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No.99 地位なんて、人なりには関係なし!ガイ・リッチー監督と会えば「マドンナの元ダンナ」というイメージも覆る〜

On: セレブの小部屋

マドンナ。そのオーラといったら! 
いやあ、これがスターというものなのねー、と圧倒される大スターだった。

多くのスターたちにインタビューしてきたが、部屋の隅々まで震動するような影響力で空気が変わるのは、マドンナだけだった。
これこそ美魔女、その本来の言葉通りなり。

ショーン・ペンと離婚後、さらにじゃじゃ馬のようなワイルドさを増した。
セクシーでパワフルな音楽界の女王様は、子供が欲しいと思ったら、結婚相手でなく種男(と呼んでいいものか)を求めた。そんなマドンナに、また結婚したい、と思わせた男って、いったい何者? 

ガイ・リッチー

『シャーロック・ホームズ』シリーズなど素晴らしい映画を監督してきた監督/脚本家であるのに。そしてマドンナとは2008年に離婚し、いまは長年付き合ってきたモデルの奥様との新婚生活を楽しんでいるというのに。
どうしても「マドンナの元ダンナ」という目で、ガイ・リッチーのことを見ていた私。

そんな彼に、現在、日本公開中の監督作『キング・アーサー』の取材で会う機会に恵まれた。そして、第一印象。

「こんなにひょうきんな人だったとは!」

一気に、抱いていたイメージが崩れる。おどけ顔で、回りの人達を常に笑わせている楽しい人なのだ。色で言うと、純粋な「白」のイメージ。

『キング・アーサー』の主演チャーリー・ハナムと同席した取材では、伝説の王キング・アーサーを演じるチャーリーがあまりにもハンサムなので、女性からの受けもいい映画になった、という話が出た。

でも、素敵なルックスであるからこそ、かえって困難だという場合もあるのではないかと聞かれて、正直なチャーリーは真剣に答えていた。

「僕がハンサムであるということで、ある程度、良い機会がクリエートされたであろうことは認識している。ビジュアルな媒体だからね。
だが、ルックスだけでは遠くまではいけない。ルックスのおかげで、ドアの前までは行ける。だが、そのドアの向こう側へは飛んでいけない」

すると、隣に座っていたガイ・リッチーは、「それは、真実だと、僕は思うね」と、ハンサムでないのに、自分がハンサムだと言われたフリをする男として、ひょうきんな表情で記者たちを笑わせた。

「それは僕も同じように感じていることだから、同じ質問を、次に僕に浴びせてくれてもいいよ(笑)」

ところが、その後、彼らは違う質問を何度も浴びさせられることになる。


2017年6月17日に日本公開された新作『キング・アーサー』

一人、この映画を気に入っていないようで批判的な記者がいたのだ。
この同席したヨーロッパの記者がかなりシツコク、「キング・アーサーが纏う天使のような白い衣装が劇中、なぜ汚れず綺麗なままだったのか」と聞き続けた。

白い衣装を光り輝かせていたチャーリーは、「うーん。僕には、いつも僕の側について旅してくれる執事がいるのだろうね」と、困ってしまう。

すると、ガイは、マンガのキャラクターのような表情豊かな顔で、助け船を出す。

「あなたが目にした”白”は、白じゃないんだ」

そして、あの白は、全てのものに対する”対照”であり、1000年以上昔に戻っても、綺麗に保つことは可能であったということを、衣装担当と話し合った結果だった、という真面目な回答をしてくれた。

「ストレートの男が小綺麗に自分を保つということは、”自分は清潔だ”ということで自分は偉大なキャラクターだ、と主張するケースだったと思う」

そして、話し終えた後、「ヒュー、うまく切り抜けたね」と、汗を拭く動作をして笑わせる。

頭の回転が早く、しっかり真面目に答えてくれる知的な男性なので「フー! ちゃんと答えられたね」と、その合間に見せるひょうきんさに、まわりはホッとなって笑ってしまうのだ。

チャーリー・ハナムが言うに、撮影前に監督から言われたことは一つ。

「とにかく楽しんで仕事をしなきゃならない。君が楽しんで仕事をすれば、それが映像にも表れるからね」

と、ガイは主演俳優に言ってきたというのだ。

道理で、インタビューの時さえ楽しいわけだ。
そんなボスの元で働くのって、最高じゃない?

「女子らは素敵なチャーリーのことをちやほやすると分かっていた。だが、女性だって男性キャラクターに共感したいと願っていると思うんだ。
女性たちは傷つきやすくなれる男性は脅迫的だと思わない。真っ赤な血闘男でも、女性的な部分も器の中に持ち合わせていると感じるだろうから。そんな彼の女らしい側面を出していきたかった」

本人には、ただ楽しんで、と伝えながら、監督にはしっかりビジョンがあった。

聖剣エクスカリバーを手に、暴君に立ち向かうキング・アーサー。
だが、アーサーは勝利を勝ち取った大人としてではなく、その社会に生きる一人の若い男として描かれている。

「僕が興味を持ったのは”傷つきやすくなれる逞しい男”を捉えること」

と、ガイは語る。

「これは、どの男にも通じるストーリーだと思うんだよ。キング・アーサーは、スラム街にいた時も、剣を抜いて王座の地位へとついた後も、同じ人間なんだ。スラムにいた時の彼は、王様になった時と比べて価値が少なかったわけじゃない。
”幻想”が、彼の価値は違うと思わせているだけなんだ。
彼が謙虚に、根源というものを保ち続けたなら、誇大になる仰々しさの危険から逃れることができる」

階級制度のはっきりしたイギリス社会で育った彼、世界の大スターたちの親友でもある彼。
でも、ここに、彼が仰々しくない、地に足をつけた人間でいられる理由がある。

「もし、あなたが、自分の地位や状態が自分をもっと重要な人間にするものだと信じていたなら、それは、ただの嘘でしかない。その嘘が、人間性というものを最も大きな苦境に追い込む原因なんだよ。
そしてそれは、人間が自分自身に対して、そして自分の仲間達に対して、親切になれない理由だ。なぜなら、そんなことを信じている人は何がしら階級制度というものを信じている、ということだから」

copyright: Yuka Azuma 2017