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No.93 素顔の優しいアカデミー賞ノミネート役者マーク・ラファロ、社会や環境を気遣う一般人

On: セレブの小部屋

私の活動家のお友達はみんなマーク・ラファロを愛している。
NYでオキュパイ運動が始まった頃、彼はオキュパイ・ウォールストリートの発祥地ズコティ・パークにやってきては、みんなと一緒になって話し、意見を語ってくれた。
  
3度もアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、舞台のトニー賞にもノミネートされた実力俳優。
それにアメコミのヒーロー、ハルクにだって堂々となりきれる幅広い芸の持ち主。

それに、ハンサム!

そんなハリウッド・スターであっても、世界の半分の資産を握る1%の最富裕層ではなく、”一般庶民”の味方だから、
オキュパイや環境のための運動などに参加してきた私も、ずっと彼にはお礼を言いたくてたまらなかった。

地球に優しいエネルギーにシフトしていかなくてはならない時に、アメリカでは地球汚染のフラッキング(石油・天然ガス開発のための水圧破砕)が大展開されている。

その反対運動に、マーク・ラファロは一役買ってくれているのだ。
同性婚への賛同にも、声をあげてくれた。

「声をあげてくれて、ありがとう」 
お礼を言うと、彼は私の手を握ってくれた。

そして彼の頭の横あたりで拳を握ると、「We will win」(僕たちは勝利を得るよ)と、言った。
彼は、私たち庶民と同じ感覚を持っている人なのだ。


オキュパイ運動の発祥地ズコティ・パークで、フラッキングに反対声明をあげてくれたマーク・ラファロ
Photo by: ©Julie Dermansky

でも、プロジェクトのスポンサーが環境を汚染する大企業だったりする業界だ。
役者だった山本太郎さんが脱原発を声明した途端、仕事を干されたように、アメリカでも同じリスクが存在する。

彼の社会的な運動がキャリアに影響を及ぼして、仕事が減るという心配はなかったのか。

「その心配はあった。そして、今も、ある。反発がないとは言えない」

と、彼。

インタビューに応じてくれたマーク・ラファロは、ほのかな笑顔を浮かべながら、明るく語ってくれた。

「僕の俳優の友達からは忠告されているよ。
”ラファロ、止めろ! 彼らはお前のことを殺しにくるぞ”ってね。
”本当に、やられるぞ”って、真剣に言われたよ」

ハルク「アベンジャーズ」の新作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』には登場しない。
それが理由だったかもしれない!?

そんなジョークにも

「それが、すべての始まりだった、と言わなきゃならない日が来るかも」

と、笑って返してくれる。

私は彼に聞いた。あなたが政治的な問題に関して発言するのは、なぜ? 

「僕は自分の子供たちに対して責任を感じた。
僕の最初の二人の子供たちが生まれた頃、社会に対して発言する必要性を感じたんだ。ちょうどイラク戦争の頃」

と、彼は話し出した。

「そして、たまたまフラッキング計画にある地域に住んでいた。
僕はその場所を離れることもできた。または、僕の住む場所だけを守って、他の地域だけを彼らの好きなように掘らせることもできた。それはオファーされたことだった。
だが、モラルは? 自分は一体、どんな人間か。自分の信念は? 
自分の信念と自分が取る行動は、自分の人生でちゃんと釣り合いが取れているか、って考えたんだよ」

影響力のない無名の一市民である私でさえ、政治的な発言をすると風当たりが強い。だから想像がつく。有名人だったらなおさら、どんなに大変だろう。群衆からバッシングを受けるかもしれない。一つの発言でさえ、それがいかに勇気のいることか。

「タフさ。人々から、くだらない弾圧を受けるさ。
でも僕が言っていることは、そんなに過激なことだと思わない。多くの人たちが同意することなのにね」

と、語る彼。その表情の穏やかなこと。

「この業界で一緒に働く僕の友達や仲間のほとんどは、紛争や葛藤に向かって行きたがらない。争いからは走り去りたいんだ。
でも、僕には選択がなかった。僕はすでに、紛争の中に居たわけだから。

でもその葛藤の中にいたからこそ、それがゴールだと学んだ。
アーチストとしての成長、人間として、そして市民としての成長がゴールなのだと。
だから、僕が投じただけ、僕はちゃんと良いものを得られているんだ」

マーク・ラファロの持つ意識。それは確かに、彼の演技にもプラスとして、しっかり表われている。


『NOW YOU SEE ME 2/グランド・イリュージョン 見破られたトリック』日本公開は2016年9月1日。

そんな彼の新作は、『NOW YOU SEE ME 2/グランド・イリュージョン 見破られたトリック』(日本公開2016年9月1日)だ。
ジェシー・アイゼンバーグダニエル・ラドクリフウディ・ハレルソンモーガン・フリーマンマイケル・ケインデイブ・フランコといった超豪華キャスト。

マーク・ラファロ
は、一作目に引き続き、裏のあるFBI捜査官ディランを演じているが、この続編は、この彼のキャラクター展開が大きくフォーカスされた作品となっている。

NYで開催された『NOW YOU SEE ME 2/グランド・イリュージョン 見破られたトリック』のプレミア。私はそこで、マークと再会できた。

彼はこのプレミアのレッドカーペットを歩く前に、「オーケー、これからプレミアに出かける。頑張るぞ」と、緊張した表情を自撮りして、彼のファンたちのためにビデオ配信していた。そこに映っていたのは、スターでなく、一人の普通の男だった。

華やかにレッドカーペット上を歩くスターであっても、それは彼らにとっても緊張してしまう仕事だったのか。それは私にとって新鮮な驚きだった。

そして、なんと、マークはレッドカーペットでインタビューされるのがどんな風であるかを一般の人たちにも見せてあげたいと考えた。

そこで、彼は自分がインタビューされている間、インタビューする人たちを自分の携帯電話で撮影し返して、この体験が自分の目から見ると、どんな風かをライブストリーム配信したのだ。

それで、「日本の皆さんにメッセージをお願いしま~す!」と、頼んでいる私の姿さえ、彼のビデオに撮られ、ついには”顔の半分以上が口”という大口ポッカリの私のビックリ顔が、何千もの人たちの目に晒されてしまった。

だって、日本へのメッセージとして、彼の口からオカシナ日本語が飛び出してきたのだもの!

「オヤスミナサイ!
タイヘン オイシイ カタ デス!」

”美味しい方”?と、私は戸惑ったが、”大変、美味しかったです”と、言っていたのだ。
いきなり飛び出してきた日本語に、私はびっくり仰天してしまったのだ。

「ドウモ アリガトウ!」と、言って、彼は映画館へと消えて行った。
彼の歩いたレッドカーペットには、彼の優しさがいつまでも漂っていた。

copyright: Yuka Azuma 2016