ニューヨークからプロライター達がお送りする、「ここだけ」のおもしろ情報。

No.7 私の夏

On: 絵本画家ママのブルックリン日記(更新終了)

子供たちが通っている公立の小学校の夏休みは2ヶ月と1週間と、長い。
これが私立の小学校となると2ヶ月半と、さらに長くなる。 6月になると半日で終わってしまう日が増え、はたから見ていても、どの子も夏休み前で浮かれているのがわかる。
また夏休みが2ヶ月以上もあるというのに、もうバケーションに出かけるのか、最後の数日を休んでしまう子供も何人かいる。

私と子供たちは毎年、3学期が終わった翌日から1ヶ月ほど、日本に里帰りする。今年は6月29日からだった。

この日に帰国する日本人は多いようで、毎年、誰かと空港でばったり会う。
今年も子どもを補修校に通わせている2家族と、ゲートで出くわした。

日本までの飛行時間は14時間と長い。ずっと座りっぱなしで、いつも8時間を過ぎたあたりで、私は発狂しそうになる。機内は轟音だし、機内食が運ばれてくる前の匂いも苦手。

ビジネスクラスだと、もっと快適なんだろうなあなどと、ビジネスクラスのカーテンをくぐる客室乗務員さんを見ながら、かないもしないことをつい思ってしまう。

でも子供たちは、退屈するふうでもなく、映画を見たり、ゲームで遊んだりして結構楽しんでいる。
なぜだろう?
途中で何時間か眠るので、あまり長い時間だと感じないのだろうか?

あと2時間くらいで成田到着という時になると、うれしさで胸もときめき、長いフライトも報われる気持ちになる。

成田には、いつも母と姉がいっしょに迎えに来てくれる。
今年は17歳の甥も来てくれた。

私の実家は江戸川区なので、成田からは車で1時間くらい。実家は6年前に完全2世帯住宅に建て替え、姉の家族が母と一緒に住んでいる。
だから私の子どもと甥っ子二人は毎日のように遊ぶことができ、その点でも子どもたちはすごく楽しめるのだ。

日本に着いてからの2週間くらいは、本当になにもかも新鮮で楽しい。
近所のスーパーマーケットに行っても、食品の種類や総菜の種類の多さに、感動してしまう。
ニューヨークにもこんな風に焼鳥や、アジフライが買えるところがあったらどんなにいいか……!

ニューヨークの日系のスーパーは、一応なんでもそろっているが、日本にあるスーパーに比べたら、足もとにも及ばないレベルだ。

今回は、近所に100円ショップが3軒もできていてびっくり。また、たった100円で、実にいろいろなものが買えるのにもびっくり。ニューヨークで使う生活用品も、ここでたくさん買い込んだ。

そして近所においしい回転寿司のお店がオープンしていたので、子どもや甥っ子たちと何度も行った。安くておいしいって、このことだ。

その他、私が必ず行くのは、三省堂書店、伊勢丹、無印良品などだ。

東京にいるとくつろげる。

私はニューヨークに15年も住んでいるのに、やっぱりニューヨークでは少し肩に力入れて生きているのかしらと思ってしまう。
実際そうなのだろう。しかし、リラックスしながらも、アメリカナイズした自分に気づく。

午前中の電車の中で眠っている人、デパートの店員さんの感じ良さ、そんなことに「へエー、そうなんだ」って気持ちになっている。

ある夜、母が用事があって出かけたとき、玄関を開けたままにしていった。
実家のあるあたりは下町で、昼間は家の中に人がいる場合は玄関の鍵をかけないうちが多い。
母などは、9時くらいまで玄関の鍵を閉めないそうだ。

私は玄関が開けっ放しというのはどうも気になり、落ち着かないので、鍵を閉めしまった。子どもたちと畳の部屋に寝転がってテレビを見ていたのだが、その様子がすだれ越しに外から丸見え、というのもいやで、シャッター式の雨戸も下10cmくらいだけ開けて、あとは閉めてしまった。

9時頃帰ってきた母は「どうしたの~、なんだか空気がこもっているじゃない。大丈夫よ。この辺は。開けっ放しでも!」と、驚いた。

私は母が家にいる分には安心なのだが、いなくなると鍵をかけずにいられないのだ。

それに近所の家とあまりに隣接しているので、夏ということもあり、こちらの声もあちらの声も筒抜けだ。そのことが結構気になったりする。

息子はというと、私が卒業した近所の小学校へ、去年に引き続き体験入学させてもらった。
体験入学を頼むために教育委員会へ最初に電話したら、「江戸川区は、体験入学はやっていません」と、即断られた。
ところが直接、小学校に電話したら二つ返事で承諾がでた。

去年もそうだったが、校長先生を始め、みんなが暖かく迎えてくれ、担任の先生は最後にオールAの通信簿を息子に持たせてくれた。

息子はスラング(日本語の)も豊富になり、「超腹減った!」とか、「やべー」とか言いだし、おかしくなってしまった。

また、息子は他の子と同じように、小学校へは一人で歩いて行きたいと主張した。実家から数分なので、思い切って一人で通学させることにした。
ニューヨークでは子どもの一人歩きは法律で禁止されているので、いつも大人が送っていく。一人で通学するのは息子にとっては新鮮で、とても楽しかったみたいだ。

彼は毎日、友達を数人連れて帰ってきた。
遊びに来てくれるのは結構なのだが、遊ぶのは決まって任天堂SP。公園に行こうと誘っても、だれも行きたがらなかった。仕方がない。バケーションだし、とにかくなかよく遊んでくれればと思い、ほうっておいた。

娘はというと、日本の小学校では5年生になるので、学力的についていけないと思い、体験入学はさせなかった。
私は午前中には娘を区営プールに連れて行ったり、行徳に住んでいる叔母の所に遊びに行ったりした。
そして日本語を上達させるのにもいいと思い、毎日のように漫画のビデオを借りてあげた。

週末は、私の親友の所に子連れで泊まりに行ったり、いとこの所に子供だけ泊まらせてもらってディズニーランドに連れて行ってもらったり、また別のいとこも子供たちをいろいろな所へに連れだしてくれた。

子供たちにとっては盛りだくさんの日本滞在だったと思う。

私は連日、友達や仕事先の人と会うので都心に出かけてしまうのだが、その間は母が子供たちを見てくれ、毎年の事ながらすごく助かった。

母はいつも私たちがニューヨークに戻ってから1週間くらいは疲れが出て、なにもできないといっている。でも母がいなければ、私はどこにも出かけられないのだから、とにかく母には感謝だ。

しかし、いつも日本滞在3週間目あたりから、ニューヨークの日常生活が恋しくなってくるのだ。
まあ、これでずっとニューヨークに戻りたくなくなってしまったら一人で留守番している夫が浮かばれないというものだが。

それでもニューヨークに戻る日は、また来年まで母に会えないのだと思うと、胸に迫るものがある。けれどなるべく、明るく別れるようにしている。

毎回、別れはつらいが、わたしも子供たちも、東京とニューヨークの二つの世界を持っていることをラッキーだと思う。

ニューヨークに戻っても、まだ1ヶ月、夏休みが残っている。
美大で教師をしている夫も夏休み中なので、今度は家族で、コニーアイランド、自然史博物館、近郊へドライブなど、いろいろなところに行くのだ。
家族4人でどっぷり8月を過ごし、いいかげん疲れた頃、新学期が始まる。

毎年、私の夏はこんな感じだ。

Mari Takabayashi : ILLUSTRATION