ニューヨークからプロライター達がお送りする、「ここだけ」のおもしろ情報。

No.35 赤い州の白人男が熱心なのは法律で女性をレイプすること?!

On: 怒りの鉄拳! 紐育バガボンドが斬る!(更新終了)

4年に1度の大統領選を今年11月に控えて、アメリカは赤い州と青い州の2つの国に分かれていることがますますハッキリしてきた。

私が住むニューヨーク州は、青い州の中でもいちばん真っ青で、どう転んでも民主党(日本の民主党とはかけ離れているのでデモクラッツを呼ぶ)の候補しか当選しないし、今回もニューヨーク州の大統領票はオバマに投じられるので、オバマ大統領がニューヨークにやってくるのは、再選のための選挙運動ではなく、寄付金を集めに来る時だけである。

青い州の政治文化とは、一言で言えばリベラルで社会主義寄り。
ニューヨークのように世界から移民が集まる都会では当然のことだ。

世界中から色んな考え方の人が集まって共存し、移民が新天地で新しい生活を整えられるように行政機関がそれをサポートし、激しい競争社会の中で優秀な人が認められてサクセスを掴むのが都会だからだ。

一方、赤い州の文化とは、保守的、無知無教養、そして差別主義的だと、断言させてもらう。
個人的には赤い州には住みたくもないし、仕事上の都合で1度しか訪れたことがない。

それがバージニア州だった。
観光誘致などに使われる、この州のスローガンはVirginia is for Loversなのだが、昨今はVirginia is for Hatersそのものである。

この州で起こっている動きを紹介したい。

共和党が大多数を占める赤い州の州議会では、州法が国家憲法違法になるほど、マイノリティーや女性を差別する法案が次々と提出され、それが採択されつつある。

その法案の一つが今年になって提出されたヴァージニア州のHB-1だ。

Personhood Billと呼ばれるこの法案は、女性が受胎した瞬間から、豆粒ほどもない胎児にも生まれ落ちた人間と同じ権利があるとするものだ。

それだけを聞くとこの法律のどこがいけないのかと思われるかもしれない。
保守派もその辺は心得ていて「命の尊厳」の名の下に法案をサポートしている。

こんなことをクソマジメに提案し、州法で認めようというのはもちろん年配の白人男性ばかりだ。

法案のスポンサーはボブ・マーシャル議員、立法を認用としている州知事はボブ・マクドネルだ。


ボブ・マーシャル議員/PHOTO from : Boston Herald.com


ボブ・マクドネル州知事/PHOTO from : Sky Dancing

しかし、これは裏を返せば、中絶手術を受ける女性を殺人者とみなし、不注意で流産すれば過失致死に問われることを意味する。

しかもこの「不注意な行為」には、不慮の事故だけでなく、飲酒や麻薬の使用も含まれる。

それだけではなく、不妊治療としての体外受精もできなくなるし、難病治療につながる幹細胞研究も違法になる。同じような法案がミシシッピ州(もちろん赤)でも提出されたが、こちらは州民投票によって却下された。

ヴァージニア州で成立しつつあるこの法案には、もうひとつ、中絶しようという女性を虐げる項目が入っている。

それは、母体の健康を守るために必要か必要でないかにかかわらず、中絶を望む女性には全て体内超音波検診を義務づけるという項目である。

これはワギナから超音波検針器を突っ込んで行うもので、料金はもちろん中絶費用に上乗せして女性の負担となる。

本気で女性の中絶件数を減らすのが目的であるならば、一方で、男女ともに避妊教育をし、避妊具を保健代でまかない、望まない妊娠を避ける措置がとられても良さそうなものだが、赤い州ではそれは全く望めない。

カソリックやエヴァンジェリストと呼ばれる宗派の多い保守的な土地柄では、避妊具を使うことそのものが神の意志に背くという理由付けで阻止されるからだ。

なぜここまで女性の中絶を妨害し、女性を辱めようとしているのか?

それは女性が、自分の意志で避妊をし、男性と同じようにセックスを楽しみ、妊娠した場合に産むか産まないかを自分で決めるという「自由」を奪い取りたいからである。

それどころか、レイプされても、近親相姦(この場合多くは合意の上ではなく、父親によるレイプが圧倒多数のケース)であっても、孕んだからには子どもを産み、その子どもを育てる責任を一人で負え、という奴隷以下の扱いである。

もう一つ、穿った見方をすれば、これはオバマ政権がねじれたアメリカの国会を相手に必死で取り組み、少しずつ功を奏している不況対策から国民の目を逸らせ、感情的な道徳の問題で現政権を糾弾しようという、姑息な手段なのである。

女性票を自ら放棄する赤い州の保守派が政権を奪回できるとは思えないが、つくづく不快な気持ちにさせられるので、これからも必要がない限り、私は赤い州になど一歩も踏み入れないだろう。