ニューヨークからプロライター達がお送りする、「ここだけ」のおもしろ情報。

No.17 アメリカ経済から見たNY2011春夏コレクションのトレンドは?

On: 生にゅー! 生のNYトレンド通信

9月にリンカーンセンターで2011春夏コレクションが行われたニューヨーク。
さてさて次の春夏のトレンドがどうなるか、今回は予報してみましょうの巻です!

NYコレクションで見られた大きなトレンドの特徴は、ざっくりいうと、

「ネオ・ミニマル」
「ロングスカート」
「ワイドパンツ」
「70年代調」

といったところ。

ストレートでシンプルなカット、体を締めつけすぎないコンフォートなスタイルというのが時代の気分になりそう。

こちらはアレキサンダー・ワンのコレクション。


PHOTO : Monica Feudi / GoRunway.com
Courtesy of Style.com

ブラックでタイトなシルエットで鋭いイメージだったアレキサンダー・ワンが今回は黒を排除。
ホワイトやカッパーベージュなどの色を主調にして爽やかな雰囲気に。

シルエットもゆとりがあってコンフォートな感じ、ストレートなラインと、まさに2011春夏のトレンドを牽引するコレクションです。

でもってこの写真が代表するように、今季のNYコレクションのランウェイは白、白、白、白ばかり。
まさにホワイトの絨毯爆撃というほどのホワイト攻め!

もちろんNYでもマーク・ジェイコブスは70年代調を打ち出して、色もピンクやオレンジのパレットがきれいだったし、ボールドな原色も来春のトレンドのひとつになるはず。

でもNYの主流はホワイト。
いったいなぜなのか?

これを経済の面から考察すると、おもしろいことが読めるのですよ!

えー、現在のアメリカ経済の状況はといえば、オバマ大統領みずから「苦痛なほど遅い経済回復」といった通り、あいかわらず低調ぎみ。

景気は去年よりは回復しているし、リテイルの売上げもリーマンショック直後からはかなり持ちなおしている。

といってもガツンとした勢いがないというのが現状。
ファッション業界としては「悲観はしなくていいけど、楽観視はできない」というのが本音であるはず。

さてそんな経済状況を鑑みて、ニューヨークのビジネスニュースペーパーであるCRAIN’SがNYコレクションについて分析していた記事が興味深かったので、ご紹介しましょう。

記事中から引用すると、以下の通り。

『もっとも大きなニュースはシルエットが変わったことです』
とブルーミングデールズのファッションディレクターであるステファニー・ソロモンは語る。
『シルエットに変化がある時、ワードローブを入れ換える必要が生じます。これはリテイラーにとっては歓迎すべきニュースですね』

つまりファッションでは、少数のファッショニスタがとびきりお洒落で高いものを買うよりも、全国の女性がいっせいに次のトレンドに移ってくれたほうが、経済効果が高いわけです。

というより、むしろ「たいしてお洒落じゃない」女性まで新しい服を買うような状況になるほうがビジネスとしては望ましい。

つまり経済を活性化するには「シルエットを変える」のがてっとり早いんだね。

そのために重要なのが、まずレングス。
今回のコレクションでは一世にスカート丈がミディ、そしてマキシに変化。

こちらはラグ&ボーン。
フューチャリスティックなプリントですが、レングスはグッと長くなってミディ丈です。


PHOTO : Yannis Vlamos / GoRunway.com
Courtesy of Style.com

そして春のキイ・アイテムになりそうなのが、なんといってもパンツ。
それもワイドパンツがイン。

こちらはジェイソン・ウー。
ボウタイにきれいなテイラードのワイドパンツがエレガント。


PHOTO : Yannis Vlamos / GoRunway.com
Courtesy of Style.com

この数年はスキニージーンズやレギンスがブームだったので、ワイドなパンツというのはクローゼットにないアイテムで、消費者にとっては新鮮といえそう。

そして注目すべきは70年代ブーム。
これを大々的に打ち出したのが、マーク・ジェイコブス。
この方向性は推進力がありますね。


PHOTO : Monica Feudi / GoRunway.com
Courtesy of Style.com

こちらはデレク・ラムによるデニム素材でテイラードしたスーツ。
パンツのシルエットにご注目を。


PHOTO : Yannis Vlamos / GoRunway.com
Courtesy of Style.com

なかでもいちばん気になるトレンドとして、チェックしたいのが、このベルボトムのジーンズ。

なにしろジーンズというのはトレンドが変わったら、もっとも繊維業界や縫製業界、リテイルに影響が出るアイテム。

ロウライズのブーツカットジーンズが流行っていた頃(ブリトニー・スピアーズ全盛期だね)からスキニージーンズに移行した時にはいっせいにジーンズが売れたもの。

現在NYでも東京でもパリでも若い子なら、99%がスキニージーンズかレギンスを保有しているはず。

で、これが「ハイウエストのベルボトム」パンツに主流が切り替わったら、数年のうちドーンと大きくマーケットが動くってことだよね。

つまりボトムの変化ってのは、ハンパない影響力なのだ。

いっぽう色彩については、なぜNYは白やサンドベージュなのか?

こちらはマイケル・コースのファースト・ルック。
透け感のある素材で、スポーティブ・ラグジュリアスなスタイルです。


PHOTO : Courtesy of Michael Kors / Style.com

白やサンドベージュには「爽やかでクリーンなものへの志向」「ナチュラルでシンプルなものへの志向」という時代の心理があるんじゃないかと思うんですね。

けれどもこれも経済が係わってのこと。

来春は「原色カラー」「蛍光カラー」もトレンドのひとつと目されていて、カラフルな服もちょこちょこ出ているんですね。

でも実際にあなたは原色の服にいくらだったら出しますかね?

20万でも30万円の服でも、お洒落命でミスター・ビッグを金蔓にできるファッショニスタは買えるだろうし、ソーシャライトも買えるよね。

高級ブランドの服を買う層というのは、経済に関係なく存在するから、このターゲットにとっては問題ない。

けれどもファッションは好きでも大金を持ってはいないフツーのギャルだったら、手頃なカジュアルブランドの服を買うか、H&MやZARAでブランドの「パチもん」を買うんじゃなかろうか。

いっぽうある程度お金は持っているけれども、余計な時間をかけていられないワーキングガールは、原色の服にお金は出さないで、ベーシックカラーの服に投資すると思うんですよ。

マストハブなら買いたいけど、「必要じゃない贅沢」になったら慎重になるっていうのが大半の消費者心理。

多くのNYコレクションのランウェイがホワイトやベージュやピーチなど、ナチュラルな色調になっているのは、デパートや店舗の意向を反映しているもの。

大半の消費者が買うのは、なんだかんだいって基本色がメインだからね。

そう分析していくと、

「シルエットは大きく変化させる」
「けれども色彩はコンサバにする」

というのは、じつにビジネスとして考えられた戦略といえるわけです。

うーむ、なんて合理的なんだ、NYファッション。

マルクス経済学っぽくいうと「経済という下部構造は、トレンドという上部構造を規定する」というヤツですかね。

NYファッションは「リアルクローズ」といわれていて、「ファンタジー」を売るパリに比べると、「売れるものを作る」マーケティング主義が強い土壌。

その「現実に売れること」を重視するNYデザイナーたちの姿勢がよくわかった2011春夏コレクションなのでした。

というわけで、来年の経済状況は「明るくなりつつも、やや慎重に」という予報のよう。
みなさんも財布と相談の上、必要にして最大の効果をあげるアイテムをゲットして下さいませ!

黒部エリのホームページはこちら
ブログ「エリぞうのNY通信」はこちら