ニューヨークからプロライター達がお送りする、「ここだけ」のおもしろ情報。

選挙の季節

On: ヒトコの小径

日本では衆議院総選挙でいろいろと盛り上がっているようだけれども、アメリカでも夏頃から今の時期にかけては、来月11月7日の本選挙に対する予備選挙(primary election)が各地で行われており、かなり騒がしい。

と言ってもここでは、街角での候補者の選挙演説などはないし、候補者が歩行者にビラを配る様子も見られない(うちのあたりじゃ人、歩いてないしねー)。

ニューヨークなどの大都会では政治的目的で使用されるサインについての規律が厳しく、街並みが選挙によって影響されることもないので、多分、気が付かない人は気が付かないと思う。

それがちょっと車を飛ばした郊外になると、信号機のある大きい交差点や運転中に目の引くあたりには、選挙の時期になると必ずと言って候補者のサインがずらっと並ぶ。それがかなりの量で、多分気が付かない人はいないと思う。

いつもは何もない交差点なのに、このようなサインが立ち並ぶと、あぁ、そろそろ選挙の時期なのだな、と嫌でも気が付くことになる。

信号で赤になった時に、そのように並ぶ候補者のサインにふと目が行くわけで、一人で運転している時には、確かに候補者について考える絶妙なタイミングになるわけだ。


例えばうちの近所のラウンドアバウトは、こんな感じ。

こういうものは、郊外の車社会にある独特の文化かもしれない。
大体、シティー内では、街中がコンクリート張りなので、サインを立てる、ということもなかなかできないと思うけど。

一歩郊外に出ると、ニューヨークでも庭付き一戸建ての家を所有している世帯は、ごひいきの政治家のポスターやヤードサインを庭に掲げるご家庭もあり(州や自治体によって選挙活動・支援に関する法律が違います)、支持する候補者によっては、かなり引いてしまう時もある。

大統領選が激しく行われていた2016年の夏に、ロングアイランドの親戚宅へ遊びに行った時には、リベラルだと思っていたニューヨークでも、保守派が多い郊外では「トランプ」支持を主張するご家庭の多かったことに驚いた。子どものグランパ宅はほぼ95%があり得ないと思っていたトランプ派であり「Make America Great Again!」サインがやたらと目につき唖然としたことも記憶に新しい。

政治や宗教の話はディナーテーブルではしない方がいい、というのはもう過去の話になっているのかもしれない。

親戚一同が集まったその年のサンクスギビングディナーでは、私が記憶する限りでは、今まで彼らと祝った過去のサンクスギヴィングを振り返っても、相反する政治的見解で最も白熱して激しい会話のやり取りがなされたが、それと同時に最高に楽しくて心に残るものとなった。

一般的にも、一人で食事をしながらソーシャルミディアで政治や哲学をバシバシ投稿し、自分たちの主義主張を訴えるのが、今の世の中では当たり前となっている。

昨年の大統領選では、あまりにもそれが行き過ぎてしまい、知り合いの中には選挙が終わるまで、FBはなるべく見ないようにした、と言う人も続出していた。

さて、今年の選挙は、市議会員と市長の選出だ。
11月の本選挙まで残る候補者を絞るのが予備選挙の目的だった。

ニュースでは話題になってないだけで、実はかなり多くの候補者がいたことが、交差点にあるサインを見ていてもわかる。

ニューヨーク市では、一足早く予備選挙は終了し、第2期目を狙う現市長のデブラシオ氏など候補者も絞られた。デブラシオ氏は、市長としての評判はそれほど良くないにしても、知名度や業績ともに彼を上回る候補者が出てこないというのがニューヨーク市の悩みのタネだ。

10月10日には、さっそくNY市長選最終候補者たちのディベートが行われていたようだが、大統領選でのディベートの時同様、内容はイマイチ質が悪く、国民からはやや冷ややかな目で見届けられていたように思う。

私が働いているダーラム市では、2001年から16年間市長として勤めてきたビル・ベル氏の引退表明もあって、新しいリーダーに誰が選ばれるかがちょっとした騒ぎとなっていた。

ダーラム市はメディカルスクールで有名なデューク大学のホームとなっている場所であり医療関係の施設や機関がとても充実している。

そのために同じく昔から薬や売薬商業で街が栄えた日本の富山市とシスターシティーの関係にある。ベル氏のオフィスには日本人形や扇子など富山市に縁のある民芸品がたくさん飾ってあるのだが、日本びいきの市長さんだったので、任期が終わってしまうのはなんとも寂しい感じがする。

ベル氏いわく

「何にでも終わりはつきものさ」

と言うことだ。

そういう寂しさの中、ダーラムの街の再生を引き継ごうと新しい市長候補者が次々と名乗り上げていたのだけれど、何と言っても話題となっていたのが、若干33歳の若手ピアス・フリーロンだ。


元モデルだけあって、かなーりかっこいい。

最初の資金集めでも経験豊富の2人の候補者をぐーんと抑えてダントツトップで100Kドル近い金額を一人で集め好調な出だしを切っていた。

(比較的貧しい地区である)ダーラムにしては珍しくかなり「expensive」な選挙戦となっていると皮肉を込めて言われていたが、それもそのはず、ピアス・フリーロンは地元で人気のジャズヒップホップアーティストでありUNCチャペルヒル校の講師でもあるのだが、父親は全米でも著名な建築家フィリップ・フリーロン、母親はグラミー賞にもノミネートされたことのある世界的ジャズシンガー、ニーナ・フリーロンなのだから。

結果的には10月10日の予備選挙では、やはり本命の2人が勝ち抜き、フリーロン氏は後退することになった。しかし、多大な話題作りに一躍買ったことは確かで、この選挙戦への花を添えたという業績としては大成功だったと言える。

アメリカでも芸能人が出馬する時代となったのか。
トランプ氏が大統領となった今では、もう政治の世界でもなんでもあり、という気がする。

フリーロン氏については、ヒップホップシンガーということを利用して、今まで政治に興味のなかった若者や低所得者にどこまでアピールできるかどうかが、今回の選挙のキーだったはずだが、ダーラムには英語が喋れないヒスパニック系の人たちも多く、インターネットを利用しない彼らにはソーシャルミディアでの選挙活動もなかなか届かず、やはり経験豊富な政治家たちに惨敗する結果となってしまったのが、非常に残念だった。
今後の彼の活動に期待したいところだ。

さて、まだまだ本選に向けて最終候補者たちの選挙活動は続くことになるが、日本同様、信頼できる専門家がしっかりと選出されるかどうか注目したい。

フリーロン氏のインスタグラム。
https://www.instagram.com/piercefreelon/

それほどフォロアーが多くないのもソーシャルミディアを利用しない世代に支持者が多いから?
しかし他の候補者たちに比べるとフォロアー数も圧倒的に勝っているのだけれど、その辺は、やはりまだまだノースカロライナの田舎の地方議員だからという気もする。

フリーロン氏のインスタのプロフィールの部分で、「ハスバンド」が最初に来ているのは非常に興味深いと思った。

多分、それが彼の自分の中の比重なのだと思うが、どの政治家がこの「夫」ということをプロフィールで一番最初に入れているだろう?と想像する(大体男性ではこの「夫」という肩書は入れない人も多いのでは?)。

インスタグラム上で公表されているプロフィール比較:

  • Barack Obama Dad, husband, President, citizen. www.obama.org
  • President Donald J. Trump 45th #POTUS🇺🇸Home of #TeamTrumpBTS {Behind the Scenes} & so much more. Join us! Together, we will #MakeAmericaGreatAgain & put #AmericaFirst🇺🇸
  • Hillary Clinton Doting grandmother, among other things. www.amazon.com/Takes-Village-Picture-Book/dp/1481430874
  • Michelle Obama Girl from the South Side and former First Lady. Wife, mother, dog lover. Always hugger-in-chief. www.bettermakeroom.org/up-next

一般的な社会では、女性の場合「妻」であるというのは、一つの仕事であると見なされることが多いと思う。そのために「妻」である人が他で仕事をしていると「すごい」となることもあるが、「夫」の場合はそんな風に言われることは皆無だ。

その理由として2つのことが考えられると思う。

1)「夫」が仕事で成功するのは、常に期待されており、ある意味正しい(=当たり前の)ことだから。
男尊女卑の男性社会では、男性の方が優遇されているが、その分「夫」である男性は家族を守るのが当然の義務である、という考え。

2)「夫」としての役割がそれほど重要視されておらず、仕事として見なされていないため。
それゆえ「夫」が外で仕事をするのは何の障害もない、という考え。

「妻」「夫」を支えるのが仕事であるが「夫」「妻」を支えるのはどうなのか。このところは、成功している女性の影には必ず理解のある立派な「夫」がいるというようにもささやかれるようになっているが、社会的な夫の役割としては、まだまだ認知されていないと思う

最近は日本でもイクメンという言葉も登場し、家庭で夫婦(男女)の立場が逆転している場合もあり個人的にはとてもいいことだと思っているが、蓋を開けると親戚、さらに大きく社会などの「外部」から、冷ややかに見られていたり批判されたりすることもあるらしい。

男性有利の社会は男性にとって都合のいいように働くことが多いが、それが相当のプレッシャーになったり、逆に本当にやりたいことができなかったりすることもあり、ある意味お気の毒でもあると言える。
なかなか一筋縄ではいかないのが世の中の常、ということか。

プロフィール欄でここまで考えるとはね。
いや、でもこれはかなり大きな問題だと思う。

フリーロン氏の場合は、おしどり夫婦としても仲の良さが評判の両親からとてもいい影響を受けていると思われるが、彼自身も本当に妻を大切にしているいい夫であるように思われる。

なので、このプロフィールはごく自然に出てきたものかもしれない。

が、意識を変えて努力をすれば意識した方向へ向かえるはずだ。
こういう小さな部分でも一人ひとりが変わっていけば、もっと住みやすい社会がそこから広がっていくのではないかなと思う。

上山仁子のHP:http://www.hitoko.com/

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