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No.56 メット・ブロイヤーの未完の作品展「Unfinished」では、アートなキャンディを食べるべし!

On: 生にゅー! 生のNYトレンド通信

メトロポリタン美術館の別館として3月にオープンしたメット・ブロイヤー

もとはホイットニー美術館の建物で、ホイットニーミートパッキングに移った後に、その建物にまんまメットのコンテンポラリー美術部門が移ったもの。

Breuer は、この建物を手がけたモダニズムの父ともいわれる建築家、Marcel Breuer(マルセル・ブロイヤー)から取っていて、「ブロイヤー」と発音します。

さて、このメット・ブロイヤーでは現在、話題の展覧会「アンフィニッシュト」が開催されていますので、ご紹介しましょう〜!

建物は当たり前だけど、ホイットニーのまんま。
赤い幟で、METとやたら強調していますね。

なんとなく商店街の売り出しセールみたいともいうよね。

中に入ると、一階の奥ではTony and Amie James Galleryで、日本の芸術家、宮島達男のインスタレーション、「Arrow of Time (Unfinished Life)」が公開されています。

ひっそりと光っている赤いLEDの小部屋が幻想的で、きれい!
ぜひ立ち寄ってみて下さい。

そして話題を集めている展覧会が「Unfinished: Thoughts Left Visible」すなわち「未完:目に見える形で残された思考」展です。

おおおおー、いきなりピカソ

すごい、セザンヌもいっぱいある!

色番号が塗り絵みたいに書き込んである作品も!

こちらはゴミではなくて、芸術作品です。
しかし置き場所が非常階段の近くなので、マジでゴミに見える(汗)

こちらにあるのは、キャンディの山!
うおおお。マジ? なんなの、これ。これが芸術!?
ワケわかんない!

これはキューバのアーティスト、Felix Gonzalez-Torresの作品で「Untitled (Portrait of Ross in L.A.)」 (1991)

じつはこのキャンディの山、食べてもいいんだそうです!!!!
というか、観客がそうやって参加することで完成するインスタレーションらしい。

この175ポンドものキャンディがだんだんなくなっていくのが、作者のパートナーであったRoss Laycockがエイズに冒されて、だんだんと弱って亡くなっていった死を反映した作品なのだとか。

そうか、それで「L.A.のロスのポートレイト」なんですね。
しかもこの作者のゴンザレス=トレス自身が、その後エイズで亡くなっているのです……(涙)

……そ、そんな深い意味があったなんて……。

うーわー! だったらもう子どもたくさん連れて遊びに行くしかないじゃん!(←間違った解釈)

ちなみにキャンディはあまり美味しそうな銘柄ではなく、これが抹茶ポッキーとか、きのこの山だったら、たちまちなくなるだろうな、と思いました(←間違った芸術の鑑賞態度)

つまりここに展示されている作品はたんに未完というだけではなく、観客が参加することによって成立する作品もあれば、作者が意図的に完成させていない作品も含めて、「アート作品とははたしてどこで完遂したといえるのか?」という問いかけがコンセプトとなった展覧会なのです。

完成を断念した、あるいはあえて余白を残した、不完全の美をめざした、観客に参加を促した、そうした芸術家の思考を作品から辿ってみよう、という試みのよう。

今にも崩れそうな砂とガラスの板のインスタレーション。
こちらは砂には入っていけないようなので、お気をつけて。

彫刻もいっぱいあります。

なにか悪夢にうなされそうな作品もいっぱい……。

一番左は、ご存じWillem de Kooningの作品「Woman 1」
実際のウィレム・デ・クーニングはめっちゃモテそうな超イケメンだったのですが、なぜイケメンが女性を描いてこうなるのか、気になるところです!

真ん中の絵は、Marlene Dumas「The Painter」
マルレーネ・デュマス自身の娘のスナップ写真を絵にした作品だそうですが、あえて完成させない方法が印象的で、子どもの絵なのに、なんともいえず不穏な雰囲気。

一番右の絵は、Maria Lassnig「You or Me」という作品。
マリア・ラスニックは1919 年生まれで2014年に94歳で没していますが、作品は2005年に描かれたセルフ・ポートレート。

全裸の老女が頭に銃をつきつけ、絵を観ている人にむかって銃口をさし、「あんたか、私か」と問いかけている絵は迫力ありますね。
と同時に、当時90歳くらいの女性がこの絵を描いたかと思うと、痛快とも感じられて面白い!

この「Unfinished」展は、ルネサンスのティツィアーノレンブラントから現代まで179点もの作品が、二階ぶんのフロアに展示されていて見応えは充分。

鑑賞に疲れたら、5階にあるブルーボトル・コーヒーのカフェで休むこともできます。

またダイアン・アーバスの写真展、「diane arbus: in the beginning」も開催中。

チケットはメトロポリタン美術館クロイスター美術館と共通チケットで、同日なら両方とも追加で払わなくても入館できます。(注)

メットの本館は巨大すぎるので、お目当てを決めていかないと、疲労困憊してしまいますが、こちらのブロイヤーはコンパクトなので、ちょうどいいサイズじゃないでしょうか。

レストランのEstela Breuer(エステラ・ブロイヤー)も近々オープンするようです。
楽しみですね!


The Met Breuer

http://www.metmuseum.org/visit/met-breuer

住所:945 Madison Avenue New York, NY 10021
電話: 212-731-1675

「Unfinished: Thoughts Left Visible」
9月4日まで

「diane arbus: in the beginning」
11月27日まで

入館料:25ドル
(注)メトロポリタン美術館には入場料金はなくて、任意寄付という形で成りたっており、サジェステット・ドネーションの目安として、25ドルが提示されています。

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