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No.7 前シーズンより面白いAmazon Studiosの『Transparent』第2シーズン

On: アメリカのテレビ番組ガイド 観るっきゃナイト!

『Transparent』の第2シーズン全話のストリーミングが今月11日に始まった。

ウェブテレビのオリジナルドラマシリーズではNetflix『House of Cards』『Orange is the New Black』と大ヒット作を打ち出す中、これといったヒット作に恵まれなかった後続のAmazon(そう、あのオンラインショッピングサイトのAmazonだ)が2014年9月に全話配信した待望の看板番組。その第2シーズンである。

第1シーズンは、今年初めに発表された第72回ゴールデングローブ賞で最優秀テレビシリーズ賞と最優秀男優賞を受賞し(どちらもミュージカル又はコメディ部門)、9月にはプライムタイム・エミーのコメディシリーズ部門最優秀男優賞を含む5部門を受賞

新シーズンもゴールデングローブ賞を含む各賞に多々ノミネートされ、複数の受賞が期待されている。

『Transparent』は、『Six Feet Under』のライターの一人として知られるジル・ソロウェイが、トランスジェンダーである彼女の父親にインスパイアされて作ったコメディドラマだ。

タイトルは、「ありのまま、全てをさらけ出した」という意味があるtransparentという単語を、トランスジェンダーの略称として使われるtransと親を意味するparentの語呂合わせにしたもの。

タイトルが示す通り、第1シーズンは、ロサンゼルスのリッチな住宅街パシフィック・パリセーズに暮らすモートン・フェファーマン(ジェフリー・タンバー)のカミングアウトの物語だ。

引退した大学教授のモートンが、人生のかなり遅い時期になってカミングアウトを決意し、成人した3人の子どもたちにトランスジェンダーであることを告げようとする。

だが、子どもたちはそれぞれに問題を抱えている。

長女サラ(エイミー・ランデッカー)は、夫と2人の子どもに囲まれた絵に描いたような幸せな生活を送りつつ、学生時代のガールフレンドとの恋の焼けぼっくいに火をつけて不倫に走っている。

長男のジョシュア(ジェイ・デュプラス)は音楽プロデューサーとして成功しているが、自分がプロデュースするバンドの若いメンバーと寝ながらも、年上のある女性と複雑な関係に陥っている。

次女のアリ(ギャビー・ホフマン)
は30歳を過ぎても定職も目標も持たずに父親から小遣いをもらって生活している。

この子どもたちが、父親のカミングアウトをきっかけにそれぞれのアイデンティティについて考え、さらなる問題を引き寄せる。

そこに、子どもたちの母親で、モートンの元妻シェリー(ジュディス・ライト)もからんでいく。

カミングアウト物語に焦点を当てた第1シーズンでは、モートン(カミングアウト後の名前はモーラ)を演じるベテラン役者のタンバーの存在感が突出していた。

モートンとしてそこにいるときもその奥に潜むモーラの存在を感じさせ、モーラとしてそこにいるときは、フェミニンさを醸し出しつつも女性としての自分にまだ慣れないモーラのぎこちなさを同時に表現して見事の一言だった。

タンバーは、映画『ハング・オーバー』シリーズのマッチョな父親役が記憶に新しいが、同じ役者だとはなかなか気づかないのではないだろうか。

第2シーズンは、モーラの日常を引き続き描きつつ、焦点はモーラの自己中心的な子どもたちへとシフトする。

それと同時にドラマ自体が普遍的な家族の問題を描いたものへと変化していく。

この変化があまりにもナチュラルに起こるので、見るものはドラマで描かれるセクシャルアイデンティティの流動性を自然で身近なものとして捉えることができるのだ。

これまでもトランスジェンダーが登場するドラマは数多くあったが、トランスジェンダーが社会の構成員の一人として登場するというよりはむしろ、ドラマやクリエイターの社会的、政治的スタンスを表明するため、あるいは多様性を証明するための道具として登場することが多く、ひどいものだとギャグやイロモノ的に利用されることも少なくなかった。

だが、ソロウェイとクリエイターチームは、トランスジェンダーやセクシャルアイデンティティの流動性を決して特別なものとして見せないところが素晴らしい。

シーズンは長女サラ恋人タミーとのウエディングで幕を開ける。

モーラ
は女性として生きることが板についてきている。

ジョシュアには同年代の恋人がいる。

アリはレズビアンであることを自覚し、ジェンダー学を真剣に学ぼうとしている。

モーラのカミングアウトをきっかけに変わりつつあるフェファーマン一家のメンバーを通して第2シーズンで描かれるのは、自分に正直であろうとすることと自己中心的であることが背中合わせだという苦い真実だ。

ありのままの自分をさらけ出すことは時に人を傷つける。

自分の真の姿を受け入れてその道を歩み続ければ、全てが好転してバラ色の人生となるわけではない。

ドラマのタイトルの意味が余計に染み入ってきそうな苦い真実を、フェファーマン一家全員が次々に思い知ることになる。

また、ユダヤ人としての信仰と歴史にも焦点が当てられる。

第1シーズンでは若い頃のモーラを描くために使われたフラッシュバックが、今度は1930年代のベルリンにいるモーラの先祖を描くために使われ、トランスジェンダーやゲイ、レズビアンに寛容だった当時のベルリンと、ナチスの台頭によって彼らが迫害されることになった史実がノスタルジックに紹介されるのだ。

ジェフリー・タンバーを筆頭とするアンサンブルキャストの演技は第2シーズンでも輝きを失わない。

特に、サラジョシュアアリを演じる俳優陣が見せる、姉妹弟特有の親密さと苛立ちはナチュラルでリアルだ。

映画監督、プロデューサーとしての活躍が知られるデュプラスなど、この役が俳優デビューとは信じられないほど、ジョシュア役がぴったりとはまる。

ブロードウェイの舞台でも大きな存在感を見せるジュディス・ライトが演じるシェリーはコミカルで、画面に登場するたびに見るものの視線を奪っていく。

また、第2シーズンでは、『24』シリーズチェリー・ジョーンズと、映画『アダムズ・ファミリー』シリーズのアンジェリカ・ヒューストンもゲスト出演する。

ブロードウェイの名優チェリー・ジョーンズが演じるのはレズビアンの詩人レスリー

男性が無自覚に犯す女性差別を、男性として生きていた頃に自分も犯していたとモーラに思い知らせるピリッとした役で、それを、昔からレズビアンであることを隠さないジョーンズが画面からカリスマ性とセックスアピールを放ちながら演じる。

前シーズンよりもさらに魅力的になった『Transparent』今、最もオススメのテレビドラマだ。

All Photos © Amazon Studios

“Transparent”
(Amazon.comにて第1シーズン、第2シーズン、Amazon.co.jpにて第1シーズン配信中。それぞれ第1エピソードは無料視聴可能。Amazon Primeの30日お試し期間を使えば今すぐ全話無料視聴可能。)

Rating: TV-MA AC AL N SS(17歳以下の視聴は不適当、大人向けの内容、言語、ヌード、性的な状況有り

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“Transparent” Season 2 – Official Trailer