ニューヨークからプロライター達がお送りする、「ここだけ」のおもしろ情報。

No.10 二つの移動民族の味:客家&ブハラ

On: Across the Universe(更新終了)

ニューヨークは世界のさまざまな民族が集まり、その文化に触れることが出来る場所。
中でも「食」に関することが一番興味深いことではないだろうか?

フレンチ、イタリアン、中華などはメジャー中のメジャー、でもニューヨークなら、もっとマイナーな国や、特定の地方・宗教の食べ物も試すことができる。

今日紹介するのは、世界の四大移動民族と言われる、華僑、ユダヤ人、アルメニア人、印僑(インド系移民)のうち、『客家』という華僑と、『ブハラ』というユダヤ人の料理。

 
野の滋養がたっぷり!客家のさっぱりお茶漬け

『客家(ハッカ)』と呼ばれるグループは、福建、広東がもともとの出所だと聞くが、「中国のユダヤ人」と言われるほど、東南アジアなど中国本土以外への移住者が多い。
いくつもの言語・方言を操りビジネスに長けているので、移民先で財を成す人も少なくないとのこと。

ニューヨークの中国人の中にも客家人は多いと聞く。
私もこちらである客家の方と知り合い、その方の自宅で「客家のお茶漬け」というのを食べさせてもらった。

脂っこいチャイニーズと違って、あっさりしたそれはまさに日本人好み!

客家は古くから山岳部に住むことが多く、その料理には野菜がふんだんに使われるとのことで、そのお茶漬けには何種類もの野菜のトッピングが用意されていた。

別に決まったものや豪華なものを用意する必要はなく、旬のものや、その時あるものでよく、茹でるか少な目の油でさっと炒めて、すべて細かく切ってある。
この日は、いんげん、小松菜、豆腐、キャベツ漬け、香草など。まず、これらを少しずつご飯の上に乗せる。

そして、そこへかけるお茶が独特。茶葉は緑茶でもウーロン茶でもいいそうだが、すり鉢や小型の石臼、フード・プロセッサーで擂って使う。(『擂茶(レイチャ)』と呼ばれる。)

葉と一緒にローストピーナッツやゴマ、タイバジルも擂り、それらをお湯に溶き、ダシ(この日は日本のかつおダシ)を少し入れて完成。
これを野菜ののったご飯にかける。

タイバジルの独特な香りが爽快感を与えてくれるし、汁のベースはあくまでもお茶だから、苦味の利いた後味でまったくしつこくない。トッピングも野菜がメインだから、するする入っていく。

ピリ辛に炒めたじゃこや、ローストピーナッツの香ばしさもいいアクセント。とにかくこれは美味い!!

「これは客家に伝わる家庭料理だから、台湾やマレーシアならともかく、こちらのレストランではまず出てこないと思うよ。」と知人。人種のるつぼニューヨークでの出会いがあったからこそ食べられたものだ。


PHOTO : xiangxi

 
中央アジアのユダヤ人『ブハリアン』料理は文化のミックス

『ブハラ』とは、その昔イスラエルを出て中央アジアに移動したユダヤ人のグループで、世界の他のユダヤ人たちから孤立したまま約2世紀も独自の生活をしてきた人たち。彼らは、現在のウズベキスタン・タジキスタンあたりに、建国さえした。

その国はやがてソ連に組み込まれたが、ソ連崩壊後にイスラム教徒の勢力が強まると、2世紀ぶりの民族移動が始まった。その主な先がニューヨークのクイーンズ。もっとピンポイントで言えば、レゴパーク(Rego Park) とフォレストヒルズ(Forest Hills)いうエリアで、マンハッタンにチャイナタウンやコリアンタウンがあるように、ある特定のストリートにブハリアンのお店が連なっている。

中央アジアの料理なんてまったく縁がなかった私。でもブハリアン・レストランに行ってみたら、要は地理のとおり、ロシア、インド、中国など、あの辺りの国の食べ物のミックスだった。

例を挙げると・・・

アぺタイザーのペストリーはインドのサモサとピロシキの間のようなもの。

ヌードルの一品。スープはミネストローネかボルシチに近いが、麺はうどんのよう。名前はRagmen(ラグメン)という。→ラーメン!?

ギョーザと同じ皮の中身はラム肉かかぼちゃ。これにトマトソースを少しかけて食べる。

ラム肉の串。これはウイグルか中東の串とほぼ同じ。

「中央アジア料理」というだけなら、何もブハリアンでなくともよく、ウズベキスタンなどのレストランに行けば同じだろう。

でもブハリアンはユダヤ教徒なので、例えメニューは同じでも、彼らの出すものは教義中の細かい戒律に沿った素材と調理方法による「コーシャー(Kosher)料理」でもある。そこがただの中央アジア料理と違うところだ。

といっても、私はユダヤ教徒じゃないから、コーシャーであろうとなかろうと関係ないのだが。(ユダヤ人はコーシャー料理を食べるが、信者でない者がコーシャー料理を食べてはいけないというものではない)

味の方はというと、まあまあ。洗練された味というより、庶民的な懐かしいような味。
ラム肉をよく使うので、苦手な人はメニューが限られる。

でも、食文化の交わりがストレートに出ていて面白かった。

国で分ければ数百という数も、さらに地方や宗教で分けると、その食文化は数千にもなるだろう。
そのすべてがあるわけではないが、もっとも多く集まっている場所のひとつがニューヨークなのではないだろうか。なんとお得な街であることよ!

Bukharian Restaurants

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Sally, ブログも書いています! 
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