていた頃、ウエディングドレスの試着等で西海岸を訪れていた花嫁のために、ロサンゼルスのビバリーヒルズでブライダル・シャワーたる行事が催された。

バチェロレット同様、結婚式に向けて世間で更に花嫁を祝福する為のものだが、そもそも、結婚式が結婚を祝福する為の行事なのではないのか、と、私ともう一人のブライズメイズでいい加減行事に呆れ疲れていた。

しかし少なくとも、ブライダル・シャワーは免れたかと思いきや、今度は東のリーダーであるメイド・オブ・オナーからニューヨークのシャワーはどうするかという回覧が回ってきたのである。

あげくの果てに、その形式とは、花嫁のニューヨーク在住の友人達を集めてレストラン・ディナーを、またしても全額東海岸のブライズメイズ負担でどうかというもの。

誰かの自宅に集まって、ブライズメイズ持ち寄りでという形ならまだしも、なぜどこかの適当な店で自分にとって全くの赤の他人の夕食代を支払わなければならないのか。

だいたい、花嫁の出身である西海岸で、最も親しい家族や友達を招待してのシャワーだけでは足りないのか。

耐えかねた私は、結婚式の為の旅費も考慮した上で、このような予期せぬ出費は個人的にもう無理だと花嫁(である以前に友達のはずなのだが)に直接懇願した。

すると彼女からは、実はニューヨークのシャワー費は全て自分のフィアンセが負担するから心配いらないからぜひ出席してほしいと切り返された。

けれど、ひとまず正直に相談して良かったと安心したのは束の間、ブライダル・シャワーの当日、友人のブライズメイズと二人でレストランに向かう途中、例のメイド・オブ・オナーからメッセージが届いた。

「今晩のディナーは、各自の分だけ負担してもらいます。」

話が全然違うではないか?! しまった。またしてもやられた。

 

ブライズメイズの悪夢その4:ブライズメイズ解雇

まだニューヨーク・シャワーの興奮もさめやらぬ一週間後、結婚式まで残すところ三週間でさすがにもう後は何も心配することは無いだろう願っていた矢先にそれは起きた。

いまでは、毎日のように怒りのメールを交換するようになっていたもう一人のアンチ・ブライズメイズ仲間から電話があった。

たった今、彼女は花嫁に呼び出されて任命されたブライズメイズ業を解雇されたというのだ。
大げさな言い方かもしれないが、会話の内容を聞くと、上司から解雇命令をくだされた社員の状況とさほど変わらぬ口調で言い渡されたらしい。

「あなたの態度が気に入らないの。一緒に楽しくやってくれる気がないなら、結婚式の場にそういう気持ちを持ち込まれるのは困るから」と。

方や、自由のみになりセイセイしただろうとはいえ、そもそもブライズメイズになってくれと頼まれるような仲の友人にそんな言い草をされるのは面白くない。

更に自分勝手なことを言わせてもらえれば、この時点で結婚式に向けての唯一の楽しみは、せめて自分の気持ちを分かち合ってくれる心強い友達が少なくとも一人はいるのだということだった。

せめて、自分も一緒にクビになれれば、、、しかしその晩いくら待っても、花嫁からのその電話は、私へはかかってこなかった。

 

ブライズメイズの悪夢その5:結婚式

ブライズメイズ業に疲れ果て、友人である花嫁にも幻滅し、もはや何のために参加するのかわからないまま結婚式の当日がやってきた。

本来なら友人を心から祝福し、結婚という儀式に感動するはずが、こうも空しくしらけてしまうのか。

似合いもしないドレスを着させられ、仕事を休み、旅券を買い、車を借り、周りを見ればブライズメイズ以外に知っている人は誰一人いない。適当に気の合う人間もいない。

そもそも、自分はなぜこんな立場に身を置くことになってしまったのか。

精神的に一生懸命無理をして、ここまでお金をつぎ込んでまで一緒にいる価値のある友人は果たして実際何人いるのだろう。

 

その後ーーー

結婚式も無事終わり、その後一週間を天気のいいロサンゼルスで過ごし、少なくとも半月は会話と笑いのネタができたことには感謝すべきか。

このブライズメイズ珍道中を一分かち合い、共に激怒し笑ってくれる仲間に再び囲まれると、問題は結婚式やブライズメイズ云々というよりも、こういったことに関する価値観を共有できる人間が本当の友達なのだということを実感する。

「式に参加するだけでいいから」という最初の約束は、私に言わせれば最終的にウソ同然だったわけだが、おそらく結局は彼女を友人としてフルに理解していなかった私と彼女の間に「参加」という言葉の意味に大きな違いがあったのだろうと思うことにしている。

結婚式後、花嫁は一日と待たずに、フェイスブック上の自分の名字を夫のそれにかえていた。
名前も人格も、私が今までに知っていると思い込んでいたそれとは別人となってしまったのだ。

すでにハネムーンを終え、市内に戻ってきているのだろうが、未だ連絡はない。

ブライズメイズ解雇を言い渡された友達は、皮肉にもこの騒ぎの最中に婚約した。

これを通してお互い知り合えたことがせめてもの救いだと、今でも毎日のように会話が続いている。

それでもブライズメイズだけはもうこりごりだからと、前もってそれだけは勘弁してほしいと早速断っておいた。

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Featured Photo Credit: Sean Molin Photography via photopin cc