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No.46 87歳の誕生日を迎えたジミー・ミリキタニさんに乾杯!

On: セレブの小部屋

ジミーさんの87歳の誕生日だった。
バースデー・パーティの知らせを受け、是非ともジミー・ミリキタニさんに会いたいとニューヨーク・マンハッタンの彼の自宅へと駆けつけた。

「おめでとう」と言いたくて。

ジミーさんは、ドキュメンタリー映画『ミリキタニの猫』でメインの題材となった日系人アーチストだ。 映画が捉えたのは、彼のニューヨークでの路上生活。
911同時多発テロ事件の当日、貿易センタービル付近のダウンタウン地区で有毒な煙に包まれて咳きこむホームレスの老人にみかねて、自分の小さなアパートへと彼を招きいれたリンダという名の新人ドキュメンタリー映画監督。
二人の奇妙な共同生活が始まった。

リンダはカメラをジミーさんの前に置いて、日々の生活を追っていった。そして露になっていくジミー・ミリキタニという一人の男性の人生。

『ミリキタニの猫』

ジミーさんが描かれたドキュメンタリー映画『ミリキタニの猫』

作品の中でジミーは懐かしい日本の心を歌う。
日本人の両親のもとカルフォルニアに生まれ、広島で育ち、原爆で大切な人たちを失い、戦争に行くことを拒んでアメリカに戻ったものの日系人強制収容所に送還されたという過去を持っていた。

動乱の中で生きてきた彼の経歴をみれば、どうして彼がホームレスになってしまったか理解できるような気がした。
「戦争ではなくアートを創りだそう」という彼のモットーは、心に響いた。
アートは彼の心をも癒してきたのだと痛感した。

ホームレスになっても物乞いはせず、自分が描いた絵を売ることでお金をもらうという徹底ぶり。
彼はいつでもアーチストとしての誇りを持って生きてきた男だった。

ジミーとリンダの間に育まれていく友情も素敵な要素となったドキュメンタリー『ミリキタニの猫』は、世界中の映画祭で絶賛され、最優秀作品賞や観客賞、ノルウェー平和映画賞など多くの受賞に輝いている。
厳しい現実も人の親切な行為によってハッピーエンドになる構成が嬉しい名作だ。

この映画に感動した私は、是非ともジミーさんに会いたいと思った。
彼のことを、なんともカワイイ人だと感じていた。

ジミー・ミリキタニと筆者
ジミー・ミリキタニさんの87歳のバースデー・パーティにて

そして実際に、ジミーさんはじつに、かわいいおじいさんで、赤色がよく似合うアーチストの風采だった。

半分横になるようにして座っているジミーさんに近寄って、しゃがみこんで自己紹介をすると、ジミーさんは日本語と英語を混じえながら、優しそうな目で一気にいろんなことを話してくれた。

親戚が皇族とつながっている、3歳のときに母親を亡くした、500ドル価格の鯉の絵をナンシー・レーガンに贈った、ブッシュ大統領にも彼の絵画を渡した、英国のクィーンにも‥‥。

感動した。こんなにいっぱい話してくれるなんて。

別れ際、ふと気がつくと私は歌っていた。

彼が誕生したことをお祝いしたくて、たくさんの人たちが彼の小さな自宅を満杯にしていたことが嬉しくて、もし、リンダが彼の映画を撮らなかったら、彼はまだ路上生活を続けていたか、ビル崩壊による空気汚染で病気になっていたかもしれないと思うと、こうやってジミーさんの誕生日を祝えることに感謝したくなって。
オンチの私がスティービー・ワンダーの『ハッピー・バースデー』を勝手に一人で楽しく独唱していた。

そのときジミーさんは嬉しそうに笑ってくれたような気がする。

(c) 2007 Yuka Azuma

ミリキタニの猫 ミリキタニの猫
ジミー・ツトム・ミリキタニ、ジャニス・ミリキタニ、ロジャー・シモムラ, リンダ・ハッテンドーフ

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