ニューヨークからプロライター達がお送りする、「ここだけ」のおもしろ情報。

今年の締めくくりは2017年アメリカ版今年の流行語で

On: ヒトコの小径

先日、dictionary.com が発表した今年の流行語 in the USA は、ずばり「complicit」だそうだ(アメリカでは他の組織や団体から違うものが発表される場合もあるけれど)。

は?
どういう意味?

と思った人がこの単語を検索すると「共犯の」「共謀した」「陰謀などを一緒にたくらんだ」などという日本語が出てくるはず。なんだか暗い悪のイメージ。できればあまり形容されたくないと本能的に反応する言葉だ。

今年のアメリカは、とにかくトランプ大統領新政権のロシア疑惑と共に不吉に幕開け、「fake news」というトランプ大統領自らの言葉でも拍車がかかったメディアに対する国民の不信感が募った年となった。

そうそう、フェイクニュースと言えば、トランプ大統領顧問をしているケリーアン・コンウェイが就任式に集まった人数が「過去最大のものだった」というトランプ陣営側の報道を「alternative facts(もう一つの事実・代替的事実)」と表現したこともかなり大きなニュースになっていた。

トランプ大統領が「フェイクニュース」と名指ししたCNNによると「オバマ大統領就任式の観衆数よりも大きく下回る」ということ。どちらが正しいのか、どこまでを観衆者と呼ぶか、ということにも波紋が巻いた。

個人的には「alternative facts(もう一つの事実・代替的事実)」とは、昨年の流行語となっていた「ポスト真実(post-truth)」を引きついで時代を大きく反映した言い回しだとも思ったのだけれどね。

今の世の中、一般に確認されている真実がどうであれ、相反することであっても自分が認識していることを真実だと言い切れる二重思考(doublethink)の時代になったのか、とやや関心した(勿論、彼女のこの発言はお茶の間では批判の的となっていたが)。

ツイッターでは、トランプ大統領が掲げたスローガンで「Make America Great Again」の省略語 #maga ハッシュタグが支持者の間では広がり、反対派からは「Morons Are Governing America」と痛烈なパロディとして使用され始めた。

政治や経済に不安を感じるだけでなく、安全面でもテロや銃乱射襲撃事件が続くなどして人々がうなだれたのが2017年だ。

昨年の大統領選でも議論の中心になっていたヒラリー・クリントンについての怪しい疑惑の数々もあって、政治家の間では「Let’s be clear」という表現が好んで多く用いられるようになり、「透明で中がはっきりと見える」という意味で使われる「transparent」や「transparency」という言葉はジャーナリストたちの間でもキーワードともなっていたように感じる(カナダのトルドー首相は「Changes start with transparency.」と言ってましたね ❤️)。

トランプ大統領の就任式を前後して「ウーマンマーチ(#WomensMarch)」が全米各地でも行われ、反トランプ派は「#NotMyPresident」とソーシャルミディアでもあからさまに不満を爆発する人たちが続出した。人種差別問題が再び泥沼化し、アフリカ系アメリカ人は特に「#BlackLivesMatter」というハッシュタグで自分たちの人生が尊いものだと主張した。

3月半ば。土曜の夜の人気番組「サタデーナイトライブ」で、スカーレット・ヨハンセン扮するイヴァンカ・トランプの香水コマーシャルが流れたことが「complicit」という単語が注目を浴びるきっかけとなった。

スカーレット・ヨハンセンは、トランプ大統領を真似してコケにするアレック・ボールドウィンと共に、以前からイヴァンカを批判していたハリウッド俳優の一人だったが、SNLでは、自らがイヴァンカのコピーをし、トランプ大統領にもっとも影響力を及ぼすことのできる娘兼顧問であるにも関わらず、様々なことで声をあげなかったことは罪深く「トランプ大統領を野放しにした第一共犯者である」とメッセージを送ったわけだ。

 

 

次の日には、香水の名前となっていた「complicit」が検索ボリュームで一気に跳ね上がった(dictionary.com の統計によると1,000%増し)。

この辺りからアメリカ政府への不信を表す手段として「complicit」というイメージの悪い言葉が登場し始めた。

4月に行われたCBSの朝の番組のイヴァンカ本人に対するインタビューでは

「もし共犯っていうのが、良い意味での影響でいたいということであれば、そうね、私は確かに共犯しているわ。誰が言ったのかは知らないけれど、その言った本人がもし私と似たようなこのユニークな境遇におかれたら同じことをしていると思う。そもそも、complicitって言葉の意味、知らないけど。でも、私自身は自分でよくやっていると思うし、そんなことよりも父の政治が絶対成功するってこと、そしてそれが証明される時がいずれ必ず訪れるってこと、私は信じてます」

と言っていた。

 

 

えっ?

とここで再び「complicit」の意味を検索する国民が続出した。しかも今回の検索は前回にも増して11,000 %アップになったらしい。

最初にも書いたように「complicit」とは、決してポジティブな意味では使われない。モノは言いようということもあるが、言葉の意味や使い方を誤って、国民を困惑させるのはかなりいただけない。

コンウェイの「alternative facts」発言の時も思ったが、少しでも周りの人に「え?」と思わせる要因があるというのは、リーダーとしてはもうアウトなんだから。

そして最終的には「意味なんてわからない」と言い放つイヴァンカのキャラは所詮キレイどころのソーシャライトで止まるべきで、一つの国を率いるトップの器ではない。

イヴァンカ・トランプは、アイヴィーリーグの一つである名門ペンシルバニア大学を優秀な成績で卒業しているはずなのだが、実のところ失言が多いことも指摘されている。

それも内容的失言ではなく、基本的単語の使い方だったり明らかに意味不明の間違った文法など、英語が母国語でない私でも気がつく間違いだったりするので、驚くばかりだ。

本当に才女なのか?
成績上位5%の生徒のみに与えられるsumma cum laudeもお金で買えるのか?

と、彼女のインスタをフォローする一般アメリカ国民の中でも、最近はイヴァンカへの評価は怪しいものとなりつつある(多分)。

8月にバージニア州シャーロットヴィルで起きた白人至上主義団体と反対派が衝突した事件の直後には、事件に対するトランプ大統領の発言が原因でアーツ&ヒューマニティー委員会のトップが辞職した。

「あなたの挑発的な発言を聞かない振りをすることは私たちを同じぐらい罪深いもの(complicit)としてしまった。国内外のどんな障害(敵)に対しても我が国の憲法を守り抜く忠誠を誓ったのに」

ボスを信じることができない職場ほど辛いものはない。アメリカ在住者としては他人事ではないのだけれど、なんともお気の毒だと思わざるを得ない辞職だった。

トランプ大統領の共犯にはなりたくないと思った政治家は彼だけではない。

10月になると、アリゾナ州の上院議員(ジェフ・フレイク)は「I will not be complicit.」という引退表明と共にトランプ陣営から退いた。

「私には子どもや孫もいる。彼らにしっかりと答えられるかどうか。それを考えると、私はもうこれ以上、大統領のそばにはいられない」

ということだった。

政治家の中にもとてもいい人だと思われる人がいるものだ(それか、自分の不正やセクハラがバレる前に引退しちゃえ、ということか?)。

11月にはNFLアメリカンフットボール選手が試合前に演奏される国歌へ起立せず、黒人への差別や暴力に対する抗議として膝まづいていたことに対しても国中が大きくざわめいた(この行為は昨年コリン・キャパニック選手が警察暴力に抗議して国歌演奏時の起立を拒否し膝をついたのを機に始まったものでそれ以来多くのスポーツ選手が賛同している)。

フォックスニュースの看板キャスターは

「選手のしていることは、国家や国旗への侮辱でもなんでもない。トランプ大統領への抵抗であり、黒人を差別する我々社会への挑戦にしかない。そういう意味では、我々だって共犯だ(complicit)」

と言った。

選手に対してトランプ大統領が怒り狂って暴言を吐いたこともあって、ソーシャルミディアは#TakeAKnee ハッシュタグと共に炎上。

無名だったカントリーシンガーがアップした「Take a knee… my ass」という動画の観覧数も話題になった(このシンガーは、自由を信じ黒人解放には賛同するけれども、やり方として全米中継のTVで国旗の前で膝まづく行為はプロフェッショナルではない、と訴え、両意見が対立した)。

 

※お住いの地域によっては再生できない場合があります

 

いろいろと、これだけ見ていても2017年は、人々の怒りや感情が入り乱れる激動の年だったと言える。

しかし2017年は、このような抵抗がしっかりと短期間で成果をあげた年だったとも思える。これについては、暗い中にも光が差し込めていたように感じる。

6月に公開された映画「ワンダーウーマン」が興行的にも大成功を収めたことは女性としては誇り高い。#WonderWomanは、今年のハッシュタグの中でももっとも人気の高かったものの一つとなったし、ソーシャルミディア上ではワンダーウーマンの真似をして背中に剣を入れた写真をアップするというハッシュタグゲームで「#WWGotYourBackチャレンジ」が女性の間で大流行りした。


きゃー、このシーン。ワンダーウーマン、かっこよかったね!
ソーシャルミディアではウケを狙ってとんでもないものを入れた写真を撮ってアップしている人もいた。


例えばこの人。
なんですか、これは?しかし、ネットでは「Love it! You’ve won the Internet!」と絶賛。

 

フェミニストのみならず、世界中の有志たちが立ち上がり、第2のウーマンズリブとして明らかに世界に影響を及ぼすことができた年である、とも言われている(*現実にはまだまだ残された課題は多いけれど)。

2017年は、権力で政治や人々をコントロールするという動きが顕著になったことで、それによって押さえつけられていた弱者たちが力を合わせ抵抗を始めた。

その成功例が、10月以降に次々とニュースで取り上げられたセクシャルハラスメントで虐げられた人々のカミングアウトとそれに伴う告発だ。男性社会の権力者たちが叩き上げられ、不正がどんどん明るみになった。

有名女優や著名人が立て続けにセクハラされた経験を#MeTooハッシュタグでカミングアウトした。
英語圏ではそれはそれはショッキングな現象となって拡散し、隣近所で毎日顔を合わせる人たちの不幸で悲しい屈辱的経験までをも知ることになったのだから、毎日ソーシャルミディアをチェックする度にドキドキしてしまう、という状態に私自身も陥った。

多くの女性たちが傷つき抑圧されていたことが再確認され、同時に、地位と名声を手に入れた男性成功者たちの人生転落劇を目の当たりにした。いずれにしてもなんだか悲しい。

長い人生、どうなるかわからない。毎日の行いこそがその人の運命を決めるわけで、やはり悪いことをすると必ず償う時が来る、ということを痛感した。

今年はそういう意味ではいろいろと人の失態や失言から学ぶことが多かったような気もする。

そして、このような権力や圧力により世の中に強者と弱者ができてしまうことは絶対的に間違っており、今まで知っていたのに黙っていた人たちからの「自分たちも共犯(complicit)であり、申し訳ないことをした」という反省コメントも後味悪く耳に残る。

私も人生を振り返り思い当たる節がなきにしもあらずだ。
反省に値する部分はしっかりと反省し、そしてきれいさっぱり浄化して、新しい年を迎えたい。

経済的にまだまだ不安は続き大統領は相変わらずお騒がせだが、それでもニューヨークのストックマーケットは上昇する一方。勿論、嬉しいことではあるし、このまま伸び続けて欲しいと思うが、どこかでこれも黒幕が操っているのかも、と思わずにはいられない。

ビットコイン」の高騰ぶりは、すさまじいしねぇ。なんだか怪しい世の中なのである。

さて、来年はどうなることやら。

2018年は気分も新たに、もっと前向きに素晴らしく大きな飛躍の年となることを期待したい。

その他2017年話題となっていた言葉・造語:

Finstagram / Rinstagram:日本では「インスタ映え」が流行語となっていたようだけれども、アメリカではもう一歩先を進んでいる。「インスタ映え」する超理想的美しく素晴らしいビジュアル系写真を投稿するのはもはや時代遅れか?それよりもこっそりアカウントを作ってそこで恐ろしいほどの醜い写真や面白い写真を投稿するのがホットとなっているらしい。
可愛くて美形の女の子のアグリーフェイスほどライク獲得が多く、ティーンの間では大流行。で、そういう秘密のインスタアカウントのことを「Finstagram」(Fake Instagram)と呼ぶわけで、Real InstagramRinstagram) とはしっかりと区別されているらしい。
子どもたちがセルフォン片手にニヤニヤしている場面に遭遇したら、大体はそういう写真を見て笑っている、と思っていい。大人にはよくわからない世界が繰り広げられているんだから。

metrosexual:つまり「インスタ映え」目指して自分磨きに命をかける都会派の洗練された男子のことで、代表者はなんと言ってもデイビッド・ベッカムやジョージ・クルーニー。エステに通い肌を整え、ジムでは体を鍛える。これは、できる男としては当たり前のこと。今や男子も美しくないといけない時代なのですね。
ここで、えー?と思った人、既に時代から取り残されてる感ありで要注意。政界でもオシャレなヨーロッパは進んでます。
5月にフランスの大統領となったマカロンや、10月に史上最年少で首相となったオーストリアのクルツだって、このカテゴリーに入るらしい。特にクルツはイケメンで、彼のインスタでは、政治活動だけでなく、ファッションなどにも注目されている(らしい)。

intersex:ベルギー人でニューヨークを基盤とするファッションモデルのHanne Gaby Odieleが今年の始めにカミングアウトしたことにより注目された言葉。男女両方の性を兼ね備えて生まれてきた両性具有のこと。かなりショッキングな発言だった。
先日3年ぶりに復帰した世界を舞台に活躍する日本人スーパーモデルの富永愛は「最近は、ファッションモデルもスタイルがいいだけでは生き残れなくなってきた」と言っていたようだが、その発言の背景には、今までのファッション界ではありえなかった肥満やトランスジェンダー、ダウン症などの少数派マイノリティーで、外見内面またはその両方の病気や疾患と戦う人たちが受け入られ始めているということがある。
Hanne Gaby Odieleのカミングアウトは、痩せていて美しいだけでなく、もっといろいろな意味でユニークなモデルがいてもいい、という部分でファッション界の美の定義の幅を広げたのではないか、と前向きに捉えられているようだ。

totality:2017年8月。北アメリカ大陸横断皆既日食が見られるという快挙があった。この言葉は「total eclipse」同様天文用語で皆既日食という意味。80年代を懐かしむ世代としては、ボニー・タイラーの歌を思い出したりしてたんだけど。個人的に「totality」という言葉を知ったのは、この歌のお陰だった。
彼女、今はどうしているのかな?と検索したら、しっかりとこの時期、この歌で稼ぎまくっていたようだ。さすが(w)。次回アメリカで観測される皆既日食は2024年。その次は2045年。ボニーもまだまだ長生きしないと!

 

 

shrinkage:同じく夏の頃、ニューヨーク避暑地のハンプトンズにある家が売りに出されたことで脚光を浴びた言葉。この家は、90年代に人気だったニューヨークの独身貴族が描かれたシチュエイションコメディー「サインフェルド」の撮影にも使われたことがあったようで、「shrinkage」という言葉はその家が登場するエピソードで主人公ジェリーの親友の一人であるジョージが自分のペニスが縮こまっていたのは、入っていたプールの水が冷たすぎた為だと言い訳するシーンで使われた。
典型的ニューヨークのバチェラーだったジェリーも今や60代の妻子持ちとおさまっている。
しかし彼はまだまだ現役で、2015年には「もっとも稼いだコメディアン」としてフォーブス誌で堂々1位にランクされていた。稼いだ額は約3600万ドル(43億円!)。

stashed / stashing:ミレニアル世代のデート用語。昨年の流行語「ghosting(とんずらする・理由も告げずに急にいなくなる)」に代わるものがこの言葉。意味としては、付き合っているのにいつまでたってもソーシャルミディアでアップしない(またはしてもらえない)状態のこと。
一時は、ミレニアルたちは、誰よりも先にソーシャルミディアで恋愛ステータスを公表し恋人とのラブラブ写真をアップすることが競い合われていたようだが、そういう彼らも年を重ねて経験を積んだわけ。
今は、どうせまたすぐ別れるだろうし、いちいちソーシャルメディアにも出したくない、という人たちの方が多いらしい。特にオンラインで知り合った人は共通の友達もいないからゴーストしやすい(されやすい)しね。
あー、コレ、あるある(💦)、と頷く人も多いのでは?

上山仁子のHP:http://www.hitoko.com/

上山仁子のブログ:http://ameblo.jp/nymommy/

アメリカノースカロライナと近郊在住日本人による生活娯楽情報発信サイト : http://ノースカロライナ.com/