ニューヨークからプロライター達がお送りする、「ここだけ」のおもしろ情報。

No.101 軍人たちが脚光を浴びる愛国的なアメリカ最大のNYベテランズデーパレードで平和を訴え、ニューヨーク5番街を行進した唯一の日本市民団体、そして謎のピエロとは?

On: セレブの小部屋

11月11日(ベテランズデー)はアメリカ全土をあげての祝日。
戦争中にアメリカ軍に従事していた軍関係者、退役軍人らに敬意を表する日だ。

1918年のこの日、第一次世界大戦が終結したことから、毎年この休戦記念日に復員軍人を称える目的で、ニューヨークでは1919年からパレードが開催されてきた。

今年、第99回目を迎えたベテランズデー。
パレードのグランド・マーシャルには、アポロ11号で月面着陸したNASAの宇宙飛行士、空軍の軍人だったバズ・オルドリン氏が選ばれ、今年も5番街を悠々と軍服に身を包んだ人々が行進した。

ところが、そんな由緒ある全米最大のニューヨークのベテランズデーパレードに今年はなんと、軍人でもないアメリカ人でもない日本人市民たちが復員軍人たちと一緒に観覧者たちが見守る中、大通りを行進したのだ!


沖縄の辺野古新基地・高江ヘリパッドに反対する「沖縄ピース・アピール(OPA)」

その名も「沖縄ピース・アピール(OPA)」
沖縄の辺野古新基地・高江ヘリパッドに反対し『ジュゴンを救え』のスタンディングアクションをニューヨークの日本総領事館前で開催してきた少人数のNY在住の日本人活動家たちだ。

米軍基地を建設するなと訴えてきた私たちが、米軍に敬意を示す復員軍人パレードに参列したとは、いったいどういうことか。

兵士として戦争体験した人たちの中には、戦争の無残さと理不尽を痛感して、表向きの戦争の理由と、経済がらみの真実との違いに気づいた人たちがいる。

そんなベトナム、アフガン、イラクに従軍した元アメリカ軍兵士たちが「二度と間違いを繰り返さない、戦争や武器は平和をもたらさない」と立ち上がって設立した団体が「平和を求める退役軍人たち Veterans For Peace(ベテランズ フォー ピース)」だ。メンバーは沖縄へも出向いて基地建設反対も訴えてくれた。

この平和団体「VFP/ベテランズ フォー ピース」が、他の平和団体をも招き、私たち日本人も彼らのサポーターとして行進することを許可されたのだった。


キャプション:謎のピエロと共に5番街を行進する日本人たち
Photo by Hideko Otake

軍人として人殺しをしてきたかもしれない人たちが目覚めるとき。
その変換に私は惹かれる。

戦場のリアルを知る彼らが平和を訴えてくれることに、私は平和への希望を見い出す。

だから、平和を願う私は過去にも、平和の象徴のハトをあしらった彼らのマークである旗を風になびかせる「VFP/ベテランズ フォー ピース」と一緒にプロテストをしたり、今年だけでなく2年前もベテランズデーパレードでマーチした。


「平和を求める退役軍人たち Veterans For Peace(ベテランズ フォー ピース)」

今年も、そして2年前も、ベテランズデーパレードで誰よりも目立っていたのは、謎のピエロ!

パントマイム俳優ケビン・オーガスティンは、今年もボロボロになった兵士のピエロになりきって、無言で、戦争の悲惨さと非暴力を訴えた。

彼の動作と姿が、反戦を強烈に訴えていた。


謎のピエロを演じたパントマイム俳優ケビン・オーガスティン。Kevin Augustine at 99th Veteran’s Day Parade

「11月11日は、第一次大戦の休戦日として世界平和に捧げるためにスタートした祝日なんだ。ところが第二次世界大戦後、この日はベテランズデーとなり、軍隊を称え戦争を美化する、軍国主義を示す日となってしまった。

そんな中、VFP/ベテランズ フォー ピースは戦争の犠牲とコストを世間に知らせ、我々の政府の他国への軍事介入を抑え、軍拡競争を終わらせ、核兵器をなくし、復員軍人たちと全ての戦争犠牲者たちへの正義を追求し、国として戦争をなくすことを目的とする団体だ。

だから僕は、彼らと共にマーチするんだ」

と、ケビン。

「僕は、彼らと同じ使命にあるから。非暴力の解決法を通して平和をプロモートする使命だ。
軍国主義はこの世界で一番のバイオレンス提供者なのだから」

でも、私たちは軍国主義の栄光を称えるアメリカ人たちに囲まれていた。

軍産複合体は、アメリカ最大の巨大ビジネスだ。
テレビネットワークや紙媒体のオーナーやスポンサーは、しっかりと軍事産業と繋がっているから、彼らが取り上げるのは商売にならない「平和」を訴える人たちでなく、「敵の脅威」と恐怖を煽る報道だ。

私たちがお偉い方や主流マスコミが陣取る42丁目のニューヨーク図書館前を行進するときには、反戦の声をあげる私たちをサッサッと追いやろうとする空気が感じられた。

「お国のために」と人殺しを正当化し、愛国心を煽りたてる風潮のあるベテランズデーパレードで反戦を訴えるのは異色なこと。

じつに今年、同じニューヨーク州でもビンガムトンの街では「VFP/ベテランズ フォー ピース」がベテランズデーパレードに参加することを禁止されたのだ。

復員軍人を称えるパレードに、復員軍人の団体が拒否されるのだ。

ニューヨーク市でも、2015年のベテランズデーパレードでは、団体名のバナーは許可するが、平和メッセージのサインは禁止だとチェックが入った。

パレード出発前に係員が私たちを厳しく監視し、平和のメッセージをマジックペンで手書きしたTシャツを着ていた退役軍人が「そのTシャツを着ては行進できない」と告げられるのを私は目撃した。

私の持参した「No War」のサインもダメだと言われたので、その年には私は平和を訴えるおばあちゃんたちの団体「Granny Peace Brigade」の女性と共に、彼女たちの団体「Granny Peace Brigade」と書かれた黄色いバナーを掲げながら行進した。


「Granny Peace Brigade(おばあちゃん平和団)」


「Granny Peace Brigade(おばあちゃん平和団)」
は、毎年「VFP/ベテランズ フォー ピース」に招かれて行進する。

反戦運動のイベントにも、彼女たちは必ず出没する。

この年配のおばあちゃんたちのフットワークの軽さにはいつも驚かされる。
罪ないイエメンへの非人道な戦争の反対運動を毎週土曜日、行っている彼女たちは、今年はパレード集合時間の12時半の前に、すでに朝ユニオンスクエアで抗議活動をしてからやってきた。

そして、可愛らしく平和への思いを歌にして合唱する彼女たち。

パレード参列中も陸軍士官学校に通う中高校生たちの参加者たちの横で「私たちはもう戦争を勉強するのは止めるわ〜」と合唱。彼女たちにつられて、一緒に口づさむ制服姿の学生がいたのが微笑ましかった。

本当に軍人たちのことを想うのであれば、彼らを戦場に送らないで。
彼らを戦場から帰途させてあげて。彼らの命を奪わないで。

人を戦闘マシンにする訓練を受け、人殺しという地獄を体験した彼らの多くが精神の病に襲われ、元兵士の自殺が毎日後を絶たない事実を改善するためにも、戦争はあってはならないもの。

私たちは、平和を求める退役軍人たちの団体の傘下で、それぞれの思いを抱いて行進したのだ。

平和を訴える異例のグループである私たちに向けて観覧者たちから拍手が起きたり、沖縄の基地反対のバナーを手にマーチする日本人に向けて「オキナワ! イエス!」と声がかかったときには目頭が熱くなった。


「沖縄ピース・アピール(OPA)」の『ジュゴンを救え』のポスターを手に、
「VFP(ベテランズ フォー ピース)」グループの先頭を歩いてくれた退役軍人

軍人のピエロ姿で訴えたケビン・オーガスティンが語ってくれた。

「だが、退役軍人でなくても僕たちは毎日、日々の生活における選択で、平和を見いだすことができると思う。言葉の選び方、思考、食事、そして人間性に対する謙虚な見識において」

菜食主義でもあるケビンは、そんなテーマを用いて自分一人で「ローンウルフ・トライブ/Lone Wolf Tribe」という名の劇団を設立してピエロのショーを披露し、非暴力を日々、訴えている。

copyright: Yuka Azuma 2017

Featured Photo Credit: Captured Heart Peace via photopin (license)

 
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